つのだじろう「亡霊学級」(1974年1月30日初版・1986年7月20日44版発行)

 収録作品

・「亡霊学級」(1973年「週刊少年チャンピオン」)
「第一話 ともだち」
 一年B組の学級委員だった鳥井信夫が交通事故で急死する。
 彼は死ぬ間際まで、同じ学級委員の三田夕子に怯え続けていた。
 学級委員の補欠選挙が行われるが、平凡な男子生徒、石原洋一が選ばれる。
 何故か、皆、彼に投票しなければいけないよう思ったらしい。
 放課後、彼は三田夕子に理科準備室に呼び出される。
 彼女は彼のことが好きと明かし、ともだちになってくれるよう頼む。
 実は、彼が学級委員になったのも、彼女には霊感があり、自分の思うようにできるのであった。
 彼女はこのことは秘密と釘を刺し、洋一は裏切らないと指切りげんまんをする。
 その直後、ともだちになったお祝いにと、夕子は、解剖実験用のカエルの皮を剥いて食べ始める。
 洋一はその場から逃げ出し、翌日、友人達に話すが、三田夕子は授業が終わった後、帰宅していた。
 夕子は洋一の言葉にショックを受け、体育の時間、保健室で休む。
 彼もまた、授業の最中、保健室の窓に、昨日見た夕子の顔を見て、気絶。
 保健室で休んでいると、ベッドの横に夕子が現れる。
 彼女は彼の裏切りを責め、鳥井信夫のように呪い殺すと脅す。
 そして、次に裏切ったら、指切りをした指から腐り始めると告げる。
 彼女は自分は三田夕子でなく、守部八重子だと言うのだが…。
「第二話 青虫」
 ある中学校の二年A組の青野武志。
 彼はその風貌や態度から「青虫」というあだ名で呼ばれ、いじめを受けていた。
 いじめっ子達は、青野が弁当を隠して食べることに目を付け、弁当を見せるよう迫る。
 青野は、小学校から彼をいじめて来た山田にだけは見せると言い、二人は校舎の外に行く。
 そこで、山田は弁当を一口食べさせられるが、それは本物の青虫であった。
 しかも、青野の弁当箱には青虫がぎっちり詰められていた。
 青野はその理由を山田に話すのだが…。
「第三話 水がしたたる」
 ある中学校で水野弘子という女教師が行方不明となる。
 彼女は教育熱心な教師で、学校に連絡もせずに休むことなど考えられない。
 また、おかしなことに、行方不明になった当日、彼女は担任のクラスで理科の授業をする。
 彼女は終業のベルと共に姿を消し、立っていた黒板の前辺りは水で濡れていた。
 それから五日後、プールで彼女の水死体が発見される。
 警察の調べによると、六日前、近所の小学生がプールに忍び込み、転落。
 偶然残業していた水野先生は子供を助けたものの、こむら返りを起こし、溺れてしまったのであった。
 学校としては水死体の浮かんだプールをそのまま使い続けるわけにはいかず、プールを改装。
 新プール落成記念に校内水泳大会を開催するのだが…。
「第四話 手」
 旧校舎から離れたところにある、くみ取り便所。
 そこの奥の大便所には昔から怪談が言い伝えられていた。
 その「開かずの便所」で用を足していると、下から青白い手が出てきて、お尻をなでる。
 逃げようとすれば、足首を掴んで、中に引きずり込もうとする。
 うまくその手を逃れても、扉がどうしても開かず、振り返ると、窓から恐ろしい顔をした妖怪が笑いながら覗き込んでいる…というものであった。
 この怪談を利用して、熊本達の三人組は、中島という男子生徒をいじめようと企む。
 中島は胃腸が非常に弱く、便所コウロギというあだ名があった。
 授業中、彼がトイレに行った時、熊本達は彼が「開かずの便所」に入るよう仕向ける。
 そして、二人は扉を外から押さえ、熊本はトイレの電気を消した後、妖怪の仮面をかぶって、外から中島を脅かす。
 中島の悲鳴の後、トイレの中は急に静かになる。
 心配して、中の様子を見ようとしても何故か鍵がかかっており、ムリヤリ開けると、中に中島の姿はなかった。
 窓から逃げたのだろうとひとまず納得して、その日は帰るが、中島はそれ以来、行方不明になっており…。
「第五話 猫」
 ある家で火事があり、猫塚タマ(63歳)という猫好きな老婆が、飼い猫数匹と共に、焼死する。
 以来、その焼け跡ではどこからか野良猫が集まるようになっていた。
 その焼け跡が通学途中にある、小学生の男の子は、猫が大嫌い。
 特に、老婆が一番かわいがっていたクロという老猫が憎たらしく感じていた。
 ある日、彼がクロに石を投げつけると、左目に命中し、死んでしまう。
 家に帰ると、妹がクロの死骸を持って帰っていて、家にその墓を作ろうとする。
 彼は死骸を焼け跡に捨てさせるが、今度は子猫を持ち帰って来る。
 妹によると、焼け跡に老婆がいて、墓は自分が作ると言い、その代わりに、子猫をくれたらしい。
 子猫は彼にまとわりつき、彼は夜中、猫の群れの幻影を視る。
 彼は自分がクロに呪われていると考えるのだが…。

・「赤い海」
「香港から日本に向かう小型貨物船、ブラーディ号。
 乗組員は以下の通り。
 船長、機関長の園田、船員のガン平、ともづな、新入りの野毛山、水先案内人の老人、船長の甥のテツミの七人。
 ある日、船長が何者かに殺害される。
 船長は喉笛を一噛みされていた。
 園田達はまだ子供のテツミを犯人扱いし、縛って船倉に監禁する。
 また、老人は、香港から日本へ向かう海域には吸血鬼がおり、その仕業だと言う。
 野毛山はテツミが犯人とは思えず、園田達の中に犯人がいると考える。
 テツミによると、船長と争っていた人物がいたらしいし、船長が死んだのに無線で連絡をしないのも怪しい。
 疑惑の中、船は航海を続けるが、次々と乗組員は喉を抉られて、殺されていく。
 船にとり憑き、乗組員を全滅させるという吸血鬼の仕業であろうか…?」

 「亡霊学級」は「学校の怪談」テーマの怪奇マンガの原点&最高峰です!!
 名作ではありますが、若い方には、つのだじろう先生の漫画は馴染みがないかもしれません。
 また、オカルト漫画の名作「恐怖新聞」や「うしろの百太郎」も約半世紀前の作品なので、心霊知識の面では、古さは否めません。
 それでも、「亡霊学級」は、だまされたと思って、読んでほしい!!
 これは今読んでも、かなりのトラウマ度です。(「ともだち」での、金網の向こう側にある顔、やめてくれ〜)
 また、併録の「赤い海」も巧みなミステリー・ホラーで、つのだ先生のポテンシャルの高さを知ることができます。
 70年代のつのだじろう先生の「本気」を是非とも堪能してください。

2022年2月9日 ページ作成・執筆

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