古賀新一「呪われた吸血少女A」(1986年10月20日初版発行)
「前巻で滅びたかと思われた吸血鬼。
その際、発見されなかった吸血鬼の頭部が(何故か)美佳の部屋に現れる。
しかも、その頭部が割れると、中にはは毛むくじゃらの頭部が収められていた。
美佳と母親の悲鳴を聞きつけ、団地の住人が集まるが、どさくさに紛れて、謎の老人が毛むくじゃらの頭部を持ち去ってしまう。
翌日、美佳が教室でこの話をすると、昆虫に詳しいクラスメートがそれは蜘蛛の頭部だと教える。
どうやら吸血鬼の正体は「クモ人間」らしい。
放課後、美佳が教室に忘れ物を取りに戻ると、何故か教室は蜘蛛の糸まみれであった。
その奥で、黒沼麻也が一人泣いている。
麻也の話では、勉強の成績のことで、母親から体罰を受けていると話す。
しまいには倒れてしまった麻也を、立花先生の助けを受けて、保健室に運び込む。
すると、体罰を受けた時の傷から蜘蛛の糸がどんどん溢れ出てくる。
保健室が蜘蛛の糸に覆われると、麻也は担任の先生や保健室の先生を襲い、首から血を吸う。
命からがら団地の部屋に逃げ帰った美佳は、母親にことの経緯を話す。
その時、黒沼麻也の母親が美佳の部屋を訪れる。
彼女は、麻也の暴力に耐え切れず、美佳のもとに泊まらして欲しいと頼む。
美佳の母が彼女から事情を聞くと、麻也が暴力を振るうようになったのは、美佳の母親の書いたスキャンダル記事のために父親が失踪したからとなじる。
だが、美佳の母親はそんな記事を書いた記憶はなく、彼女が書いたのは「異常な心を手術する研究」に関する記事であった。
そして、その研究者の蛭田博士こそ、先日、蜘蛛の頭部を持ち去った人物であった。
蛭田博士の研究とは…?
また、吸血鬼の正体は…?」
「呪われた吸血少女」は二巻構成になっておりますが、一巻と二巻でストーリーのつながりがあるとは言い難いです。
二巻は「クモ人間」の話で、一応は「吸血グモ」とは言え、ノリは「まだらの毒ぐも」です。
それに、「蠅男の恐怖」(リメイク版が「ザ・フライ」)の要素が捩じ込まれ、いい加減、ワケがわからなくなっているところに、釈然とするようなしないようなラストを迎えるという、いつもの古賀節です。
それよりも、不思議なのは、前作よりも五か月後の作品でありながら、絵柄が大きく変わっていること。
前作は「エコエコアザラク」よりのヒロインでしたが、この作品では「谷間夢路先生」ちっくな感じのヒロインで、この描きとばしたような絵柄が実に恐怖描写と「油と水」で浮いてます。
実際、単行本をペラペラまくってみると、白っぽい部分が目立ち、作品自体も空漠な印象を与える出来だと思います。
一体全体、この五か月の間に、何があったというのでしょうか?
古賀新一先生が新境地に挑んだのか? それとも、アシスタントの変化? もしくは、出版社による要望?
関係者でない私には全く見当がつきません。
2017年9月11日 ページ作成・執筆