木々津克久「フランケン・ふらん@」(2007年12月20日初版発行)

 斑木ふらんは生命工学の天才、斑木直光博士の最高傑作。
 斑木直光は「生物学の悪魔」と呼ばれるほどの外科医技術を持っていた。
 博士が不在の間、研究所はふらんとその仲間が管理する。
 さて、今回の患者は…?

・「Ep.1/BRAINS」
「ある日、松井財閥の社長と秘書が研究所を訪れる。
 彼の依頼は、交通事故死した息子の勇次郎を生き返してほしいというものであった。
 留守の斑木博士の代わりに、ふらんが依頼を引き受ける。
 だが、身体を蘇らせることはできても、勇次郎という「個」の復活はさすがの彼女にも手があまる。
 悩んだ末、彼女は斑木社長の邸宅を訪れ、問答無用で術式開始。
 彼女の考え付いた方法とは…?」

・「Ep.2/CHRYSALIS」
「田嶋功一は金田という女子を人気のない神社に呼び出して告白するも、こっぴどくフラれる。
 金田は帰ろうとした時、轢き逃げにあい、田嶋はふらんの研究所に助けを求める。
 実は、轢き逃げをしたのは、研究所に薬剤を運ぶ車であった。
 田嶋に乞われ、ふらんは金田の手術を行う。
 この手術では「バリュート」が使われ、金田は命は助かったものの、首から下は巨大な芋虫になっていた。
 彼女を救うには、田嶋の「愛の力」が必要だと言うが…」

・「Ep.3/TAKE TO PIECES」
「連日、バラバラにされた人体の一部が発見される。
 それは大変な数に上るが、どれもDNAは同じで、同一人物の身体であった。
 警察に協力を依頼され、ふらんは人体を全て研究所に持ち帰る。
 とりあえず、つなげてみてわかったことは、本人が生きている状態で順繰りに切り落としているらしい。
 そこで、ふらんは嗅覚の並外れたフラゴンを使い、その身体の人物を突き止める。
 それはあばら家に住む少女であった。
 彼女の病気とは…?
 ふらんは彼女を研究所に連れ帰るのだが…」

・「Ep.4/COSMETIC SURGERY」
「久々にふらんは高校に登校する。
 すると、一人の女子生徒がふらんが手術を得意なことを知っていて、まぶたを二重にする整形手術をお願いする。
 ふらんが気軽に引き受けると、彼女のもとに大勢の女子生徒が殺到。
 ふらんは脂肪吸引、身長伸ばし、バストアップ、中絶手術まで何でも引き受ける。
 更に、女子だけでなく、男子生徒もふらんに様々な整形を依頼。
 整形がエスカレートする中、桂という男子生徒の相談だけは真剣であった。
 彼には花という彼女がいたが、彼女は幼い頃、大人にいたずらされ、以来、男性恐怖症であった。
 彼女のために彼が下した決断とは…?」

・「Ep.5/GOD & DOG」
「研究所に天使博士という老人が訪れる。
 天使博士は斑木博士と旧帝大時代からの友人であった。
 斑木博士は留守なので、ふらんが天使博士の相手をする。
 天使博士は斑木との賭けの話題を持ち出すが、それは「神」の存在に関するものであった。
 天使博士の帰宅後、ふらんがこの証明方法を考えていると、何者かが研究所を盗聴しているという報告を受ける。
 その翌日、天使博士はふらんに呼び出される。
 ふらんは「この世に神の見える動物が一種類だけいます」と言うが、その動物とは…?」

・「Ep.6/UNHAPPY BIRTHDAY」
「森村グループの社長の娘、森村あんじゅの16歳誕生日パーティ。
 会場は豪華船で、ふらんは斑木博士の代理として沖田(人面猫キャラ)と共に参加する。
 しかし、会場で出された肉料理はあんじゅの人肉で、彼女の頭部は冷蔵庫の中のバースディ・ケーキの上に置かれていた。
 ふらんは沖田の身体を使い、あんじゅを復活させるのだが…」

・「Ep.7/HOLD ME TIGHT」
「夕暮れの公園。
 ふらんは男子高校生が女性をめった刺しにしている現場に通りかかる。
 彼の名は江藤進で、二人は交際していたが、親に反対され、心中しようとしていたと話す。
 ふらんは彼の話に心を動かされ、彼に死なないよう諭し、彼女を生き返らせる。
 と言っても、死後、時間が経っており、彼女の小脳と大脳の一部を切り取り、そのスペースに生命維持に必要な臓器を詰め込んだのであった。
 脳の一部が失われたため、彼女の記憶は失われ、一歳児程度の知能しかないとふらんは話す。
 江藤進は首だけの彼女と生活を始めるのだが…」

・「EXTRA EPISODE/MOVIE STAR」
「天使博士からふらんに電話がかかる。
 博士の知人がふらんをモデルに映画を作りたいと申し込んできたのであった。
 ふらんは自分が出演するのではないと知り、ちょっとガッカリするものの、博士の紹介ということもあり、即座に了承。
 彼女としては、自分が様々な人の病気を治し、皆が幸せになる「愛と感動のストーリー」を夢想する。
 後日、映画のデータがふらんのもとに届くのだが…」

・「禍談(マガバナ)」
「事故の現場にて」
 一人の男が道を歩いていると、道端に供えられた花束に気付く。
 すると、向こうから女子学生が二人歩いて来て…。
「幽体離脱」
 寝ている最中、男は幽体離脱する。
 寝ている自分の身体を見下ろして、面白がっていると、部屋に彼女がやって来て…。
「だれ?」
 ビルの中で男が正体不明のモンスターに追われる。
 ドアが開かず、追いつめられるが、その時…。
(「チャンピオンRED」2006年9月号、2007年2、3、8〜12月号)

 今や「ホラー漫画」は一大ジャンルへと成長し、多くの才能ある漫画家さんが参入しております。
 そんな漫画家さん達の中で、個人的に正当な評価を受けてないと感じているのが木々津克久先生。
 キャリアは二十年を超える大ベテランであるにも関わらず、一般的に有名とは言い難いです。
 でも、先生の作品はどれも面白く、エンターテイメントとして一流!!
 中でも「名探偵マーニー」と並ぶ代表作「フランケン・ふらん」は「マッド・サイエンティストもの」の頂点を極めた大傑作だと断言しちゃいます。
 博識とブラックユーモアあふれる奇想と紙面いっぱいにぶちまけられる内臓感覚をマッド&ポップな登場人物達によって見事に融合させたこの作品…こう形容しては元も子もありませんが、裏「ブ※ックジ※ック」といった味わいです。
 本家の方は基本「金」が問題ですが、こちらでは命を救うために「手段」を選ばない所がミソ。(命を救えても、人を救えてないことが多々…。)
 しかも、生命とは何ぞや?といった感じの哲学的な思索も散りばめられていて、妙な説得力があるのもクセモノです。
 あと、余談ではありますが、木々津先生の描く「おっぱい」は実にきれいで、(個人的には)それもまた魅力。
 まあ、何はともあれ、再読に耐えうる内容ですので、ホラー漫画ファンだけでなく、幅広い漫画ファンに読んでもらいたい作品です。(ただし、かなり刺激の強い内容なので、そこはご注意ください。)

2024年1月1日 ページ作成・執筆

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