芝田英行「炎を呼ぶ少女」(1986年11月25日初版発行)
「卯月家は、祖父、両親、双子の姉妹の五人家族。
双子の姉妹の、つばめとかもめは正反対の性格をしていた。
つばめは勉強ができ、明るく、外交的で、皆の人気者。
一方のかもめは、ひどく内向的で、絵は好きだが、他はからっきしダメな陰気な少女。
つばめは祖父や両親からちやほやされるが、かもめは常に姉と比較され、叱られてばかり。
姉のつばめはそんな妹を不憫に思い、慰めるが、それすらも劣等感を刺激され、かもめには針のむしろであった。
姉妹が中学三年生の頃、一家はある土地に引っ越す。
その土地は、過去、大火が幾度と起こし、その犠牲者の怨念の渦巻く、呪われた土地であった。
その怨念に、かもめの内に秘められた超能力が同調し、かもめは祖父、母親と焼き殺してしまう。
その死は事故死に扱われたが、衣類や身の回りのものはほとんど焦げていないのに、人体だけがあっと言う間に燃え尽きるという、異常な死に様であった。
自分の力を知った、かもめは、邪魔者の霊能者と刑事を焼き殺し、供養塔を破壊、悪霊の強大なパワーを手に入れる。
かもめは父親も殺し、今まで散々比較されていた姉よりも優位に立つ。
それで満足できるはずだったが、心は平穏を得ることは全くない。
落ち着くために絵を描こうとしても、もはや絵を描くことができず、かもめの心は苛立ちの炎に苛まされる。
一方、つばめは、かもめを助けたいと思いつつも、絶望感から逃れられず、ハサミで胸を突き、自殺を図る。
すると、彼女がいたのは地獄であった。
形容のしようもない苦悶を味わっていたところに、彼女の守護霊が現れ、彼女を諭し、現生へ生き返らせる。
病院で療養中、つばめは自分に秘められた力に気付き、かもめを救うために家に向かう。
家には、つばめに対して、ひたすら憎悪を燃やす、かもめの姿があった。
陰と陽たる双子の姉妹、その対決の行方とは…?」
渋い作品です。
スティーブン・キングの「ファイアースターター」のパクリかと思いきや、予想外の展開を見せ、なかなか面白いです。
序盤の虐殺描写から、姉妹の確執、地獄の描写、ラストの超能力対決と見せ場を次々と繰り出してきて、ストーリーの質はかなり高いのではないでしょうか。
ただ、惜しむらくは「絵」なのです。
故・小山田いく先生(注1)の絵から「爽やかさ」というものをスッポ抜いた感じといいましょうか、丁寧に描かれてはおりますが、それだけではカバーできてないものが幾つもあるという感じの「絵」です。
でも、この絵も含めて、私はこの作品が好きです。
と言うのも、作者の芝田英行先生の「怪奇マンガに対する情熱」を感じるからなのであります。
いろいろなホラー映画や怪奇漫画から影響を受けながらも、それを独自に咀嚼・吸収して、どうにか自分の怪奇マンガをつくり出そうとする、真摯な姿勢、まずはそこなんです!!
だからこそ、稚拙な部分を超えて、読み応えのある作品になっているように思います。
・注1
故・小山田いく先生は「少年チャンピオン」での青春漫画で有名なお方です。(ちっとも読んでおりませんが…。)
後年、怪奇マンガにシフトしましたが、絵柄はマッチしているとは言い難かったです。(エロ漫画となると絶望的…。)
ただし、ベテラン作家でありましたので、ストーリー等は非常に良質だったように思います。
秋田書店のホラー・コミックスに遺された単行本には、印象的な作品が幾つもあり、いつか紹介したいものです。
2017年8月8日 ページ作成・執筆