古賀新一「魔女の棺A」(1993年1月10日初版発行)

 謎の美女、棺魔子。
 彼女と関わりを持った男達の運命は…?

・「第10話 笑う女」
「男の妻、奈々子は醜い女であったが、笑顔が取り柄と考え、笑顔を絶やしたことがなかった。
 寝ている時さえ笑っており、男にはそれが苦痛で、浮気相手を持つ。
 それに悲観してか、奈々子は赤ん坊と共にビルから跳び下り自殺し、赤ん坊の行方はわからなくなる。
 これで自由の身になったと喜んでいると、彼のマンションに一人の女が訪ねてくる。
 見知らぬ女であったが、彼女は彼の妻と名乗り、行方不明になった赤ん坊を抱いていた。
 彼女は妻と同じ笑みを浮かべ、捨てないよう彼に嘆願するのだが…」

・「第11話 使い魔」
「息子が独立し、寂しく暮らす老夫婦。
 妻がレンタル家族でも頼もうかという話をすると、レンタル家族会社から、魔子という妊婦が家にやって来る。
 魔子は娘だと言うが、妊婦であることを盾にして、老夫婦をこき使い、好き放題。
 挙句の果てには、お産には金が必要と、勝手にタンスやらを物色し、金をまきあげる。
 そんな時、裏口で物音がするが…」

・「第12話 SMの女」
「大和田医師は愛人の麻衣子と共謀して、妻を首吊り自殺に見せかけて殺害する。
 彼の妻はおとなしい女性で、彼はSM好きな麻衣子と出会ってから、妻を物足りなく思うようになったのであった。
 ある夜、彼の病院に急患が運び込まれる。
 急患の女性の名は棺魔子といい、色情狂のように彼に迫る。
 彼女の言うことがいちいち彼の妻を指しているようで、彼は彼女を病院から追い出すよう言うが、院長から彼女の手術を命じられる。
 手術の際、麻酔が効いてないのか、女性は彼に話しかけるように独り言を言うのだが…」

・「第13話 サメ女」
「幹夫は愛人と共謀して、ユカをビルから突き落として殺害する。
 ユカの死は投身自殺とされたが、数か月後、二人は奇妙な新聞広告を目にする。
 それは「熱帯魚あげます」というもので、広告主は妻と同姓同名の女性で、妻は熱帯魚のマニアであった。
 幹夫は広告の住所を訪ねると、セクシーな女性が彼を迎える。
 彼女は彼の婚約者のユカと名乗り、愛人を、他人の彼氏を奪う「サメ女」と罵る。
 誘惑された彼は別室に案内されるのだが…」

・「第14話 座禅ころがし」
「ペット厳禁のマンションの管理人。
 彼は鋭い嗅覚でペットを見つけ出し、ペットを屋上から投げ落として、殺すことに快感を覚えていた。
 彼に飼い犬を殺され、夫が単身赴任中の仁科エリはショックで魂が抜けたようになる。
 管理人は彼女の身体をもてあそび、その後、仁科エリは夢遊状態で車道に出て、交通事故死する。
 数日後、管理人はマンション内に犬を見かけ、後をつけると、仁科エリの部屋であった。
 部屋には、仁科エリを名乗る女性がおり、彼は彼女を抱くのだが…」

・「第15話 ハエ女」
「高山商事の社長はひどいワンマンかつ女好き、そして、特異体質のせいか、夏には身体中にハエがたかっていた。
 そんな社長に取り入り、棺魔子という応募者が秘書に採用される。
 実は、魔子が、この「ハエ男」に近づいたのは、山口マミという跳び下り自殺した娘と関係があった。
 彼は山口マミの父親なのだが…」

・「第16話 時計塔の女」
「西東源次郎(76歳)は故郷の村を訪れる。
 彼が16歳の時、村には田舎には似つかわしくない、時計塔のある洋館があった。
 洋館には棺魔子という美しい女性が婆やと二人で住んでおり、彼女目当てに彼は洋館によく通う。
 ある日、彼は彼女に呼ばれ、時計塔の中に案内される。
 そこで、裸の彼女に誘惑されるが、彼が好きだからと一線を越えることは許されなかった。
 その後、村を離れてしまったが、60年後、彼は再び洋館を訪れる。
 洋館は荒れ果てていたが、時計塔の中では、往時と変わらぬ姿の魔子が彼を待っており、60年前の続きをするのだが…」

・「第17話 ホテルの女」
「金庫破りで生計を立てている夫婦。
 夫はどケチで、雨の夜、安いだろうと山奥のホテルに泊まる。
 だが、ホテルの周りは痩せこけた動物ばかりで、更に、女性従業員が包丁を手に襲いかかってくる。
 かろうじて逃げたものの、これをきっかけに、妻は身体を壊す。
 夫は家政婦を雇い、関西で仕事をしている間、妻の面倒を看てもらう。
 生活費を渡す際、彼は「浪費」も「贅沢」も許さないと家政婦に釘を刺すのだが…」

・「第18話 スッポン女」
「川中はスッポン料理浜波の料理人。
 彼の店に、同じ娘が、彼のスッポン鍋を食べにしばしば訪れる。
 ある夜の仕事の帰り道、彼女が彼の後をつけてくる。
 彼女は棺魔子と名乗り、スッポン料理を教えてほしいと言う。
 彼女は病弱だったため、幼少の頃からスッポン料理を食べていたために、スッポン料理が主食となっていた。
 彼女とセックスした後、彼女は彼の家に居ついてしまう。
 だが、彼には、半年前、同じくスッポン料理好きな娘と出会ったことがあり…」

 二巻目では、棺魔子はすっかり、セクシーな黒井ミサとなっております。
 呪文は「ルキフェル カベラ カーベラ」。
 基本的な内容は、自殺者の復讐を棺魔子が請け負うというものですが、復讐方法が全く予想外で、恐ろしく奇妙な余韻を残します。
 個人的に好きなエピソードは「時計塔の女」と「スッポン女」。(特に、「スッポン女」のラストはひっくり返ります。)

2022年1月2・3日 ページ作成・執筆

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