高階良子「昆虫の家」(1985年11月10日初版発行)

 収録作品

・「昆虫の家」(1973年「なかよし8月号」付録
「孤児達が暮らす、桜養護園。
 クレールは、日本人男性と、フランス人のクラブの踊り子の間に産まれた混血児であった。
 父親はわからず、母親は彼女を養護園に連れてきた後に病死。
 クレールは美しいものに憧れ、執着し、そして、独占欲が異常な程、強かった。
 他の園児から忌み嫌われていることなど歯牙にもかけず、彼女はこの世で最も美しいもの、蝶の標本を集めることのみを楽しみとする。
 しかし、自分は混血児で孤児の身の上、美しいものがいくらこの世に存在しても、それを手に入れることは困難で、フラストレーションに苛まされる。
 ある日、クレールは、大葉学園に「チョウのような女の子」がいるという噂を耳にする。
 その少女は、テニス部の明石洋子で、クレールは一目見て彼女に夢中になる。
 更に、今まで集めた蝶の標本を園児達から壊されたことにより、彼女はますます洋子に執着し、ストーカー行為にまで及ぶ。
 そんな時、クレールの父親が明らかになる。
 父親の家はクレールの母を認めず、そのうちに父親が病死し、そのことを後悔した祖父母はクレールに莫大な財産を遺したのであった。
 一夜にして、大金持ちになったクレールは、何でも手に入る身分となる…たった一つのものを除いては…。
 一年後、明石洋子は、男友達の写真部部長、久松晃から、上高地に誘われる。
 彼の友人から、蝶の舞い飛ぶ、美しい場所を教わったのであった。
 二人の仲をやっかむ奈々江を加えた三人で、彼らはその場所に向かうが、道に迷ってしまう。
 天候は悪化し、吊り橋のロープは切られ、二進も三進も行かなくなった時、彼らは山中で洋館を発見する。
 館の主人は彼らに親切に接してくれ、ほっと息つく間もあらば、気が付くと、彼らは別々の部屋に監禁されてしまう。
 そう、館の女主人はクレールで、全ては彼女が巧みに仕組んだことであった。
 クレールの望み通り、遂に洋子は彼女の手中のもの。
 だが、洋子の美しさを永遠に保たなければ、コレクションとしては完璧ではない。
 洋子はクレールの異常性に気付き、館から脱出を図るのだが…」

・「うわさのふたり」
「小川美々は虎川竜のことが頭にきて仕方がない。
 彼は、サッカー部のキャプテンで、頭脳明晰、明朗活発、容姿端麗のナイス・ガイ。
 以前は美々も彼のことを憧れてはいたが、何故か彼は彼女にだけ執拗にイケズをして、もう大っ嫌い。
 ある時、理科の授業で、彼と組むこととなる。
 日曜日、下調べとして、せがむ妹と共に、二人は植物の観察に出かける。
 その最中、妹が酔っ払いの運転する車にはねられてしまう…」

 サイコ・サスペンスの名作「昆虫の家」と、恐らく、雑誌に掲載された学園コメディー「うわさのふたり」が収録されております。

・備考
 「昆虫の家」のラスト、燃え落ちた廃墟の描写が一ページ、描き足されております。

2017年8月1日 作成・執筆

秋田書店・リストに戻る

メインページに戻る