楳図かずお「百本めの針」(1988年11月5日初版発行)
収録作品
・「百本めの針」
「比奈子は、盲目の冬子と小さい頃から仲が良かった。
冬子は比奈子の他に友達はおらず、彼女のことを心から慕う。
ある日、冬子は、比奈子といつもいるよう感じたいと、彼女の髪の毛と着物の切れ端を望む。
以来、毎晩、11時になると、比奈子の目が刺すように痛み、視力が徐々に落ちていく…」
・「呪いの面」
「あや子と雪子は美人で、大の仲良し。
交通事故をきっかけに、二人は、お面を集めるのが趣味の老人とお知り合いになる。
この老人のコレクションには、朝霧面、夕霧面という美人を描いた面があったが、二つの面は互いに嫉妬して、争い合っていた。
同じ場所に置いておくと良くないと考えた老人は、あや子に朝霧面、雪子に夕霧面をプレゼントする。
だが、それぞれに帰宅後、二人が戯れに面をかぶると…」
・「呪われた屋敷の少女」
「家が貧しく、女中奉公に出ることとなった少女、えりか。
彼女が働くことになった屋敷の女主人は、白い仮面をかぶり、それを包帯で固定していた。
また、女主人の娘、阿毛美は活発だが、どこか奇妙な少女であった。
えりかの仕事は阿毛美の相手をするだけであったが、「9号室」は決して覗かないよう厳命される。
屋敷での日々は楽しく、女主人もえりかに親切にしてくれて、えりかは幸せいっぱい。
だが、ある日、えりかは「9号室」が気になり、その部屋を覗いてしまう。
そこには…」
・「呪いの振袖」(aka「のろいのふりそで」/1966年)
「豊臣家ゆかりの人物が住んでいた屋敷に引っ越してきた家族。
姉妹が家を探索していると、蔵の中で振袖を見つける。
姉が戯れに着て、振り袖姿を鏡に映してみると、自分の左目のあたりが醜く爛れていた。
不思議なことに、そう見えるのは姉だけであった。
以来、姉の様子はおかしくなり、決して振袖を脱ごうとしなくなる。
更に、左の額から左目にかけて爛れが広がっていく。
奇異に感じた妹が蔵を改めて探すと、昔の日記が見つかる。
その日記には、月姫と羽奈姫との確執について記されていた…」
・「幽霊がやってくる」
「夜、朝子がバイオリンを練習していると、そこに女性の幽霊が現れる。
以来、女性の幽霊は毎晩、現れては、朝子のバイオリンを聴くようになる。
だが、ある夜、女性の幽霊は、朝子に次の夜、連れて行くとだけ告げて、去る。
朝子と母親が幽霊の後をつけていくと、ある病院の一室に消える。
そこには、身寄りのない、重体患者の女性の部屋であった…」
・「地蔵の顔が赤くなる時」
「高麗島。
善良な青年、与作は、島の地蔵様に毎日かかさず、お供え物をしていた。
しかし、島の人々からはバカにされ、彼に惚れている、なみも快く思わない。
ある夜、夢の中に、地蔵様が現れ、自分の顔が赤くなったら、島が沈む故、島を逃げ出すよう告げる。
与作は、島の人々にお地蔵様の予言を触れて回るが、ますますバカにされるばかり。
それでも、熱心に説得を続ける与作の前で、なみに横恋慕する和助は地蔵の顔を絵具で赤く塗ってしまう…」
初期の短編を収録した単行本です。
前の袖に描かれておりますが、原稿紛失のため、様々な人々の協力を得て、日の目を見ることができたとのことです。(写真も若い頃のものを使ってます。)
初期の作品ではありますが、すでにスタイルは完成しており、読ませます。
この単行本では、古い怪談話を題材にとった作品がでありますが、この頃から、無意識に潜む「どす黒いもの」に焦点を据えて、古い怪談話を現代的な恐怖に再創造しているように私は考えてます。(考えは頭の中にあるものの、うまく言葉にできないのがもどかしい…。)
個人的なお気に入りは、楳図版「顔のない眼」の「呪われた屋敷の少女」(う〜ん、サディスティック!!)と「幽霊がやってくる」(完成度は高いと思います)。
「地蔵の顔が赤くなる時」は基本、昔話なのに、ラスト、精神分析医みたい口調で解説する医師にちょっぴり笑っちゃいました。
2018年7月7・8日 ページ作成・執筆
2019年3月26日 加筆訂正