高階良子「海神の島」(1986年6月1日初版・1987年12月25日5版発行)

 収録作品

・「海神の島」(1984年「ボニータお正月大増刊号 レッツBONITA No.4」)
「高校一年生の高津ナツミはカナヅチであったが、海は彼女の「夢のふるさと」であった。
 十一年前、トゥアモトゥ諸島の海で観光船が座礁・転覆。
 両親と姉の婚約者はサメの餌食となり、姉はショックで重病人となる。
 そして、行方不明になったナツミは四十日後、救命ボートで漂流しているところを発見される。
 彼女はすこぶる元気であったが、記憶は曖昧であった。
 以来、彼女は「ポセイドンの島」に住むという青年と出会い、一緒に過ごし、別れる夢を何度も見る。
 そして、高校一年の夏、友人と共に海水浴に来た彼女は、ケンと名乗る青年と出会う。
 彼は夢に出てくる青年と似ており、彼に誘われるまま、海に入ろうとする。
 しかし、日帰りのため、帰らねばならず、別れ際、彼からネックレスをプレゼントされる。
 そのネックレスは何やら高価なものらしく、どうしても外せない。
 また、ネックレスに彼のことを念じると、ケンはいつどんな時でも彼女の前に姿を現す。
 ケンは、自分はポセイドンの島から来て、ナツミをそこに連れて行くと話すが、ナツミはとても信じられない。
 そんな時、ナツミは姉から両親と婚約者の眠る海に、自分の婚約指輪を沈めてくれるよう頼まれる。
 ナツミはケンに相談し、海辺の公園で待ち合わせる。
 だが、ケンに恨みを抱く、いとこの勝秀にそのことを知られ、ケンは矢を射られ、海に転落。
 更に、勝秀はナツミに殺人を気付かれたと思い、夜、彼女を襲うが、未遂に終わる。
 この直後、姉が急逝し、ナツミは一人でトゥアモトゥへ行くのだが…」

・「むかし空から」(1985年「ボニータ夏休み大増刊号 レッツBONITA No.5」)
「斎木道弘は専属のライターで、プレイボーイ。
 霙の降る夜、彼の住む屋敷を薄汚れた格好の娘が訪れる。
 彼女は記憶を失っているようだが、道弘は彼女のことを知っていた。
 彼は彼女を美亜と名付け、屋敷に住まわせる。
 そして、美亜を自分の「最後の恋人」にして、今まで関係のあった娘達との関係を全て清算する。
 美亜は物の持ち方という基本的なことさえも知らず、どうやら「変わった育ち方」をしたらしい。
 記憶は全く取り戻せないが、両腕を高く広げていると、「鳥のように…空を飛びまわっていた」ような気だけはする。
 「籠の中の鳥」である彼女の正体とは…?」

・「花をさがして」(1986年「ボニータお正月大増刊号 レッツBONITA No.6」)
「晩秋の信州路。
 旅行家兼ルポライターの新藤豊は色白で細身の少女と出会う。
 彼女は、ハルカンランという珍しい植物を探していた。
 その花はどこかに必ずあり、それを辿っていくと、花の途切れたところに彼女の恋人が待っているはずだと言う。
 二か月後の冬、少女のことが気になり、豊がその地を再訪する。
 宿の主人によると、数日前に山に登っていくところを目撃されていた。
 豊が山に登ると、少女が住む山小屋を発見する。
 彼女はユリという名で、ハルカンランを見た人がいるので、ここで花が咲くのを待っていた。
 吹雪のため、山小屋に閉じ込められ、豊はユリから彼女についての話を聞く。
 彼女には、蘭の収集家である雅春という恋人がいた。
 変人かつ偏屈で評判はよろしくなかったが、お互い孤独な身の上で、二人は惹かれ合う。
 彼は十二年かけて改良した蘭に「ユリラン」と名付けるのだが…」

 「むかし空から」のラストを目にした時、「空耳アワー」で「映像のバカバカしさ・ベスト10」に入るであろう「行かなくちゃ〜」(原曲はセリーヌ・ディオン)が脳内再生されました。
 ムチャクチャな設定でも何故かすんなり読ませてしまうのは、「高階マジック」と言うべきものなんでしょうね。

2022年2月1日 ページ作成・執筆

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