高階良子「精霊の森」(1983年4月1日初版・1986年9月5日15版発行)

 収録作品

・「精霊の森 野獣編」
「アマゾン上流の町、マナウス。
 辻子郎は、マナウスきっての実力者、カルロス・メンドーサの邸を訪れる。
 子郎は、野生動物を手なずける才能があったが、今回の依頼は、14歳の少女であった。
 その少女はアルミラという名で、メンドーサの孫、そして、メンドーサ家の唯一の後継ぎにあたる。
 十二年前、メンドーサの娘と娘婿が乗った飛行機がジャングルに墜落し、アルミラも死んだものと思われたが、奇跡的に生き延びていたのであった。
 彼女は人語を解さず、野獣そのもので、密林のインディオ(原住民)達は彼女を「森の精霊」と呼ぶ。
 気が進まないながらも、子郎は、強制的に生け捕りにされたアルミラを人間らしくすべく、共同生活を始めるのだが…」

・「精霊の森 波乱編」
「森へと戻ったアルミラは、子郎に会いに、メンドーサの邸へと戻る。
 子郎は、彼女の教育係となり、カルロス・メンドーサの誕生パーティまでに、彼女を社交界に出しても恥ずかしくないレディーに仕立て上げなければならない。
 更に、メンドーサの邸では、元・後継者のジョゼや、密林の宝石を狙うペドロなどによる、様々な陰謀が渦巻いていた。
 アルミラにとって森を離れることは苦痛でありながらも、「森の精霊」がそれを望んでいるらしい。
 そして、誕生パーティの夜、何故、森の精霊が彼女をここによこしたのか、その理由が明らかとなる…」

・「はるかなる霧の谷」
「マーサ(水無月柾美)は、ハーフで孤児だったこともあり、日本からブラジルに移住した娘。
 彼女は、恋人のジェスを救うため、ダイヤの谷があるという「魔女の住む森」へ向かう。
 ジェスは、奪われた牧場を取り返すべく、悪党のパブロのもとに向かい、拉致されてしまったのである。
 途中、マーサはインディオの毒矢で傷つき、意識を失うが、この地区のインディオ保護官の辻子郎に助けられる。
 彼女は子郎にダイヤの谷に連れて行ってくれるよう頼み込み、彼に案内してもらうこととなる。
 一方、ジョゼはパブロのもとから脱走に成功。
 マーサに付けた発信器を頼りに、密林へと入り込むパブロ達を追うが、そこでアルミラと出会う。
 マーサとジョゼの運命とは…?」

・「ジパング」
「スペインから日本へ帰国する途中、秋川麻衣の姿が飛行機から消える。
 気が付くと、彼女は日本にいた。
 しかし、話す言葉はスペイン語で、風景もスペインとは違う。
 軍人に強制連行された彼女は、カサドラ将軍から、ここは「ジパング」だと教えられ、銃殺刑となる。
 銃殺される寸前、ゲリラの襲撃により、彼女はルーカスという青年に助けられる。
 彼は「旧ジパング民族解放前線」の一員で、麻衣は彼に預かりの身となる。
 ここで過ごすうちに、麻衣はジパングが、戦国時代の日本がスペインに侵略された異世界であることを知る。
 そして、ルーカスは「ジパングの誇り」を取り戻すために戦っていた…」

 高階良子先生の「エキゾチック・ファンタジー・ロマン」はどれもお気に入りでありますが、この本では「ジパング」に惹かれました。
 荒唐無稽と笑いとばさずに、想像力をどんどん膨らませる可能性のある内容だと思ってほしいです。

2020年10月18日 作成・執筆

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