外薗昌也・原作/小池ノクト
「殺戮モルフ@」(2017年10月1日初版発行)
「殺戮モルフA」(2018年3月1日初版発行)
「殺戮モルフB」(2018年6月1日初版発行)
「殺戮モルフC」(2019年10月1日初版発行)


単行本@(「ヤングチャンピオン」2017年No.5〜No.12掲載)
・「第1劇」
 放課後、女子高生の村崎まどかは、友人二人(斉藤晴美・厚木佳恵)と池袋を訪れる。
 ふと目をやると、ビルの隙間に、顔にズタ袋をかぶり、作業着の男がいた。
 彼は両手に刃物を持ち、通りがかったカップルを惨殺。
 男はまどかの方に来るが、彼女をスルーして、他の通行人を次々と襲う。
 一通り、殺した後、男は硬直したままのまどかに視線を向け…。
・「第2劇」
 池袋通り魔事件の容疑者は確保される。
 彼は黙秘を続け、身元は一切不明であった。
 一方、まどかは通り魔犯の姿を何度も目前に視る。
 彼女はPTSDによる幻覚と自分を納得させようとするが…。
・「第3劇」
 まどかは、池袋で彼女を助けた警官、本田泰章に連絡を取る。
 前日、彼女はオフィス街で通り魔犯が女性を殺害するところを目撃していた。
 幻覚だと思っていたのだが、それは現実であった。
 まどかは収監中の通り魔犯の犯行だと本田巡査に訴える…。
・「第4劇」
 警察で容疑者に対し、部長により厳しい尋問が行われるが、捜査は全く進展しない。
 そんな時、オフィス街で殺された不動産会社社員は池袋通り魔事件の目撃者だったことが判明する。
 本田は何か知っているのではないかと聞かれるのだが…。
・「第5劇」
 夜、村崎まどかのマンションを野口という女性が訪ねてくる。
 野口は都内のメンタルセラピークリニックに勤めるセラピストであった。
 彼女はまどかに「あの殺人鬼が出現してませんか?」と尋ね、集団セラピーに誘う。
 セラピーの参加者は池袋通り魔事件現場に居合わせた人達であった…。
・「第6劇」
 セラピストの野口は通り魔犯は「幻影」だと言うが、まどかはとてもそうとは思えない。
 警察署では、トイレで部長が何者かに殴り殺され、また、本田も警察署内で通り魔犯に襲われる。
 彼は通り魔犯を背負い投げで投げるのだが…。
・「第7劇」
 両親に同伴され、まどかはメンタルセラピークリニックを訪れる。
 そこで出会ったのは、通り魔犯の恰好をした女の子、典子。
 そして、池袋通り魔事件の惨劇を目の当たりにして、心に深刻なトラウマを負った人々であった。
 クリニックでは幻影を「治療」しようとするが、まどかはそれに違和感を覚える。
 彼女の思いを代弁するかのように、ヒカルという青年は治療を「茶番」と呼び、幻影は「現実」だと訴えるのだが…。
・「第8劇」
 池袋通り魔事件の容疑者はネットで「M」と呼ばれ、一部では崇める動きさえ出る。
 そのような社会の動向を知り、まどかは一人焦っていた。
 クリニックでは彼女やヒカルの主張は理解してはもらえず、このままでは皆、Mに殺されてしまう。
 そんな時、本田から連絡が入る。
 その用件は「M」に関する重大な秘密であった…。
・「あとがき」(外薗昌也)〜この作品が生み出された理由について。

単行本A(「ヤングチャンピオン」2017年No.13〜No.21掲載)
・「第9劇」
 自室で「M」に襲われつつも、まどかは撃退に成功する。
 クリニックの集団セラピーの際、ヒカルはそのことを知って、大興奮。
 彼はまどかにMの撃退方法やその正体を教えてくれるよう頼むのだが…。
・「第10劇」
 クリニックに突如、Mが現われる。
 皆は逃げようとするが、何故かドアが開かない。
 今回もまた、Mはまどかをスルーする。
 Mの目的とは…?
・「第11劇」
 まどかのスマホに警察署から連絡が来る。
 彼は大けがを負い、病院で面会謝絶中であったが、同僚に頼んで、まどかを病室に呼ぶ。
 彼は先日の夜、まどかに連絡した後、起こった出来事について話す。
 そして、本田はまどかにMの正体、計画、目的についても…。
・「第12劇」
 Mの脅威にさらされながらも、まどかは「いつも通りの日常」を送るしかない。
 ある日の下校途中、新宿で典子と再会する。
 典子はまどかを捜していて、彼女に手紙を渡す。
 手紙の主は、池袋通り魔事件の目撃者の一人である裕太からであった。
 集団セラピーが中止になってからも、目撃者の彼らは互いに連絡を取り合い、Mに対抗するためのグループを結成する。
 そして、Mからの唯一の生存者であるまどかに参加を求めていた…。
・「第13劇」
 先ほど、別れたばかりの斉藤晴美と厚木佳恵から同時に着信がある。
 送られた写メに写っていたのはMと無残な骸と化した二人であった。
 まどかは「Mは最後には必ずやってくる」ことを確信し、Mとの対決を決意する…。
・「第14劇」
 メールの位置情報から、二人の死体は三鷹市のある町にあることを知る。
 Mについて知っていることを全て書いた手紙を裕太に出した後、まどかは三鷹市に向かう。
 そんな彼女を尾行するデブ男が一人。
 彼は事件記者で、ネットで「スルー少女」と呼ばれるまどかを張り込んで観察していた…。
・「第15劇」
 ようやく見つけたMの隠れ場。
 それは古い廃工場であった。
 まどかは壁を乗り越え、包丁とピッケルで武装して、工場内に入る。
 そこで彼女が目にしたものとは…?
・「第16劇」
 まどかは背後からMに襲われる。
 彼女は敢然と反撃して、Mをその場に釘付けすることに成功。
 一方、事件記者も彼女の後を追って、中に入り、ここが「Mの家」だと知る…。
・「第17話」
 Mにやられたふうを装い、土壇場でまどかは逆転する。
 Mを殺そうとする彼女にMが言った言葉とは…?

単行本B(「ヤングチャンピオン」2017年No.22〜2018年No.7掲載)
・「第18劇」
 Mはまどかに、彼がこの世界に「宣戦布告」した理由を語る。
 そして、彼が今までまどかを殺さなかった理由とは…?
 一方、事件記者はMの家でMの意外な一面を知る…。
・「第19劇」
 Mの家が発見され、警察もマスコミも大騒動。
 その頃、まどかは自室に引きこもり、Mに突き付けられた言葉に苦悩していた…。
・「第20劇」
 落ち込むまどかを元気づけるため、両親は家族旅行に出かけることにする。
 目的地は、Y県観光ホテルのホテル・フォレスト。
 このチラシはポストに投函されていたのであった。
 M事件から離れ、まどかは久々に笑顔を取り戻す。
 晩、目的地のホテル・フォレストに着く。
 ホテルは青木ヶ原樹海の中に立っていた。
 そこではMの気配を感じず、地方に転校すればMの脅威から逃れることができるとまどかは考えるのだが…。
・「第21劇」
 そんなことを考えたのも束の間、いつの間にかホテルは従業員の死体だらけ。
 電話もスマホも使えず、助けを呼ぶ方法はない。
 家族が危険にさらされていることを知り、まどかは今度こそMの息の根を止めることを決意する。
 だが、包丁を構えて向かった先には、典子の姿があった…。
・「第22劇」
 典子もまどかと同じく、家族旅行に来ていたと言う。
 典子を巻き込むまいと、まどかは彼女をホテルの外に出そうとする。
 ところが、典子は…。
 一方、集団セラピーの面々は典子に関して、意外な事実を掴む。
 それは今までの彼女のイメージをいっぺんに覆すものであった…。
・「第23劇」
 ホテルの従業員に生存者がいた。
 しかし、彼は典子の姿を見るなり、逃げ出してしまう。
 まどかは典子の様子から不信を募らせていく…。
・「第24劇」
 集団セラピーの面々は典子の正体を知る。
 更に、富士樹海のホテル・フォレストで「M祭り」が開催されていることも…。
 「M祭り」には、Mの信者達に参加が呼びかけられていた。
 裕太は、まどかの手紙から、典子について恐ろしい事実に思い当たるのだが…。
 その頃、まどかは典子に何者なのかと問いかける。
 典子の答えとは…?
・「第25劇」
 典子はまどかに自分の正体を明かす。
 その時、まどかはM祭りの参加者に気絶させられ、拘束される。
 ボーリング場の椅子に縛り付けられたまどかはMを呼ぶよう強要されるのだが…。
・「第26劇」
 両親を殺され、また、M信者の勝手な言い分を聞かされ、まどかの怒りは頂点に達する。
 その瞬間、Mがその場に姿を現す。
 一方、集団セラピーの面々はホテル・フォレストに向かっていた。
 応援の暴走族集団と共に…。 

単行本C(「ヤングチャンピオン」2018年No.8〜No.13/2019年No.2〜No.5掲載)
・「第27劇」
 まどかの召喚したMは次々とMの信者達を虐殺する。
 それを察した典子はまどかを殺そうとするが、まどかを助けたのは…。
・「第28劇」
 Mは何故か「同族」の典子ではなく、まどかを選ぶ。
 失恋(?)した典子は号泣するも、Mは平然と足蹴にする。
 まどかは徐々に真相を理解していくのだが…。
・「第29話」
 Mはまどかに刃物を渡し、典子を殺すよう言う。
 まどかの取った行動とは…?
 更に、嫉妬に狂ったMに典子が襲いかかる…。
・「第30話」
 手負いの典子はホテルから逃げ出すも、Mは執拗に彼女を追う。
 殺されかけながらも、典子はMに注目されたことに歓喜する。
 二人が車道に出た時、集団セラピーの面々が乗った車と暴走族集団と鉢合わせをして…。
・「第31話」
 Mは車にもろにはねられる。
 暴走族集団はMが死んだものと思って、記念撮影をしたりとやりたい放題。
 更に、この場には、チーム一の凶暴男の金子厚志がいた…。
 一方、集団セラピーの面々の一人がMは「マーダー」ではなく「モルフ」の頭文字ではないかと言う…。
 「モルフ」とは一体…?
・「第32話」
 厚志がMを斬首しようとした時、Mの姿が消える。
 これにヒート・アップして、暴走族集団は手の付けられないことになる。
 また、Mの消失を目の当たりにして、裕太はMの正体を知るのだが…。
・「第33話」
 瀕死のMを目前としながら、まどかはMを殺すことができない。
 その時、ホテルに暴走族集団がなだれ込んでくる。
 まどかはMの身体をひきずって、安全な場所に逃げようとする…。
・「第34話」
 その頃、危篤状態のMは、警察病院に救急搬送されていた。
 手術室の医者達の前で、Mの身体は…。
 一方、まどかは樹海までMを引きずって来る。
 その二人を木陰から見つめる人物がいた…。
・「第35話」
 まどかとMは暴走族集団に見つかり、取り囲まれる。
 Mはまどかをかばい、暴走族集団に立ち向かう…。
 大殺戮を目の当たりにして、まどかが望んだこととは…?
 そして、まどかはMと対峙する…」

 「黒塗り事件」のトラブルで知られる「殺戮モルフ」。
 まあ、トラブルになってもおかしくはないぐらい、残酷描写はきつく、スプラッターホラーとしてはトップクラスに位置する作品ではないでしょうか?
 外薗昌也先生は一巻のあとがきで、日本でも「殺害行為を目的とする連続殺人犯、もしくは快楽殺人犯シリアルキラー」が現れるようになったことへの「恐れと衝撃」がこの作品を産み出した要因というようなことを書かれております。
 それも一理はあるでしょうが、個人的には(あくまでも個人的です!!)、1980年代のスプラッター・ホラーと共通する空気を感じてしまいます。
 特に、無目的に人を殺戮していくとなると、「13日の金曜日」のジェイソン。(シリーズでいうと、袋をかぶっていた二作目?)
 最初はシリアスな展開だったのに、ラストでは「殺人鬼 vs 暴走族集団」と「B級」に走るあたりに、作者の往年のスプラッター・ホラーに対する思い入れを感じてしまうのは、私の勘違いなのでしょうか?(十中八九、私の妄想です。)
 ともあれ、いろいろと謎が残されたままですので、ほとぼりが冷めた頃に、続編をお願いしたいと思います。

2022年9月29・30日/10月7・13日 ページ作成・執筆

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