高階良子「白い蝶の伝説」(1982年10月10日初版発行)

 収録作品

・「白い蝶の伝説」(1977年「なかよし増刊」7月号)
「宇野真奈美は、高校入試のため、ガリ勉をして身体を壊す。
 長野の祖父母のもとで療養することとなるが、そこは東京と違って、何もない。
 真奈美の心は焦るばかりで、身体はよくならない。
 ある日、散歩に出た彼女は、ひどい咳に襲われ、気を失う。
 白い蝶の気配を感じ、彼女が意識を取り戻すと、森の中の生き物たちのたてる音が一斉に耳に入ってくる。
 森の生物たちに魅せられつつ、彼女が祖父母の家に戻ると、友人達が彼女の様子を見に来ていた。
 友人達から高校入試が既に終わったことを知らされ、彼女は悲嘆のあまり、外へと飛び出す。
 彼女が絶望のあまり死を願った時、雪のように白い透明な蝶が彼女の前に現れる。
 この森には、白い蝶が人の魂をどこかに運び去るという伝説があった。
 その後、彼女は意識不明の状態で発見される。
 かろうじて死んではいないが、昏々と眠ったままで、原因は不明。
 その頃、彼女の魂は六角形の壁の中で目覚める。
 ライバルを倒した後、彼女はその世界の女王になるのだが…」

・「かがみよカガミよ鏡さん」(1977年「なかよし増刊」9月号)
「中谷レミは心優しいが、おっちょこちょいの女子学生。
 また、世話焼きの面もあり、学校の用務員の老人を祖父に似ていると慕っていて、いろいろと手伝いをする。
 彼女はサッカー部の潮にベタ惚れしていたが、彼には学園一の美女、寺内がまとわりついて、入り込む隙はない。
 ある日の学校からの帰り、彼女は路地の奥に骨董品店があるのに気づく。
 興味をひかれて入ってみると、店主は、学校の用務員の老人とそっくりであった。
 店主は彼女が片想いをしていることを見抜き、魔法の鏡をただでくれる。
 この鏡は彼女の願いを叶えてくれるらしい。
 家で、彼女は潮の好きな人を尋ねるが、鏡には彼女の顔が映るばかり。
 彼女の潮への想いは叶いそうになく、ある時、彼女は寺内のような美人になりたいと鏡に願うのだが…」

・「白い銀河鉄道」(1978年「なかよし増刊」9月号)
「勉強勉強と急き立てられる日々に絶望し、睡眠薬自殺を図った少女、由佳。
 病院に運ばれた彼女は元・機関士の老人を目にする。
 老人は看護婦の目を盗んでは、SLの模型を作り続けていて、それが彼の「生きる希望」だと話していた。
 由佳は、看護婦に捨てられた模型を老人のもとに持って行き、「生きる希望」について尋ねる。
 老人は彼女にいろいろな話をして、「たのしく生きるひけつ」を教える。
 また、由佳は老人の模型つくりに協力することになり、遂に模型は完成。
 それと同時に、彼女は退院することになるが、老人は病態が悪化し、会うことができなかった。
 その夜…」

・「扉のむこうに」(1972年「希望の友」)
「綾は、深い森の中にある洋館に、婚約者の章一を訪ねてやって来る。
 彼は母親の死後、綾には何も言わずに、自分が生まれ育った洋館に引きこもってしまったのであった。
 綾は章一に理由を聞くも、それには答えず、帰るよう言うだけ。
 と言われても、綾も彼の心変わりの理由を知らずには帰るわけにはいかない。
 いろいろと話を聞くうちに、どうやら鍵と鎖で固く封印されている扉に何らかの手掛かりがあるらしい。
 その部屋は、有名な彫刻家だった章一の祖父の仕事部屋であった。
 この扉の向こうに潜む「悪魔」の正体とは…?」

・「ミキがないた朝」(1971年「なかよし」9月号)
「松原ミキは幼い頃から、父の愛に飢えていた。
 父親は姉のめぐみばかりを可愛がり、ミキに対してはよそよそしい。
 中学に入る頃には、ミキは寂しさを埋め合わせるため、ひたすら勉強に打ち込む。
 彼女は家を出るために全寮制の学園に転校し、そこでも憑かれたように勉学に励む。
 ある日、彼女は、父親が病気で入院した知らせが入るが…」

 高階良子先生は江戸川乱歩好きで有名ですが、「扉のむこうに」はもろに名編「人でなしの恋」(注1)がベース。
 でも、完全に自分色に染めなおしているのはさすがです。

・注1
 「人でなしの恋」は怪奇マンガに大きな影響を与えている模様です。
 さがみゆき先生にも「人形の骨」(貸本/東京トップ社)という作品があります。
 探せば、もっと出てくるかも。

2022年9月6日 ページ作成・執筆

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