葉月秋子「魔獣狩り」(1992年10月20日初版発行)

 収録作品

・「魔獣狩り」
「川口絵里は漫画家志望の娘。
 彼女の漫画がホラー大賞の佳作に選ばれた夜、天井に黒い穴が現れ、中から男性と黒猫が落ちてくる。
 男の名はアルトラン、エイリスという世界のローダー(戦士階級)であった。
 そして、黒猫はシャル、ラムラスという世界から来た。
 彼らの話によると、三年前、爆発があり、時空が裂け、三つの世界が重なり合う。
 それに巻き込まれたのは、アルトランの兄のオリエン、シャルの敵であるギゼル、そして、恋人と共にバイク事故を起こし、行方不明になった絵理の姉であった。
 アルトランは兄を、シャルはギゼルを捜しており、絵理の姉のペンダントに導かれ、彼らは地球に来る。  絵理もまた姉を捜すために、彼らに協力する。
 だが、地球の喧騒の中ではアルトランはオリエンの思念が読めず、彼らはまずギゼルを見つけることにする。
 ギゼルは人を操る怪物で、人喰いの習性があった。
 絵理が行方不明者が多い地域を調べると…」

・「鈴の音のひびく時」
「朝子は公園で二人組の不良に絡まれるが、大きな犬に助けられる。
 犬には首輪がなく、また、彼女は犬を飼うのが夢で、しかも、ちょうど母親は単身赴任の父親のもとに行くところであった。
 だが、この犬は実は若い犬男で、名前はカイ。
 彼は祖母が「アラスカ一のハスキーの美女」だったというクォーターで、犬にも人間にも変身できた。
 彼を呼んだのは朝子のカバンに付いていた、祖母の形見のお守りであったが、これは鈴であった。
 この鈴について調べると、三鈴環(さんれいかん)の一部で、これに対応するかのように町には三つの鈴塚があった。
 朝子とカイは鈴を揃えようとするが、何ものかに妨害される。
 鈴塚に封じられているものとは…?」

・「風の水晶」
「黒き溶岩台地に立つ国。
 この地の底には炎の竜が「風の水晶」を胸に抱いて眠り、八十年に一度だけ目を覚ます。
 その機会に水晶を奪うため、国王とお妃は義娘のフェリシアを「白の巫女」に育て上げる。
 竜が目を覚ます前日、彼女は「北からの旅人」が「危険」という予言をする。
 この「北からの旅人」は闇の魔法使いであった。
 彼と出会ったことで、フェリシアは広い世界を知り、彼が自分を自由にしてくれることを望む。
 しかし、義母は悪辣で、また、彼女のフェリシアへのマインドコントロールは根深い。
 取引を持ちかけられ、闇の魔法使いはフェリシアと共に地平に降り、風の水晶を手に入れるのだが…」

・「黒獣」
「ある山に閉じ込められた最後の『獣』。
 『獣』は神々の時代に戦いに負け、生きながら地の底に葬られたのであった。
 そして、今、その戦いの相手が『獣』を訪れ、彼を自由にすると話す。
 だが、『獣』は…」

 「サスペリア」に掲載されたファンタジー作品です。
 ファンタジー関連は全く詳しくないので、実のあることは言えないのですが、掲載誌に合わせてホラー風味をきっちり盛り込んでいたので、好感を持ちました。
 「風の水晶」は「緑の瞳シリーズ」の一つで、この単行本の中では一番出来が良いと思います。

2024年5月14日 ページ作成・執筆

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