手塚治虫「ミクロイドS@」(1973年7月30日初版・1976年7月20日9版発行)
    「ミクロイドSA」(1973年10月30日初版・1976年7月20日6版発行)
    「ミクロイドSB」(1974年2月25日初版発行)


・「ミクロイドS@」
「アリゾナの砂漠に、知能を持つ昆虫、ギドロンの王国があった。
 そこはゼルギを頂点とし、人間を昆虫化させたミクロイドを奴隷として使っていた。
 ミクロイドのクロロクはギドロンが人類滅亡を企んでいることを知り、その息子、ジガーとヤンマにこのことを人間に知らすよう命ずる。
 ヤンマは父の言葉に従うが、彼の兄のジガーはギドロンの手先として、ヤンマを追う。
 逃亡の途中、ヤンマは、ミクロイド虐殺の中から、ジガーの恋人のアゲハとマメゾウと助け出し、行動を共にする。
 ようやくヤンマは国連本部に辿り着き、世界にギドロンの陰謀を知らしめようとするが、様々な国の思惑が考察して、紛糾。
 ギデロンの追手から逃れたヤンマ達は、、紆余曲折を経て、日本にやって来る。
 そこで、世界的科学者、美土路博士の息子、マナブとヤンマは巡り合う。
 ヤンマは美土路博士にギドロンの陰謀を話すが、すでに、ジガーがギドロンの殺し屋を引き連れて、日本に到着していた。
 ヤンマとジガーは対峙することとなるが…」
・「ミクロイドSA」
「無数の虫達による東京の大襲撃。
 美土路博士は、家出したマナブを探して外出したところを、虫の大群に襲われる。
 どうにかモーテルに避難した美土路博士は、わずかな生き残りの人々と脱出の方法を探る。
 一方、虫の襲撃を逃れたマナブは、ミチコという少女と出会い、家に向かう。
 彼女に想いを寄せるマナブであったが、ミチコにはギドロンの手下、マイマイが寄生していた…」
・「ミクロイドSB」
「美土路博士は、ジガーと和平を交渉するも、決裂。
 五日後に、日本列島への第二次攻撃を通達される。
 日本中が混乱する中、美土路博士は、虫に襲われないルンペンを発見し、そこに活路を見出そうとする。
 そして、遂に、虫達による殺戮が日本全国で繰り広げられる。
 その最中、美土路博士の家に、鑑別所から脱走してきた不良少女達が押し入ってくる…」

 故・手塚治虫先生の作品の中で、「三つ目がとおる」と並んで、好きな作品です。
 個人的には、怪奇漫画史に残る、トラウマ大傑作だと信じております。
 ストーリーは、恐らく、「昆虫大戦争」(1968年)にインスパイアされたものと思いますが、この映画を未見なので、推測の域を出ません。
 見所は、何と言っても、昆虫による人類大殺戮!!
 ここまで極端な話だと普通、リアリティは欠如するような気がしますが、累々たる死体の描写はどこか生々しく、凄惨極まりないです。
 手塚治虫先生は戦争中、空襲で死にかけ、その惨状を目の当たりにしておりますので、そういった体験が反映されているのでは…と考えております。
 ちなみに、個人的なお気に入りは、三巻の武装した不良少女達が家に乱入して以降。
 車で脱出を図るのですが、不良少女の一人に、髪が一房、上にピンと立っている少女がおり、マナブの車に乗り込む描写があるのに、後では、美土路博士の車に乗っております。
 手塚治虫先生でもこういうミスをするんだなあ〜。

・「風穴」(「ミクロイドSB」収録)
「レーサーの青年は、酒井一夫とルームメイトであり、ライバルでもあった。
 しかし、青年が、ユカリと名付けたマネキン人形を部屋に持ち込んでから、二人の仲にヒビが入る。
 青年はユカリをまるで一人の女性のように扱い、レース車にも同乗させるという熱の入れよう。
 だが、酒井一夫にはそのマネキン人形がどうしても我慢できず、レースにも集中できない。
 富士レースの後、二人(ユカリを加えたら、三人)は富士の風穴の中で、この件について話し合う。
 だが、折り合いはつかず、一夫は実力行使に訴える。
 青年はユカリを守ろうとするが、ふとしたはずみから、ユカリは崖から落ちてしまう。
 自分の行動を深く悔いる一夫を前に、青年はユカリのことを死んだものとあきらめ、彼を許す。
 だが、彼らは風穴の奥深くに入り込み、出口を見失っていた…」
 奇妙な味の逸品です。
 主人公がマネキン人形を愛しているという設定からしてビザール。
 オチも不気味な余韻を残します。

・「海の姉弟」(「ミクロイドSB」収録)
「沖縄本島の名護湾にある小さな漁村。
 そこに、比佐子と良の姉弟が二人、住んでいた。
 二人はサンゴを荒らす、オニヒトデを捕ることで生活していた。
 姉の比佐子は、本島でも珍しい海女であったが、混血児であった。
 沖縄戦の際に米軍の手引きをしたと村八分にされた母親が、米兵にレイプされた時にできた子供だったのである。
 ある日、良はオニヒトデの毒にやられ、療養することとなる。
 その時、本土(ヤマトンチュ)の青年が家を訪ねてくる。
 彼は姉と懇意らしいのだが…」
 沖縄問題を扱っているため、子供向けとは言い難い作品です。(レイプの要素もあります。)
 恐らく、沖縄返還があった頃に、描かれたものなのではないでしょうか?
 いろいろと思うことはあるのですが、私の沖縄についての歴史、文化等についての知識ははなはだ貧弱なので、言わぬが花でありましょう。
 とりあえずは、沖縄の人達の本土の人に対する、屈折した思いがあることは認めます。
 ですが、それにつけ込んで、扇動しようとする連中の存在は、沖縄の人達にとって、「百害あって一利なし」のような気がします。(まあ、あくまで傍の意見です。)
 ちなみに、陰毛を燃やすと、海の中で病気にならないという言い伝えは本当にあるのでしょうか?

2018年3月9日 ページ作成・執筆

秋田書店・リストに戻る

メインページに戻る