高階良子「幻想夜話」(2014年5月30日初版発行)
収録作品
・「菌糸のささやき」(「ミステリーボニータ」2013年12月号掲載)
「着の身着のまま、家をとび出した美弥子は、疲れ果てブナの木の根本で眠り込む。
目を覚ました彼女の前に、幻夜という青年が現れ、家に招く。
彼は彼女に森で採れたキノコの料理を御馳走し、休む部屋を提供する。
彼女が森の家で過ごすうちに、ブナの根本で、様々な夢や幻覚を見ることとなる。
幼い頃から美弥子に暴力を振るい、年頃になった時、襲おうとした義父の夢。
父親の失踪を美弥子のせいにして、身体的・精神的な暴力を振るい続けた母親の夢。
夢の中で彼らを倒すたびに、ブナの根本に不思議なキノコが生え、そこから全裸の男女、トミヤと美子が現れる。
美弥子は、彼らに覚えがないものの、どこか親しみを覚える。
キノコから生まれた彼らは、自分達は彼女から生まれたと話し、様々な面で美弥子をサポートする。
そして、幼い彼女が義父に殴打される夢を見た時、キノコから弥子という少女が生まれる。
美弥子と、トミヤ、美子、弥子の関係とは…?
そして、美弥子が悪夢から解放される時は来るのであろうか…?」
・「夢の溜り」
「大企業の会長の孫である真田滝夫は、ある森を訪れる。
その森は都心に近いのに、中は鬱蒼として、太古の森のようであった。
一年前、彼は森の中のブナの根本で不思議な少女と出会った。
もう一度少女に会えるのではないかと思い、商談をキャンセルして、わざわざ訪れたものの、彼女はいない。
その時、急な雷雨に襲われ、ブナの木に落雷、気が付くと、滝夫はブナの根本の空洞の中であった。
そこには、奇妙な格好をした女性が先に逃げ込んでいた。
彼女は滝夫が一年前に会った少女とそっくりであり、名は山路鴇子(ときこ)という。
いつしか二人は身体を合わせ、一夜を過ごす。
雷雨がおさまった後、滝夫は彼女に結婚を申し込む。
その証拠に彼は彼女に名刺と腕時計を渡し、鴇子は胸に縫い付けてあった名札を彼に渡す。
だが、彼が空洞から外に出ると、昨日とは全く様子が変わっていた。
昨日、落雷で裂けたはずのブナは、それから数十年も過ぎたような様子で、鴇子の姿も空洞から消えていた。
彼女からもらった名札を頼りに、彼は鴇子の行方を追うのだが…。
胸元にキノコのアザのある鴇子と滝夫は再会できるのであろうか…?」
ブナの木の精、幻夜を主人公に据えたファンタジーが二編収められております。
「菌糸のささやき」とは面妖なタイトルでありますが、「マタンゴ」のようなノリではありません。
何と申しましょうか、まあ、風変わりな作品ではあります。
一応、ストーリーを簡単には紹介しておりますが、さっぱりワケわからんと思います。
私の文章の拙さは認めますが、実際にあんな感じのストーリーです。(非常に書きにくかったです。)
「夢の溜り」は私のお気に入りです。
ネタばれしますと、「タイム・スリップ」ものでありますが、古典的なSFロマンス(注1)を、高階良子色に染め上げた感じが、何ともいいです。
どんな題材も問答無用で「高階良子色」に染める豪腕…これこそが高階良子先生が超一流である証であると私は考えてます。
・注1
ジャック・フィニーあたりを念頭に置いておりますが、読んだのが大昔なので、具体的にどの作品を指しているわけではありません。
あと、「たんぽぽ娘」の作者(ド忘れ)も、ロマンティックなSFを書いているようですが、大して読んでおりません。
有名な「たんぽぽ娘」ぐらいは読んでおかなくては。
2017年9月21・22日 ページ作成・執筆