戸部けいこ「ミステリー劇場A 魔少女」(1989年12月15日初版発行)

 収録作品

・「鏡よ鏡…PARTV 魔少女」
「一連の恐ろしい事件から、すっかり回復した麗子。
 しかし、彼女は不吉なニュースを新聞で目にする。
 それは、あの館の跡地に建てられた新築住宅で怪我人が続出しているというものであった。
 しかも、行方不明の小学六年生の少女は、昼間、YAMASHITA公園で会っていた。
 その夜、魔鏡の破片にとり憑かれた少女が一輪車に乗って、麗子の家にやって来る。
 麗子と母親は家じゅうの窓やドアにロザリオをかけ、籠城するのだが…」

・「メビウスの愛」
「大正七年八月。軽井沢。
 雪乃は、別荘の東屋で桜公路達彦からプロポーズを受ける。
 だが、雪乃にはY乃という双子の妹がおり、彼は彼女を雪乃と勘違いしていた。
 しかも、雪乃は両足が不自由な身。
 そんな雪乃に向かって、Y乃はどのみち、彼と結婚するのは自分だと言い放つ。
 十年前、二人が小さかった頃、Y乃は危険と看板のかかった橋を渡ろうとして、落ちそうになる。
 雪乃がわざわざ助けに行って、Y乃は助かったものの、雪乃は転落し、このような身体になったのであった。
 以来、Y乃は、この罪を償うため、ずっと雪乃の世話をして、この重荷に耐え続けてきた。
 Y乃は雪乃に向かい、雪乃のしたことは「有難迷惑」だったと非難する。
 その夜、雪乃は絶望しながら、明日なんか来なければいいと切に願う。
 午前零時、庭の大木に雷が落ち、その衝撃で雪乃の部屋の窓ガラスが割れる。
 気が付くと、彼女はベッドにいた。
 いつもの朝のようだが何かが違う。
 嵐の痕跡は全くなく、新聞は昨日のもの。
 彼女の時間は逆戻りして、昨日と同じ一日を繰り返していたのだった…」

・「通りゃんせ」
「明治二十八年。信州千蛇村。
 ある夜、たえの母親のおしずは重い病気に臥せっていた。
 祖母が庄屋の家に薬をもらいに行くが、お上はおしずが亭主に言い寄ったと言いがかりを付けて、追い返される。
 そこで、たえは、医者を呼ぶために、約十キロ離れた町に出かける。
 だが、その途中には、二町(約218メートル)の「天神様の細道」があった。
 日が暮れてから、そこを通ると、後ろから足音がついてきて、追いつかれるまでに鳥居をくぐらないと命を取られると言う。
 それでも、母親の命には代えられない。
 たえが天神様にさしかかると、そこではお祭りをやっていた。
 すると、蛇の祠の前で、一人の町娘がガラの悪い男に暴行を受けている。
 その男を恐れて、誰も娘を助けようとせず、たえも急ぐあまり、悲鳴を後ろに聞きながらも、その場を足早に立ち去る。
 町に着いたたえは、医者と共に、村に向かう。
 途中、天神様を通りがかるが、先程と違って、人気は全くない。
 あの娘は誰かに助けられたと安心するも、蛇の祠あたりで何者かがたえ達を追ってくる。
 たえと医者は急いで逃げるが、何故か細道をぬけずに、蛇の祠に戻って来る。
 たえが振り向くと、医者の姿はなく、右肩に刀傷のある娘の亡霊がいた。
 たえの運命は…?
 たえの母親のおしずは天神様で起こった恐ろしい事件について心当たりがあるようなのだが…」

・「復讐の石」
「鈴木和子、岩本友見、阿利砂は仲良し三人組。
 友見は和子と付き合いの長い片桐に告白し、阿利砂は彼氏とデートで、和子だけあぶれてしまう。
 その時、街頭の占い師の老婆が彼女に話しかけてくる。
 老婆は、和子に仕返しをしたくないかと、「復讐の石」を見せる。
 この石は「相手にしてやりたいことを空想して言葉にすれば」その通りになると言う。
 和子は百円でこの石を買うが、どうやら本物らしい。
 翌日、和子は友見が片桐にふられたと知る。
 もしかして、和子が好きなのかと思ったが、そうではなかった。
 和子は、友見と阿利砂に復讐の石を見せ、三人で、片桐が好きな人に呪いをかけるのだが…」

 「魔少女」は、悪魔にとり憑かれた少女が一輪車に乗って、ヒロインの家の周りをうろつくシーンがB級ホラー映画のノリで、なかなか楽しめました。
 「メビウスの愛」「通りゃんせ」は力作で、読み応えがあります。

2021年12月2日 ページ作成・執筆

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