高生浩子「雛人形たちの夜」(1991年5月15日初版発行)
収録作品
・「雛人形たちの夜」(「プリンセスゴールド」1988年3月25日号)
「沢渡三日子は強い霊感を持っていたため、父親から疎まれ、全寮制の女子寮で暮らしていた。
三月に入り、彼女は毎晩、奇怪な夢を見る。
妹の弥生が見知らぬ男性の膝元にいるうちにミイラ化するという夢であった。
彼女と同じ霊能者の深見俊朗は彼女から手紙で知らされ、友人達と沢渡家に向かう。
元凶は江戸時代に名のある人形師につくられた雛人形であった。
この雛人形は現・当主の祖母の嫁入り道具で、年末の掃除の際に弥生が見つけ、春に飾る。
しかし、この男雛が弥生にとり憑き、毎夜、彼女は男雛と共に姿を消してしまう。
このままでは弥生は精気を吸い取られるので、三日子は家に戻り、男雛と対決するも、男雛に逃げられてしまう。
何かが起こるのは旧暦の節句の日のようだが…」
・「血の鎮魂歌」(「プリンセスゴールド」1989年1月25日号)
「放課後、江崎拓美が隼人先輩に数学を教わっている時、親友の中島亜紀子が転落するのを目撃する。
彼女は五階から転落しており、事故死扱いとなる。
だが、拓美は亜紀子の死に疑問を抱き、彼女が転落した教室を訪れる。
すると、電気のような衝撃の後に、亜紀子の幽霊が現れ、自分は殺されたと告げる。
翌日、小野ユカリという不良少女の死体が校舎の屋上で発見される。
亜紀子は同一人物による犯行と考え、手掛かりを得るために、担任の浜口に亜紀子の事故の調査結果を教えてくれるよう頼むのだが…」
・「死者が目覚める時」(「プリンセスゴールド」1987年12月25日号)
「11月中旬頃。
樋口まりやと沖山清志はX県の県立博物館で開催されている仏教美術展に行く。
ふと気づくと、彼女のそばに銀白色の長い髪に黒づくめの恰好をした男がおり、恋人から離れないよう彼女に警告する。
男は姿を消し、清志の行方を捜すと、彼はミイラの展示物の前に立っていた。
このミイラはI県にある観世音院秘蔵の照覚尼即身仏で、天明の大飢饉の際に人々を救うことを祈願して即身仏になったという。
まりやが清志のもとに駆け寄ると、突如、ショーケースのガラスが吹っ飛ぶ。
その時、まりやはミイラから視線を感じ、彼に近づくと殺すという強い念に打たれ、気絶する。
更に、帰宅の際、巡礼中の恰好をした僧侶の一群に清志はさらわれ、行方不明となる。
まりやはあのミイラが彼の誘拐と関係があると考え、観世音院に向かう。
途中、彼女はミイラの手下に殺されそうになるが、その危機を救ったのが、博物館で彼女に警告した男であった。
彼のは九泉(くのみず)といい、白いフクロウを操ることができた。
彼と共に観世音院を訪れるものの、彼は彼女を寺の連中の手に渡してしまう。
彼女は彼と再会はできたのだが…。
ミイラが沖山清志を狙う理由とは…?」
・「魔神転生」(「プリンセスゴールド」1989年3月25日号)
「黒川安道は金融業界で『毒蛇』と忌み嫌われている老人であった。
その彼が呪詛をかけられ、孫娘の朱鷺子は陰陽師の境泰親を訪ねる。
生憎、泰親は不在で、代わりに紹介されたのが次男の太郎であった。
太郎は見かけは軽薄そうだが、呪詛に関しては一流中の一流。
難なく安道の呪詛を祓ったものの、実は朱鷺子も命を狙われていた。
太郎は結界を張り、相手の送った式神を自分の式神に追わせて、呪詛をかけている陰陽師のもとに向かう。
その時、彼の目の色が変わるが、彼の秘密とは…?」
個人的には「死者が目覚める時」と「魔神転生」の出来が良いように思います。
特に、「魔神転生」に出てくるキャラは作者のお気に入りで、この作品は実はサイドショートストーリーとのことです。
後書きにて主人公が中学生の頃の話が本編で「ぜったいに描きたい」と書かれておりましたが、本当に描かれたのかどうかは謎です。
ちなみに、イマイチだったのは「血の鎮魂歌」。
幽霊が自分は殺されたと訴える話はよくありますが、何故犯人を教えないのか不満です。
それじゃあ片手落ちですやん。
2024年6月24日 ページ作成・執筆