犬木加奈子「プレゼント@」(1993年12月15日初版発行)

 クルミは、お誕生日にプレゼントをもらえなかった、十歳の女の子。
 その日からずっと、彼女は自分のプレゼントを捜して、さまよい続ける…。

・「プレゼント1」
「第1話 バースデイ・プレゼント」
 ある小学校の誕生会。
 飾り立てた教室で、その月に誕生日を迎える子供達に友達がプレゼントをするのが恒例であった。
 その月は、まゆ子とクルミの二人の少女。
 だが、まゆ子はクルミの美しさに嫉妬しており、友達と示し合わせて、クルミにプレゼントが贈られないようにする。
 それから、数十年後…。
「第2話 恋のプレゼント」
 サラリーマンのミツグは、その名の通りのミツグ君。
 彼はヨーコに夢中で、デートの度に贈り物をしていたが、出費が重なり破産寸前。
 それでも、彼女のハートを掴めるものがないかと考えていると、見知らぬ少女が声をかけてくる。
 少女は、いらなくなったプレゼントをもらったからと、彼にハート形のイヤリングを渡す。
 イヤリングは真ん中で、二つに分かれるタイプのものであった。
 これを恋人に渡すと、二人は結ばれるというのだが…。
「第3話 忘れられたプレゼント」
 アカネはクラスの人気者。
 彼女のもとにはクラスメートから幾つもプレゼントが贈られるが、彼女にとっては単なる「人気のバロメーター」。
 委員会で帰りが遅くなった日、彼女は教室で見知らぬ少女に話しかけられる。
 少女は、自分を思い出すようにと、アカネにプレゼントを渡す。
 何のことやらさっぱりわからないが、プレゼントをもらって悪い気はしない。
 少女は、思い出すまで、毎日、プレゼントを持ってくるのだが…。

・「プレゼント2」
「第1話 最後のプレゼント」
 パーティでのプレゼント交換。(皆で輪になって椅子に座り、ストップが出るまで、隣の子にプレゼントを渡していく行事。)
 強欲でわがままな少女は、自分の手にしたプレゼントが気に入らず、文句をつけて、自分の欲しいものを奪い取る。
 それは昔のことのはずなのに、彼女は今、子供の姿になって、そのパーティのプレゼント交換に出席している。
 彼女が受け取るプレゼントとは…?
「第2話 ある画家のプレゼント」
 売れない青年画家。
 彼は画廊の主人の娘を一目見て、心奪われる。
 娘は、彼女が気に入るような素晴らしい絵を描き、それをプレゼントしてくれたら、恋人になってあげると青年に約束する。
 彼は彼女をモデルにした絵を何枚も描くが、どれも彼女の素晴らしさを再現できていない。
 才能がないと落ち込む彼の前に、見知らぬ少女が現れる。
 少女は彼の絵には心がないと指摘し、あるアドバイスをする…。
「第3話 プレゼントのお返し」
 リン子とすず子は親友同士…のように見えるものの、実際は、リン子が、自分の引き立て役として、すず子を利用していた。
 リン子はすず子の世話をあれこれ見ていたが、自分よりも頭も顔も劣っていると内心で蔑み、優越感に浸る。
 一方のすず子は素直にリン子に感謝し、心から慕っていた。
 だが、リン子にニキビができたことから、状況は一変。
 リン子がニキビを気にするあまりに悪化させ、陰気になったのと対照的に、すず子はテストで良い点を取ってから、自分に自信を持つようになる。
 気が付けば、二人の立場はすっかり逆転していた。
 ある日、リン子はすず子に香水をプレゼントするが、その思惑とは…?

・「プレゼント3」
「第1話 懸賞のプレゼント」
 是キワミは懸賞プレゼントに夢中。
 葉書一枚で高価な商品や、非売品、限定品といった様々なものが手に入り、やめることなんてできやしない。
 贈られるものの中には、化粧品や医薬品のサンプルもあった。
 調子に乗って、それらを濫用するうちに…。
「第2話 一番怖いプレゼント」
 サソリとサナギの姉妹。
 姉のサソリは機会を見つけては妹のサナギをいじめ、サナギへのプレゼントも全て横取りする。
 サナギが落ち込んでいると、見知らぬ少女が現れる。
 少女はサナギに「バクの箱」をプレゼントするのだが…。
「第3話 失くしたプレゼント」
 あのお誕生会からクルミはずっと自分へのプレゼントを探し続ける。
 彼女はプレゼントがある場所ならどこにでも現れるが、自分のプレゼントは見つからない。
 あちこちさまようクルミは、時々、いろいろな人と出会う…。

・「プレゼント4」
「第1話 うらしま」
 シマ子は今、預けられている家が不満で仕方がない。
 食べ物は嫌いなものだらけだし、家中、年寄りばかり。
 しかも、あれもダメ、これもダメと子供扱いも甚だしい。
 彼女は早く大人になりたいと願うのだが…。
「第2話 おいかけっこ」
 少女は家・学校・塾を往復するだけの毎日にうんざりしていた。
 彼女のストレス解消法は、公園で遊ぶ子供達に怖い話をして、怯えさせること。
 今日、子供達にしたのは、夕暮れの中、帰ろうとすると、後ろから足音がずっとつけてくるという話。
 子供達が逃げ去った後、一人の女の子が残っていた。
 女の子は、後を追ってくるものの正体を知っているというのだが…。

・「プレゼント5」
「第1話 ぬいぐるみ」
 みみ子は孤独な少女。
 両親は仕事で忙しく、彼女をほとんどかまわず、ベビーシッターのカヨ子は意地悪な娘であった。
 両親は早く帰れない時は、彼女にぬいぐるみを買ってくれて、子供部屋はぬいぐるみでいっぱい。
 ある晩、ぬいぐるみの中から、クルミと名乗る少女が現れる。
 クルミは、ぬいぐるみの中には両親の愛がたっぷり詰まっており、みみ子を見守っていると慰める。
 しかし、クルミの慰めが思わぬ惨事を引き起こすことに…。
「第2話 コウノトリ」
 ある小学校の六年生クラスに、コウノという少年が転入してくる。
 彼の家族はとても変わっていた。
 両親の都合で、一人っ子の子供だらけなのに、彼には弟や妹が十人ぐらい。
 そのため、家庭は貧しく、両親は朝早くから晩遅くまで配達の仕事に追われていた。
 ある少年は、弟や妹に恵まれているコウノが羨ましく、彼をかばったり、親切をしたりする。
 ある晩、彼の父親が、息子がお世話になっているお礼にと段ボール箱を持ってくる。
 その中身とは…?

 「プレゼント」は「サスペリア」に掲載された、犬木加奈子先生の代表作の一つです。
 タイトル通り、「プレゼント」をテーマにしたオムニバスで、自分への贈り物を探すクルミという少女を軸にストーリーを進めることで、心温まるファンタジーとしての側面を持つことに成功していると思います。(とは言っても、この時期の作品はやっぱり、グロ描写が多めです…。)
 ベストは何と言っても、人気作「コウノトリ」でしょう。
 少子化がやかましく騒がれている今こそ、読んでみては如何でしょうか?

 
2023年1月17〜19日 ページ作成・執筆

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