高階良子「むらさき神話」(1984年8月5日初版・1986年4月10日8版発行)
収録作品
・「むらさき神話」
「岩崎隆行は岩崎財閥当主の後継ぎで、プレイボーイとしても有名。
だが、本人には結婚する気は全くなく、彼目当ての女達から逃げるため、バースディ・パーティ会場を脱け出す。
雨の中、車で自分の家に向かう途中、車が歩道の娘に水をはねかける。
彼が車から降りると、そのみすぼらしい身なりの娘は彼の名前を呼んで、抱き着いてきた。
彼女の名は、かおり。
八年前、彼は四国の山中でイノシシ狩りの仲間からはぐれて、怪我をする。
その時、廃村に住む老夫婦に助けられるが、その老夫婦の孫がかおり(当時8歳)であった。
かおりの両親は亡く、もの心ついた後に出会った人間は隆行が初めてであった。
短い間ではあったが、かおりは彼になつき、彼は、何かあったら訪ねて来るよう、名刺を残して立ち去る。
その後、かおりの祖父母は亡くなり、彼女は彼を頼って、ここまで歩いて来る。
彼は彼女を家に置くことにして、彼目当ての女連中に自分の婚約者と紹介する。
そして、彼女を良家の令嬢に仕立て上げるのだが…」
・「夢はてる島」
「沖縄の最南端、波照間島。
伝説によると、南にある南波照間島では誰も年を取らず、飢えもなく、一年中、鳥は囀り、花は枯れることがないと言われる。
志保は波照間島に滞在し、毎日、南波照間島を見ようと南の崖で過ごす。
彼女は雪国の出身で、両親を雪崩で亡くし、病気がちの祖母と一緒に貧しく厳しい生活を送ってきた。
祖母が亡くなった後、祖母がいつも口にしていた南波照間島に憧れ、家を売った金で波照間島にやって来たのである。
ある日、志保の前に、南波照間島を知ってると言う少年が現れる。
彼は彼女を、三本のガジュマルの樹のある所に連れて行く。
ここにはキジムナーという精霊が住むと言われ、島の人々は近づかなかった。
ある日、少年は「いい所へ案内する」と、ガジュマルに隠された洞窟に彼女を案内する。
そこを抜けた先は伝説の南波照間島であったが、そこでの生活は…」
・「竜の翡翠」(1984年「別冊ビバプリンセス」冬号)
「冴子が竜神氏の遺産を受け継いで二年。
彼女は「竜の翡翠」のペンダントを町で落としたことをきっかけに、昇という青年が山に勝手に住み着いていることを知る。
彼は、生まれた時から顔中に金色の毛が生えており、袋のような仮面で顔を隠して、生活していた。
冴子は、ペンダントを返してもらいに彼の家を訪ねると、彼は、ペンダントを十日間貸してほしいと懇願する。
彼は、彫物で生計を立てており、ペンダントの彫刻の美しさに心奪われていた。
彼と一緒に過ごすうちに、冴子は、彼の、自然を愛する、純粋な心に気付く。
醜い容姿に生まれた彼の前世とは…?」
・「天使の胎内」
「三輪産業の跡取りの美和辰臣。
彼のビジネスは非情なものであったが、彼によって破産した一家の心中のニュースが心身共にこたえ、休養を取る。
彼が向かったのは、九州からずっと南の離れ小島。
そこには、亡くなった母の代わりに彼を育ててくれた乳母のぎんと、ナルミという少女(17歳)が住んでいた。
ナルミは、昔、彼によって心中させられた一家の生き残りで当時、二歳。
十五年ぶりに再会すると、彼女はまるで人魚のように美しく、そして、純真無垢に育っていた。
そこで過ごすうちに、辰臣は彼女に癒され、島での永住を考える。
一年後、島の近くでヨットが座礁し、一人の男が島に流れ着く。
彼は矢崎恭二といい、美和辰臣とナルミの関係を知っていた。
そして、海の向こう側に憧れるナルミを誘惑し、船を盗んで、東京へ行く。
辰臣は急いで東京に戻り、彼女の行方を捜すのだが…」
「むらさき神話」は高階良子版「マイ・フェア・レディ―」?(映画、観たことないです…。)
「夢はてる島」は、高階先生お得意の「南国&精霊」ものです。
「竜の翡翠」は「竜神氏の遺産」の続編で、これ単体だと話が理解しづらいはずです。
「風と海とモアイ」にて、まとめられております。
「天使の胎内」は、袖で高階先生がコメントしている通り、「むらさき神話」とストーリーが似ております。
この作品で描ききれなかった内容を「むらさき神話」で描こうとしたとのことです。
・備考
カバーに破れ・痛み。
2022年1月24・26日 ページ作成・執筆