英洋子「暗闇の指輪」(1992年9月30日初版発行)

 収録作品

・「水晶迷宮(クリスタル・ラビリンス)」(1991年「不思議ミステリー No.1」掲載)
「観月晶子は、17歳の誕生日に、おばから紅水晶の指輪をもらう。
 いいことがあるかと思いきや、片想いをしていた先輩にあっさり失恋。
 校庭で、晶子が泣いていた時、一人の青年と出会う。
 その瞬間、彼女は立ちくらみを起こし、奇怪だが、悲しい夢を見る。
 それは、恋人が儀式の生贄となり、恋人の心臓を両手に掲げて、涙を流す娘の夢であった。
 彼女を保健室に運んだ青年は、大学部の学生であったが、彼とはどこかで会ったような気がしてならない。
 翌日、彼女のクラスに、その青年が実習生として現れる。
 彼の名は、紫石智(しせき・さとる)で、晶子に対しては、やけに冷たい。
 晶子は、夢で見た光景は、中南米の古代文明に関係があると考え、大学の図書館に向かうと、紫石智もそれについての本を探していた。
 それを機に、晶子は智から、アステカ文明の話を聞く。
 特に、「太陽神への生け贄の儀式」は夢の内容とことごとく合致し、指輪の紅水晶には悲しい愛の歴史が秘められているのでは?と考える。
 だが、智は「この世に思いが残るとすれば憎しみだけだ!!」と逆上し、晶子の首を絞めようとする。
 その時、晶子は、智の身体に紫色のオーラに覆われ、また、目には涙を浮かべているのを目にする。
 その夜、晶子に、紫石智に近づかないよう警告する手紙が届き、紫石智は失踪。
 晶子は、紅水晶の謎を解き明かすために、彼の行方を追うのだが…。
 晶子と紫石智の因縁とは…?」

・「孔雀とタイガーアイ(虎目石)」(1991年「不思議ミステリー No.3」掲載)
「1940年代後半のイングランド南西部。
 女学校を出たばかりのカロラインは、両親に相次いで先立たれる。
 遺されたのは、田舎の小さな別荘と、三人の戦災孤児。
 背に腹は代えられず、カロラインは、両親の形見である孔雀石のブローチを、富豪のフレデリック・ウィンターに買い取ってくれるよう、手紙を書く。
 すると、カロラインのもとに、本人がやって来て、ブローチを高額で買い取る代わりに、彼の妻になってほしいと申し出る。
 だが、それは財産目当ての求婚者を排除するのが目的で、カロラインは、名ばかりの妻でしかなかった。
 冷たく振る舞うフレデリックに対して、カロラインは妻として接しようと努力する。
 そのうちに、彼女はウィンター家に伝わる呪いについて知る。
 ウィンター家の屋敷には「死の虎」が棲んでおり、ウィンター家の主が愛して者は皆、死に、主自身も37歳になれば死ぬというのだ。
 カロラインは、フレデリックを守るため、手掛かりを探すのだが…」

・「暗闇の指輪 ―死のピジョン・ブラッド―」(1992年「不思議ミステリー No.6」掲載)
「宮山瑠璃は、宝石の力を感じる能力があり、叔母の宝石店でバイトをしていた。
 ある日、彼女は、幸せの絶頂の最中に事故死した小林れい子の写真を見て、引っかかる。
 小林れい子は、瑠璃のクラスメート、まり子の姉であり、まり子は、姉がルビーの指輪を幸運の指輪と呼んでいたとよく話していた。
 その指輪は去年、フランスの骨董屋で買ったもので、以来、れい子はモデルや女優として大活躍をし、大会社の御曹司と婚約までいったのである。
 まり子は、姉の形見として、そのルビーの指輪をはめてから、姉と同じように、芸能界デビューを果たす。
 瑠璃はまり子に指輪を浄化しようと提案するが、まり子は、今の幸せを壊したくないために躊躇する。
 だが、ある夜、まり子は、血まみれの貴族女性の霊を視て、泣く泣く、瑠璃に指輪を渡す。
 瑠璃は、指輪と対決して、正体を見極めようとするのだが…」

・「YoKoの不思議ミステリー」
 英洋子先生の「オーラの色」に関する実話体験談です。

 ベテラン作家、英(はなぶさ)洋子先生による「宝石や貴石をもとにしたミステリー・ストーリー」(前袖の文章から)です。
 ベテランだけあって、ストーリーや構成はしっかりしており、上質な内容だと思います。
 個人的には、舞台が英国の「孔雀とタイガーアイ」が、ロマンチックな内容と英先生の作風がうまくマッチしているような気がして、一番のお気に入りです。

2020年2月11日 ページ作成・執筆

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