森由岐子「見えない恐怖 窓のない部屋」(1987年6月25日初版発行)

「苦学生の瀬川淳(19歳)は、夏休みのアルバイトの面接をパスする。
 それは、家庭教師のアルバイトで、住み込み、食事付きで20万円という好条件なもの。
 彼が電話で指示された場所に向かうと、彼と同じ、住み込みアルバイトの真屋友子という娘がいた。
 二人は、人里離れた所にある、豪勢な洋館に、車で送られる。
 その邸には、沙羅という少女と祖母、執事の野口の三人が暮らしていた。
 沙羅は、父親が海外出張で留守、母親は最近亡くなり、祖母のもとで暮らすようになった。
 学校に通うには辺鄙な所なので、淳は勉強を、友子はレディーとしてのマナーを教えることとなる。
 沙羅は、淳に対しては、無邪気で明るい少女であり、彼への親愛の情を隠そうとしない。
 しかし、友子の前では、陰気で無口な少女で、話しのきっかけすら掴めなかった。
 淳と友子は訝り、双子の姉妹でもいるのかと考えるが、祖母は屋敷にはこの五人以外、いないと断言する。
 更に、友子は、夜、気味の悪い顔をした、小人のような少女と出会う。
 淳が沙羅に、この家に他の住人がいないか、尋ねると、彼女は、母親の亡くなる前の言葉を思い出す。
 それは、この家には「窓のない部屋」にもう一人住んでおり、その人はその部屋で沙羅の幸福をいつも祈っている、というものであった。
 淳と友子はその「窓のない部屋」を探すが、そんな部屋は屋敷のどこにもない。
 その日の夜、友子は急に姿を消す。
 祖母は、家庭教師を辞めたと説明するが、夜、部屋の窓から、淳は庭に彼女の姿を見る。
 彼は友子の行方を捜すうちに、彼女が話していた、気味の悪い少女を実際に目にするのだが…。
 「窓のない部屋」の秘密とは…?」

 ネタばれいたしますと、「赤んぼ少女」 meets 「バスケットケース」、なのであります。
 森由岐子先生の作品ですので、構成はしっかりしており、それなりに読ませます。
 ただ、この作品で残念な点は、沙羅の二重人格の理由が薄弱なこと。(イマイチ説得力に欠けます。)
 あと、この表紙は何とかならなかったものなのでしょうか? どう見ても、イロモノです。(変な顔の人物は、真屋友子と思われます。 

・備考
 経年のシミや汚れ、目立つ。

2019年9月17日 ページ作成・執筆

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