高階良子「バラ色の悲劇」(1990年10月5日初版発行)
収録作品
・「バラ色の悲劇」
「大学四年生の今泉螢は、宇津木志保から手紙をもらう。
宇津木志保は螢の憧れの先輩で、誰よりも美しく、また、誇り高く、学園の女王様であった。
高校に入学したての頃、螢は志保に気に入られ、親しく付き合っていたが、志保は大学卒業後、資産家の宮坂氏に嫁ぎ、それ以来、会っていない。
螢が手紙を開けると、助けを求める内容で、ショックを受ける。
そこで急遽、冬休みを利用して、螢は宮坂家を訪れる。
三年ぶりに会った志保はすっかりやつれ、以前の精気はどこにも感じられない。
志保に乞われ、螢は宮坂邸に滞在することとなる。
志保は夫の宮坂久也と全くうまくいっていなかった。
というのも、久也は、裏で手をまわして、志保の父親の事業を窮地に陥れ、志保と家屋敷を手に入れたからであった。
かつてバラ屋敷と呼ばれていた邸は今、バラを全て引き抜かれ、一本もない。
志保はバラ屋敷を取り戻すことを夢見るが、毎夜、彼女は何者かに命を狙われていると怯えていた。
螢は志保が徐々に精神の変調を来しているのではないかと心配するのだが…」
・「人形の囁き」
「須崎奈々は誰からも忘れられた存在であった。
彼女が幼い頃、母親は年下の資産家と再婚するも、一年後に死亡。
資産家は後妻をとり、その間に女児が生まれたため、奈々は須崎家にいながらも、決して家族扱いはされなかった。
高校生になった奈々は周囲に何も期待せず、また、何も感じないよう努めながら、日々を過ごす。
彼女の唯一の楽しみは、憧れの中津川純の姿を見ることと、校舎の裏側で豊かな自然に触れることだけ。
ある日、ブラジル帰りのおじが須崎家を訪ねてくる。
おじは彼女に「ブードゥの呪い人形」をくれ、奈々は仕方なくもらう。
翌日、奈々のお気に入りの裏山の林が開発で失われる。
帰宅後、ベッドで奈々が泣いていると、呪い人形が彼女に話しかけてくる。
人形は願いを叶えてやると言い、奈々は人形に思いを送り込む。
以来、彼女の願いは叶っていくのだが、それは他人の不幸の上に成り立っていた。
しかも、彼女は人形に逆らうことができなくなる。
様子のおかしい奈々を中津川純は心配するのだが…」
2022年6月29・30日 ページ作成・執筆