高階良子「メディアの薔薇」(1997年3月15日初版発行)

 収録作品

・「メディアの薔薇」(1996年「ミステリーボニータ」9月号掲載)
「藍は祖父と母に相次いで死なれ、天涯孤独の身となった時、父親の祖母、貴岡麗奈から使いが彼女を迎えに来る。
 父親と母親は愛し合っていたが、正式な結婚はせず、また、母子のことは秘密にしたまま、事故死していた。
 藍が貴岡家に行くと、予想以上の豪邸で、貴岡家はかなりの財産家らしい。
 早速、藍は祖母の貴岡麗奈に面会する。
 祖母は九十歳に近く、藍に会えたことをとても喜ぶ。
 だが、彼女は奇病のため、カーテンを引いた薄暗い部屋に閉じこもり、顔にはベールを降ろしていた。
 藍だけでなく、邸には、長男の兄妹、潤と晃子もやって来る。
 潤は藍を偽物だと考え、彼女の荷物を物色している最中、毒殺される。
 手に小さな刺し傷があり、死因はクラーレか何かによる神経麻痺性毒物による呼吸停止。
 藍が真っ先に疑われるが、それには理由があった。
 二十年前、麗奈の子供達が一年の間に次々と死ぬ。
 長男と長女は潤と同じような毒殺で、藍の父親の三郎は交通事故死するが、三郎が犯人だと疑われていた。
 そして、今、麗奈の孫が同じように何者かに狙われる。
 庭師、亜礼須隆史(あれす・たかし)は何か心当たりがあるようなのだが…。
 また、藍は屋敷で「メディア」と名乗る美しい女性を目にする。
 彼女の手には非常に強い毒を持つ「メディアのバラ」があった。
 彼女の正体とは…?」

・「御霊夜叉」(1996年「ミステリーボニータSPECIAL」Vol.9掲載)
「島根県出雲地方。
 高校二年生の唐沢瀬里は夏休み、考古学者である父親の発掘調査に同行する。
 メンバーは父親と彼女、そして、父親の学部の若き講師、江本英和の三人。
 三人は、以前の調査で瀬里が発見した竪穴に入り、彼女に案内されるまま、進む。
 そこには、一万年以上前に建てられた巨大なピラミッドがあった。
 中には縄文土器以外にも宝物の山で、奥には黄金の棺があった。
 棺の中には、仮面をつけた死体があったが、その身体は全く腐敗しておらず、今にも生き返ってきそう。
 瀬里の父親は、この死体は大己貴(おおなむち/大国主命)で、このピラミッドは大己貴の復活のために建てられたと推測する。
 中を探索するうち、瀬里の足元が崩れ、彼女は転落する。
 父親がロープを降ろして助けようとするも、江本に背後から刺される。
 江本はこの発見を独り占めしようと、瀬里と父親の死体をそのままにして、地上に戻る。
 一方、地下に閉じ込められた瀬里の前に、大己貴が現れる。
 大己貴によると、瀬里は彼の妻、須勢理姫で、彼女がここに来たのは、彼に導かれたためであった。
 彼は瀬里に冥界に戻るよう促すも、彼女は江本への復讐を果たさずにはおれない。
 大己貴は彼女にあった夜から千の夜の後、復活し、それまで待てるなら、彼女の望みを叶えると約束する。
 そして、約三年が経った頃…」

 「メディアの薔薇」はラストに解き明かされる謎があまりにキテレツで、ちょっと絶句しました。(犯人はすぐ予想がつきますが、だからって…。)
 でも、高階良子先生の作品だから、許されるかな…。
 「御霊夜叉」は伝奇ミステリーかと思いきや、後半、もろに「モンテクリスト伯」です。
 考古学的な内容を扱っておりますが、さほど深入りせず、バリバリの復讐譚になるところに、高階先生の好みを見ました。
 恐らく、子供の頃に、子供向けの世界文学全集を貪り読んでいたのでしょうね。

2022年7月1・4日 ページ作成・執筆

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