たまいまきこ
「碧の傷あと@」(1994年12月25日初版発行)
「碧の傷あとA」(1995年7月15日初版発行)
・「第1話 碧の傷あと」(単行本@)
「高校一年生の吉沢満緒(よしざわ・みつを)は友人関係のトラブルで自殺を図り、生活体験療法として小さな島に連れて来られる。
この島は半農半漁で自給自足に近い生活をしており、閉鎖的な島であった。
指導員の佐野には満緒より二歳年上のミナミという息子と彼女と同年齢の英里紗という娘がいた。
ミナミはどうも彼女がこの島に来ることに反対らしく、しつこく本土に帰るよう命令する。
一方の英里紗は透き通った肌の美しい娘で、虚弱体質かつ呼吸器系にトラブルがあった。
ミナミにとやかく言われるも、満緒は相手にしないうちに、島は嵐に襲われる。
雨で家から出れない時、満緒は佐野から「人魚の伝説」を聞かされる。
一万年前から人間から隔絶された半人半魚の人々の島があり、島の人々は昼間は陸で人間の姿、夜は魚人となって海に還るという。
そして、満月の夜、満緒は島の秘密を知ることとなる…」
・「第2話 碧の帰還」(単行本@)
「あの事件の後、島を出たミナミは父親の知り合いのもとに身を寄せる。
大学入学を控えた春休み、彼は派遣業のアルバイトを始め、ある別荘のプール掃除に行くこととなる。
その別荘は女優の藤倉啓子のもので、満緒は彼のバイトについて行く。
別荘はかなり警備が厳しく、どうにか二人は入れたものの、今度はプールの場所がわからない。
水音が聞こえたので、そちらに向かうと、池の前に藤倉啓子が座り、池の中にはミナミの妹、英里紗の姿があった。
ミナミが池に近づいたことから騒動になり、満緒は捕まり、ミナミは殴られて池に転落する。
不審人物でないことが証明されるまで二人は邸にとどまることになるが、そこで藤倉家の奇妙な人間関係が明らかになる。
藤倉啓子の主人、都久島兵衛は仕事の都合で家を空けることが多く、その間、邸を実質的に支配していたのは「つげ(注1)」という科学者であった。
藤倉恵子はつげに対して気を遣い、彼が娘の庸子に絡んでも何も言わない。
それに対して、庸子は自分は母から愛されてないと嘆いていた。
満緒はつげの研究塔に何か秘密があると思うのだが…。
一方、ミナミは研究塔の中で目覚める。
彼の頭の中で話しかける声が聞こえるのだが、その声の主は…。
つげの研究テーマとは…?
そして、藤倉啓子の秘密とは…?」
・「第3話 碧の迷路」(単行本@)
「満緒のクラスメートの奥津文香は極度の水恐怖症であった。
だが、ミナミは彼女から海洋人種特有の水の気を強く感じ、水恐怖症には理由があるのではないかと考える。
文香の幼なじみでいとこの晃によると、七歳の時、秩父の本家に行った際に川に溺れて、それ以来らしい。
とりあえず、ミナミは文香を夜の公園に呼び出し、彼女にかけられた封印を解く。
彼女が見に付けている祖母からの首飾りには「水よけの呪文」がかけられていた。
封印を解かれた文香は大好きな晃が所属する水泳部に入り、大活躍。
しかし、これにより晃と文香の間に溝ができる。
また、ミナミも「水よけの封印」には何か意味があるのではないかと考え、封印をかけなおそうとする。
この首飾りの秘密とは…?
そして、7歳の文香と晃に何が起こったのであろうか…?」
・「第4話 碧の爪」(単行本@)
「有動要(うどう・かなめ)という少年が満緒のもとを訪ねてくる。
彼はあの島の出身で、ミナミを追ってきたのであった。
午後四時、S公園でミナミたちは有動要と会うが、彼は既に女の子たちと仲良くなっていた。
特に菅野光菜という少女が彼に好意を持つが、翌日、彼女の死体が公園で発見される。
死因は首は鋭利な刃物で切り裂かれたことによる失血死。
その夜、満緒は挙動不審な要の姿を目にしており、また、要は「100の満月の儀式」が可能であった。
もし、要が殺人を犯したことを島の者が知ったら、島の者が彼を始末しに来る。
それよりも前に、ミナミは彼を見つけ出そうとするのだが…」
・「第5話 碧の貴公子」(単行本A)
「伊豆諸島沖。
海底火山の調査中、海底で石棺が発見される。
この石棺には全身を緑色の鉱物で覆われたミイラが収められており、ミイラの手や足には魚のヒレのような奇妙な突起があった。
ミイラはH大の海洋研究室に送られ、そこで解析を受ける。
H大の海洋学の教授、城島はミナミの父親の友人、かつ、彼の身元引受人で、ミナミと満緒は早速、そのミイラを見に行く。
「碧の貴公子」と名付けられたミイラはとても身分の高い者だったようで、その身体を覆う緑色の結晶は未知の保存技術であった。
しかも、石棺は四大文明が発祥する遥か昔の一万年前のもので、研究者たちは色めき立つ。
その時、満緒がミイラをしげしげと見つめていると、突如、ミイラが目を見開く。
彼女は催眠術にかけられ、その晩、研究員に加えられたミナミを訪れ、彼をフォークで刺す。
フォークの血をミイラの唇に垂らすと、ミイラは復活するのだが、「碧の貴公子」の正体は…?」
・「第6話 碧の祭壇」(単行本A)
「新たな敵の出現。
ミナミは危機感に駆られ、父親の研究ノートの解読に没頭する。
そんなある日、ミナミたちにランスフォール財団よりクルーザー・パーティの招待状が届く。
ランスフォール財団はマリアナ諸島の中のランスフォール島に住む一族で、海洋資源開発分野で莫大な富を築いていた。
招待状には幼いミナミと両親が写っている写真が何故か同封されていた。
また、父親の背後に写っている男はエデル博士で、当時、父親と共同研究をしていたという。
ミナミ・満緒・城島教授、有動要の四人はパーティに参加するが、ミナミはエデルと後部デッキの五番ボートで会う約束をしていた。
ミナミ(と勝手について来た満緒と要)がボートに行くと、ボートはコンピューター制御をされており、勝手に動き出す。
ボートはさんご礁を利用して作られた人工島に着き、彼らはエデル博士と会う。
満緒や要は彼に違和感を抱くも、ミナミは父親の研究のことで頭がいっぱいで何も気づかない。
また、要はこの島で半魚人族の使う音波のようなものを耳にするが、言葉になっておらず雑音でしかない。
彼らは博士のユマが半魚人族と人間の混血体であることを知り、彼女の案内で博士の実験場に入る。
エデル博士の研究とは…?」
・「第7話 碧の追跡者」(単行本A)
「ある理由からミナミはランスフォール財団に狙われることとなる。
当主のスワンの妹、フェザーは実力行使に訴え、まず、有動要を誘拐する。
その片腕を脅迫状と共にミナミの部屋に置くが、これに気付いたのは満緒であった。
彼女はミナミの代わりに指定の場所に行くも、彼女も捕まり、フェザーからあの島に案内するよう命令を受ける。
だが、島に向かう途中、フェザーの船は霧に包まれ、奇妙な磁場でコンパスも利かなくなる。
更に、突然の事故でフェザーは切れた鎖を顔面に受け、海に転落。
満緒と要はボートで流されてしまうのだが…」
・「第8話 碧の彼方へ」(単行本A)
「島では半魚人たちが集結し、ランスフォール財団の部隊を待ち受ける。
要はフェザーの命を救おうとし、満緒は島民たちを説得しようと奔走する。
そして、ミナミはランスフォール財団の船に潜入し、スワンを脅し、争いを止めようとする。
だが、その時、島では地神より授かった秘法が遂に発動する。
ランスフォール財団の船は全て沈没するも、スワンたちはどうにか島にたどり着き、ミナミは捕らえられる。
しかし、島には半魚人の姿はなく…。
半魚人たち、そして、ミナミと満緒の運命は…?」
・「百舌姫」(単行本A)
「小矢太は遊びで多くの百舌を射落としていた。
彼は「はやにえ」を目印に百舌の居場所を見つける。
ある時、百舌が落ちた場所あたりに美しい娘がいた。
彼女には彼の打った矢が刺さっており、彼は彼女を家へと担いで送るのだが…」
「HITOMI CCミステリー」に掲載された「半魚人」を扱ったファンタジー・ホラーです。
少女漫画では「半人半魚」と言えば人魚が相場で、半魚人はあまり見かけず、珍しいと思います。
ストーリーは、作者の資質なのでしょうか、ドラマティックかつミステリアスな展開で読ませます。
また、所々にグロいシーンも盛り込まれ、ちゃんとホラーしているのも嬉しいところ。
「読み切り作品だったところを、うやむやのうちにシリーズ化した」と後書きに書かれてあるように多少の粗もありますが、個人的には隠れた佳作だと考えております。
・注1
木偏の右隣に「単」。
2024年5月11日/6月12日・13日 ページ作成・執筆