高橋葉介「学校怪談@」(1995年8月15日初版・1996年4月5日3版発行)

・「第1話 潜むもの」
「山岸が下駄箱の蓋を開けると、中に相沢がいた。
 相沢はイジメられっ子で、両親に学校を休ませてもらえず、そこに隠れていたのだった。
 山岸は彼を匿い、下駄箱に食事を運ぶ。
 そのうちに、相沢の身体は変化していき…」

・「第2話 赤い靴」
「赤い靴の都市伝説。
 夕方、女の子が歩いていると、黒いコートで背の高い不気味な男から赤い靴を履くよう頼んでくるという。
 恐くなって、その靴を履くと、男は斧で少女の両足を切断するのであった。
 放課後、三人の女子生徒がその話に盛り上がる。
 遅くなったので、帰ろうとすると…」

・「第3話 眼」
「授業中、山岸の前の席の飯島の後頭部に「眼」が現れる。
 どうにも気になって、つついたり、字を見せたりしていると、教師に怒られてしまう。
 再び前に目を向けると、「眼」のあった場所に今度は「口」があった。
 口は何か喋っているようなのだが…」

・「第4話 渡り蛇」
「女子生徒にキスしてもいいと言われ、山岸はキスをする。
 すると、女子生徒の口から蛇が現れ、彼の喉に潜り込む。
 女子生徒によると、この蛇は「渡り蛇」で、別の誰かにキスすると移せるらしい。
 山岸は相手を捜すのだが…」

・「第5話 少年ナイフ」
「学校の先生に頼まれ、山岸は吉沢の家を訪ねる。
   吉沢はいじめが原因で、十日も学校を休んでいた。
 二階の彼の部屋に上がると、彼は毛布にくるまっていた。
 山岸が学校を休んだ理由を聞くと、彼は毛布をのける。
 彼の両腕は巨大な剣と化していた。
 ある朝、起きたら、こうなっていたらしいのだが…」

・「第6話 ぬいぐるみ」
「裕樹奈々子は熊のぬいぐるみを学校にいる時も肌身離さず抱いている。
 学校では、ひたすら「ブリッコ」で押し通し、教師を懐柔。
 ある日の下校途中、三人の女子生徒が奈々子から熊のぬいぐるみを奪い取るのだが…」

・「第7話 手」
「山岸は今泉から、ちょっと見せたいものがあるので、家に来るよう誘われる。
 彼の部屋で、今泉は学校一の美人、朝倉みゆきについて話す。
 放課後、彼は彼女に告白したことがあった。
 あっさり撥ねつけられるが、彼がしつこく迫ると、彼女は彼の手を振り払おうとする。
 すると、彼女の左手が外れて、彼女は左手を残したまま、その場から立ち去る。
 翌日、朝倉みゆきの左手はまた再生していた。
 今泉は彼女の左手を段ボール箱の中で飼うが、左手に変化が起こり始め…」

・「第8話 ×印」
「女子生徒の背中にいつの間にか×印が書かれるという悪戯が学校で流行る。
 悪戯をされる女子生徒は可愛い娘達ばかりで、皆、まんざらでもなかったが、下校途中、彼女達は×印にナイフを突き刺され、次々と殺害される。
 警察の捜査にもかかわらず、犯人は不明で、女子生徒は複数で登下校するよう命じられる。
 ある放課後、岡田という女子生徒が一人で帰宅していた。
 有吉という教師が彼女に声をかけ、一緒に帰るのだが…」

・「第9話 眠るな」
「山岸が眠りから覚めると、学校中の先生・生徒が全員、惨殺されていた。
 彼は犯人として警察に捕まるが、警察としてもどう考えたらいいかわからない。
 取調室で、山岸が疲れて、眠りに落ちると…」

・「第10話 仮面」
「放課後、山岸は校長室にある木製の仮面をかぶり、赤城という女子生徒を脅かそうとする。
 すると、彼は何も言わないのに、仮面が「体が欲しい」と言葉を発する。
 赤城を怒らせたため、彼は急いで仮面を校長室に戻し、彼女の後を追おうとするのだが…」

・「第11話 花」
「日向悦子は山岸のガールフレンド。
 吉井という男子生徒は彼女に惚れており、帰宅途中の彼女に声をかける。
 彼は彼女に手作りの花をプレゼントしようとして、一本の花を彼女の頭に飾ろうとする。
 その時、チクッと鋭い痛みがあり、彼女は花を捨て、そのまま走り去る。
 それ以来、彼女の頭頂には花が咲くようになる。
 また、「何か黒いもの」がパタパタという羽音と共に彼女をつけ狙うようになるのだが…」

・「第12話 ヤマギシ」
「山岸涼一はあるクラスに転校する。
 どうもクラスメートの様子がおかしいと思ったら、彼と同姓同名の生徒がいた。
 彼は校舎の屋上から落ちて死んだという。
 後藤という大柄な生徒は山岸を死んだ彼と似てると言う。
 後藤は山岸をいじめていたようなのだが…」

・「第13話 助けて」
「山岸は「助けて」という声が四六時中聞こえるようになる。
 その声は彼にしか聞こえなかった。
 幽霊の声にしろ、テレパシーにしろ、「助けて」というだけでは手の打ちようがない。
 手掛かりになりそうなのは、血まみれの顔が一瞬見えたことだけであった。
 山岸は「助けて」という声に追い詰められ…」

・「第14話 さわるな」
「ナツコの身辺でおかしなことが続発。
 何者かが彼女の身体をどこからか触ってくるのであった。
 ある時、撮った写真に、毛むくじゃらの手のが写っており、そいつの仕業らしいのだが…」

・「第15話 保健室の怪」
「山岸は熱を出し、保健室のベッドで休む。
 ふと横を向くと、隣のベッドに女の子が寝ていた。
 彼女は具合が悪く、「ずっと一人でここにいる」と言う。
 しかも、彼女は「ここから出られない」らしい。
 山岸が不審に思うと、奇妙なことに気付く。
 彼女の首はシーツから出ているが、そのシーツの下は…」

・「第16話 穴」
「山岸が友人と校庭でキャッチボールをしていると、ボールが穴に入ってしまう。
 機械でボーリングしたようなきれいな穴で、底は深くて見えない。
 友人がボールを取ろうと、穴に手を突っ込むと、手が抜けなくなってしまう。
 騒ぎを聞きつけて、他の生徒達や先生が集まってくるが…」

・「第17話 吸血鬼」
「階段から落ちた山岸を女子生徒が介抱し、額の血を舐める。
 山岸は「何か」を見て、慌てて教室をとび出し、階段で何者かに押されたような記憶があった。
 女子生徒は、山岸は何も見なかったと言い、家に帰るよう勧める。
 山岸の見た「何か」とは…?」

・「第18話 夢」
「暗い夜、細い一本道を、出刃包丁を持った包帯女に追われる夢。
 夢の中で、包帯女に殺されると、現実にも死んでしまうらしい。
 ユミ子はエリ子にこの話を聞かされるが、この夢は他の人に話すと、話された人が見るようになるのであった。
 このままでは夜もおちおち眠れず、ユミ子は電話でノリ子にこの話をするのだが…」

 2022年でデビュー45周年を迎える高橋葉介先生の代表作の一つで、「週刊少年チャンピオン」に連載されました。
 先生にとって初めての週刊誌連載で(注1)、基本、一話完結のショートストーリーです。
 @〜D巻までは、学校を舞台にした「怪奇幻想もの」で、主人公は山岸涼一という中学生。
 E巻以降は、九段九鬼子先生が主人公となり、「学園もの」の側面が強くなります。
 特に、@〜D巻までは怪奇色が強く、ホラー・ファンの支持を強く受けているように思います。
 奇想天外なストーリーを、ポップかつグロい(そして、ちょっぴりエロティックな)魅力的な絵柄で、切れ味鋭く描いており、短編の上手さ・巧みさを堪能することができます。
 当時の高橋葉介先生の集大成と言ってもよく、バラエティの豊かさにはただただ圧倒されるばかりです。
 初心者からマニアまで幅広くお勧めできる作品で、私にとっては(ちょっと臭い表現ですが)「エバーグリーンな名作」です。

・注1
 10本ほどストックをもって始めたものの、すぐに自転車操業になったとのことです。
 それでも、内容を劣化させずに、単行本を15巻まで続けたことに実力を感じます。

2022年3月16・19・24日 ページ作成・執筆

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