高橋葉介「学校怪談F」(1997年10月10日初版発行)

・「第109話 イジワル爺さん」
「長谷川の爺さんはイジワルで有名だった。
 子供の頃、山岸は、買ったばかりのサッカーボールを爺さんの家に蹴り入れてしまう。
 彼がしつこく返してと頼むと、爺さんは人形の首を投げ渡し、本物の首と彼は驚いて、逃げ帰る。
 結局、ボールは戻ってこなかった。
 それから、十年経ったある日、山岸は突然、このことを思い出して、ムカッ腹を立てる。
 下校途中、彼は、泣いている男の子を見かけ、理由を聞く。
 すると、長谷川の爺さんがボールを返してくれないと言う。
 山岸は家に入って、爺さんにボールを返すよう言うのだが…」

・「第110話 血を吸う舌」
「舌が蛇のように伸び、犠牲者の血を吸いまくる怪物が出てくるホラー映画、「血を吸う舌」。
 あまりのヒドさに、山岸がビデオを停めようとすると、怪物が止めるなと言って、山岸の首にその舌を伸ばす。
 翌日、九鬼子が山岸を見舞いに来る。
 彼女は「血を吸う舌」のビデオが気になり、観始めるのだが…」

・「第111話 美勒登場」
「授業中、九鬼子は脱線して、「他人の脳を食べると記憶が伝達する話」をする。
 すると、その話を真に受けて、生物室から標本用のホルマリン漬けの脳を盗み出した奴がいた。
 それは峠美勒(とうげ・みろく)という生徒なのだが…」

・「第112話 深い穴」
「峠美勒が山岸の家に遊びに来る。
 山岸の家は、父親が海外に単身赴任しており、母と二人暮らし。
 だが、美勒によると、山岸が父親を殺したと彼に話したらしい。
 実際、冷蔵庫には父親のバラバラ死体があった。
 美勒は死体を始末する必要があると言い、裏庭に埋めるよう勧めるのだが…」

・「第113話 つぎはぎ女」
「ある変質者。
 彼の部屋には、いろんな女性から気に入った部品を集めてつくった「理想の女性」がいた。
 残るは頭部だけで、学校の校門で生徒達を物色し、妄想に耽る。
 彼は佐々木奈々子が気に入り、その後をつける。
 その彼を一歩踏み出させたものとは…?」

・「第114話 滅愛記」
「図書委員の立石双葉は峠美勒から奇妙な本を返却される。
 表紙にはタイトルも著者名もなく、扉を開くと「滅愛記」の表記があった。
 著者は女性らしく、恋人を他の女に奪われた恨み・つらみが延々と書かれ、最後に自殺する自伝小説と美勒は話す。
 双葉はその本に興味を持たなかったが、家に帰ると何故か鞄にその本が入っている。
 とりあえず、読み始めると、主人公の女性に感情移入し始め…」

・「第115話 ベッドの下に何かいる」
「体調不良のため、佐々木奈々子が保健室で休んでいると、峠美勒がやって来る。
 九鬼子に様子を見に行くよう言われたらしい。
 美勒は奈々子に保健室のベッドにまつわる噂話をする。
 このベッドで寝ていると、ベッドの下から触手が何本も伸びて来て、寝ている人を捕まえて、下に引きずり込むという。
 そして、ベッドの下の何かはその人を貪り食い、骨しか残らない。
 奈々子が怯えたため、美勒はベッドの下を確認するのだが…」

・「第116話 父の影」
「山岸が目を覚ますと、いつの間にかベッドの横に父親がいる。
 彼が声をかけると、父親の姿が奇妙に歪む。
 気が付くと、山岸は教室で居眠りしていた。
 そばには峠美勒が彼を見守っており、二人は一緒に帰る。
 美勒は山岸に「父親のイメージ」について問いかけるのだが…」

・「第117話 プカプカ浮かんでる」
「立石双葉の父親と愛人が交通事故を起こし、立石家は崩壊寸前。
 双葉は母親の代わりに着替えを病院に届けに行くと、医者が彼女に声をかけてくる。
 彼は、彼女がこの病院で産まれた時の担当医師であった。
 双葉は彼に病院の地下へと案内されるのだが…。
 彼女が「戻る」場所とは…?」

・「第118話 血の伝言」
「休みがちな立石双葉を、九鬼子達は見舞うことにする。
 日曜日の午後、佐々木奈々子が公園で皆を待っていたら、女の人が声をかけてくる。
 その女性はどうも様子がおかしく、奈々子を、恋人を奪った女と思い込んだらしい。
 刃物で脅され、奈々子は、彼女の恋人の部屋へと連れて行かれる。
 そこには、喉を切り裂かれた男性の死体があった。
 奈々子は彼と心中させられそうになるのだが…」

・「第119話 生霊」
「母親が父親の実家に話し合いに行ったため、立石双葉は夜、九鬼子を家に呼ぶ。
 一緒に寝るものの、九鬼子のいびきがひどくて、とても眠れない。
 仕方なく、双葉は母の寝室で寝ることにするが、そこに父親の愛人の生霊が現れる…」

・「第120話 九段九鬼子、14歳」
「九鬼子は学校で14歳の時の自分の幻を視る。
 その頃、彼女はイジメられっ子であった。
 また、当時のいじめっ子達の幻影も現れる。
 九鬼子はその幻影に掴みかかるのだが…」

・「第121話 罠」
「14歳の九鬼子が階段の踊り場で意識を取り戻す。
 彼女は階段から落ちたのであった。
 そこに峠美勒が現れる。
 九鬼子は、中学の先生になった夢を見たと話すが、美勒は「全部 夢」と断言する。
 そして、彼女の味方は自分だけと諭すのだが…」

・「第122話 身代り」
「山岸は学校に来る途中、自分の頭が破裂する幻影に襲われる。
 気が付くと、何も起こってなかったが、この場所の地縛霊に話しかけられる。
 その地縛霊は、交通事故で頭の鼻から上が失われていた。
 帰り道も同じ道を通らねばならず、山岸は九鬼子に相談する。
 九鬼子のアドバイスとは…?」

・「第123話 雨女」
「雨で川が増水すると、川の中から現れた女性が、傘を持たない子供に声をかけ、川の中に連れて行くという怪談がこの地域にはあった。
 その怪談の雨女が山岸達の中学校を訪れる。
 学校のあちらこちらで子供を捜す雨女に山岸は同情する。
 九鬼子が、その優しさが命取りになると警告すると…」

・「第124話 空の怪」
「山岸は空に巨大な怪物を視るようになる。
 その怪物は隙あらば彼に襲いかかろうとしていた。
 九鬼子に相談しても、彼女には何も視えないと言う。
 山岸は絶えず上に気を配るようになるが…」

・「第125話 化猫」
「夜、山岸は腹痛(?)でうずくまっている女性を見かけ、彼女を家に送る。
 異臭を感じ、山岸が押入れを開けると、ミイラ化した女性の死体があった。
 すると、背後から、女性に化けていた化猫が彼に襲いかかる。
 家から逃げ出した山岸は、銭湯帰りの九鬼子と出会い…」

・「第126話 赤信号」
「山岸は、ガイコツの死神が三本指を立て「赤信号 三ツ」と言う夢を見る。
 翌日、彼が登校途中、死神の幻が現れ、「赤信号 一ツ目」と告げると、赤いスポーツカーに轢かれそうになる。
 それから、間もなく、再び死神の幻が「赤信号 二ツ目」と告げると、今度は、真赤に塗装した鉄骨が彼の目の前に落ちてくる。
 彼は九鬼子に相談しようとするも、彼女は風邪で休んでいた。
 帰りは土砂降りになり、彼は立石双葉と一緒に帰るのだが…」

 F巻は、九段九鬼子と深い関わりを持つ峠美勒が登場します。(詳しく述べると、ネタバレになっちゃいます…。)
 九鬼子の暗い過去と関係があるせいか、峠美勒の出てくる回はダークで、多少わかりにくい話が多い気がしております。
 また、それに影響されてか、他の作品もどこか陰りのある内容のものが多いです。
 そういった作品の合間に、「手の伝言」「空の怪」「赤信号」といったオチの効いた作品があって、やはり、こういう作品の方が溌剌としているように思います。

2022年3月23・24・31日 ページ作成・執筆

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