芳村梨絵「ミモザ館の惨劇」(1988年11月10日初版発行)

 収録作品

・「ミモザ館の惨劇」(「ひとみコミックコレクション」1986年8月25日号掲載)
「美大で若手彫刻家として注目されている楡崎真郷(にれざき・まさと)。
 彼は小さい頃から母親と暮らしてきたが、その母親が謎の失踪を遂げてから三か月もの間、山中の別荘(ミモザ館)に引きこもる。
 彼を心配して、従妹の麻美は、友人の真理子は、夏休みにミモザ館を訪れる。
 真郷は彼女達を大して歓迎せず、頭の中には、失踪した母親のことしかない。
 真理子は、母親を忘れさせようと、彼に大胆なアタックをするが、それが惨劇を呼ぶこととなる…」

・「銀鱗抄」(「ひとみコミックコレクション」1986年4月25日号掲載)
「大学生の数馬は白蛇村に向かう。
 大学の卒論の題材に古くからの伝説や話を聞くためで、また、白蛇村は来年、ダム建設で水没する予定になっていた。
 崖崩れでバスが通れず、徒歩で山を越えることになる。
 途中、不思議な声が聞こえ、導かれたその先には、滝の下、美女が水浴をしていた。
 美女の名は「銀」で、彼が来るのをずっと待っていたと話す。
 彼女の案内で彼は無事に白蛇村に辿り着くが、彼が厄介になる宮森老人は「銀」の名を聞いて、顔色を変える。
 昔、この村には銀という美しい娘がいた。
 彼女は、魔力を持つ大蛇に、永遠の美しさを嘆願し、白蛇の化身となる。
 そして、命を保つために、村の若者達を次々と餌食とするが、村人達の建てたお堂によって蛇山に閉じ込められたという。
 彼は銀が言い伝えの存在であることを否定し、毎日、彼女に会いに出かける。
 頭の中には彼女のことしかなく、彼は徐々に衰弱。
 そんな時、婚約者の美春が、彼を追って、白蛇村を訪れる。
 彼の心が離れることを恐れ、銀は彼を自分のもとへと誘い出すのだが…。
 銀の目的とは…?」

・「雷神の森」(「ひとみコミックコレクション」1987年4月25日号掲載)
「麗子の誕生パーティの日を最後に、彼女の恋人の慧(さとし)は失踪する。
 高校の卒業式にも現れず、合格したK大医学部の入学手続きもしていない。
 また、彼について詳しいことは不明で、故郷は長野県の山奥にある雷神村らしいということしかわからず、唯一の手掛かりは、彼の部屋にあった、姉とツーショットで映った写真ぐらいであった。
 それでも、麗子と、彼女の親友の兄妹、朝(はじめ)と夕子の三人は、春休みを利用して、彼を捜しに出かける。
 彼らはバスさえ通らない道を行くこととなるが、途中の村は、まるで人気がない。
 ある村で一人の老婆に出会うも、老婆は雷神村は呪われていると繰り返し叫び、錯乱したまま、死んでしまう。
 ようやく三人は雷神村に辿り着き、慧に再会、彼の屋敷に滞在することとなる。
 慧には結花という姉がおり、彼女は、この村が「雷神様にみまもられ」「時が止まっている」と話す。
 実際、この村は春と秋が共存しているような不思議な場所であった。
 慧は麗子に明日、この村から出ていくよう勧め、彼はこの村からは、村の長になったため、出られないと告げる。
 その夜、麗子と朝は鐘の音に目を覚ます。
 外に出ると、村人達が山中の洞窟にぞろぞろと入っていくのが見える。
 洞窟の中では、白い仮面を付けた人物が何かの儀式を行っており、麗子と朝は、気付いた村人達に襲われる。
 二人が気が付くと、そこには何の痕跡もなく、慧に夢を見たのでは?と言われる。
 だが、翌日、夕子が、血のない死体となって発見される。
 結花は、山犬の仕業だと話すのだが…。
 雷神村の秘密とは…?」

 表題作よりも、「銀鱗抄」と「雷神の森」の二つの方が面白いと思います。
 「銀鱗抄」は「蛇女もの」ですが、エロティックな内容が、耽美な絵柄とよくマッチした逸品です。
 「雷神の森」は、ネタばれとなりますが、「吸血鬼の村」を扱った作品。
 個人的な意見を述べれば、もっと派手さが欲しかったところです。

2020年12月8日 ページ作成・執筆

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