川崎のぼる「死神博士」(1967年9月30日初版・11月10日4版発行)

 神谷博士・最上竜蔵・林一夫・大久保武雄の四人はユニオン島の史跡調査に訪れ、秘宝を発見する。
 最上・林・大久保の三人は共謀して、神谷博士を絶壁から海に突き落とし、秘宝を横取りする。
 それから十三年後、死神と化した神谷博士の復讐が始める…。

・「死神博士」
「嵐の夜。
 最上の邸で、彼と林が話をしていた。
 最上は今は有名な宝石商で、林は大百貨店の社長。
 林が帰った後、最上が自分の部屋で休んでいると、王家の鏡の周囲がほのかに明るくなっている。
 王家の鏡は、最上がユニオン島から持ち帰った宝の一つであった。
 鏡には鎧に身を固めた騎士が映っており、騎士は鏡から出てきて、最上に襲いかかる。
 気が付くと、最上は床に倒れていた。
 先ほどのことは夢かと思ったが、床には騎士の剣が突き刺さっている。
 最上はこのことを林に知らせようと、車を出したとたん、巨大な影に前方を遮られて、事故を起こす。
 彼は丸一日寝込んだものの、翌日の晩には林の家に向かう。
 だが、行く先々で奇怪な体験をすることに…」

・「巫女」
「林に家に向かう途中、最上は奇怪な犬につきまとわれる。
 どこに逃げても、犬は、鈴の音と共に追って来る。
 山中を逃げ惑ううち、彼は人家に着く。
 そこは双霊山というところで、悪霊祓いの得意な巫女がいた。
 巫女は最上の「死神ばらい」を始めるのだが…」

・「影三四郎登場」
「林は最上から話を聞き、仲間のうちの一人、大久保の仕業でないかと疑う。
 大久保は財宝の分け前を使い果たし、最上と林に金を強請るようになったので、最上は自分の友人の経営する精神病院に彼を閉じ込めていた。
 二人はその精神病院に大久保を訪ねる。
 大久保は重病患者を入れる棟の一番奥の独房に監禁されていた。
 二人に向かい、大久保は、いつか殺すと呪詛の言葉を投げつける…。
 一方、東第三中学校。
 チビの暴れん坊、次郎は林春樹(林一夫の息子)が元気のないことに気づく。
 春樹は父親や最上の話を耳に挟んで、心配していたのであった。
 次郎は彼に、知り合いの私立探偵、影三四郎を紹介する。
 影三四郎と次郎は林家を訪れる。
 その時、最上が、大久保が精神病院を脱走したというニュースを知らせに来たところであった…」

・「百貨店内の出来事」
「林は、ユニオン島から持ち帰った秘宝、王家の冠を今夜の二時に返してもらうという予告状を受け取る。
 王家の冠は、林の経営する百貨店の五階、貴金属売り場の柱に取り付けてある金庫の中にあった。
 最上と林は百貨店に行き、金庫を見守ることにする。
 その頃、春樹が影三四郎の家に予告状を持ってやって来る。
 影三四郎が百貨店に行くと、三階の窓からロープが垂れ下がっており、何者かが先に侵入したらしい。
 そのロープを伝って、影三四郎と次郎は百貨店内に入る。
 そして、午前二時になった時…」

・「墓場」
「影三四郎は昔の新聞を調べ、ユニオン島古代文明探究の記事を読む。
 彼は、神谷博士が事故死した後、帰国した三人のうち、二人が金持ちになったことに何か思い当たったようであった。
 一方、最上は、神谷博士を殺した夢にうなされていた。
 目を覚ますと、窓の外から鈴の音が聞こえる。
 外にはあの奇怪な犬がおり、最上は犬を殺そうとナイフを手に外に出る。
 犬を追ううちに、彼は墓場へと迷い込み…」

・「死神博士と三四郎」
「最上の死を知り、林はショックを受ける。
 次は自分の番と怯える彼のもとに影三四郎がやって来る。
 三四郎は何か作戦があるらしいのだが…」

・「死神博士の根城へ」
「三四郎はとりあえずは死神博士を撃退するも、次郎のミスで、取り逃がしてしまう。
 観念した林は三四郎にユニオン島でのことを全て明かす。
 話が終わった頃、屋敷の玄関に木箱が届いていた。
 この木箱は棺桶ぐらいの大きさで、中には林一夫そっくりな人形が入っている。
 すると、窓から突然、黒猫が入ってきて、口にくわえていたナイフを落とすと、人形の胸に突き刺さる。
 途端に、林が苦しみだし、七転八倒。
 人形からナイフを抜くと、林の苦しみは収まるが、三四郎は今夜もう一度、死神博士が現れると予感する。
 三四郎と次郎は林の見張るが、部屋にあったユニオン島の人形が林に催眠術をかけ、外に連れ出す。
 次郎がその後を追うと、山中に奇怪な古城があった…」

・「古城炎上」
「影三四郎は死神博士と対決する。
 だが、落とし穴にはまり、巨大な蛇が眠る底に落下。
 そして、林は、火の輪の中で、振り子状のギロチンに襲われる。
 三四郎達の運命は…?」

 川崎のぼる先生が「始めて手がけた怪奇スリラー」(前袖より)の名作です。
 青年探偵と助手が奇怪な犯罪者と戦うという江戸川乱歩タイプのストーリーですが、陰湿なところはなく、「カラッと乾いた男性的なムード」(前袖より)に溢れているのは、川崎のぼる先生のお人柄によるものでしょう。
 「不気味なトリックについては、あえて種あかしをしていません」(前袖より)とのことですが、ぶっちゃけ、説明なんか二の次、三の次で、もっぱら怪奇ムードをどんどん押し出すことのみに注力しております。
 そちらの方が、小賢しく解説するよりも、マンガ的な楽しさにつながっているように思いました。

・備考
 シミ・汚れ多し。pp232・233、コマの中、食べカスが挟まって、剥げあり。

2022年7月12日 ページ作成・執筆

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