森須久依「すすり泣く悪霊」(1989年8月20日初版発行)

 収録作品

・「すすり泣く悪霊」(「ひとみコミックコレクション」1988年8月30日号掲載)
「聖花高等学校。
 渡辺久実と相原祥子は幼なじみ。
 内向的な久実とは対照的に、祥子は明るく、活発で、久実は祥子に憧れていた。
 また、祥子に新しい友人がどんどんできて、自分との仲が疎遠になっていくことが久実には耐えられない。
 ある日、祥子が所属する女子バスケの部室で「キューピッドさん」をする。
 その場に立ち会った久実は、祥子が友人達とわいわい楽しんでいるのを目にした時、彼女の肩に何者かの気配がのしかかる。
 急な頭痛に襲われ、久実はその場を立ち去るが、その夜、何者かが眠っている彼女に話しかける。
 以来、祥子の仲よくしている人達が災難に見舞われるようになり…」

・「もう、離れない」(「ひとみコミックコレクション」1987年4月25日号掲載)
「橋田貴子に想いを寄せる野宮という青年。
 彼は外見は悪くないものの、内気で、また、奇妙なところがあった。
 彼が言うには、強く望んで、叶えられない場合、彼の分身(手や足といった部分だけの場合あり)が現れるのだと言う。
 貴子は、ボーイフレンドにフラれたショックから、彼と付き合い始める。
 しかし、結局、彼のことが好きになれず、別れを切り出すのだが…」

・「美しい貴女のために…」(「ひとみコミックコレクション」1986年12月25日号掲載)
「17歳の冬休み、佐藤広美は、親友の素子と共に、二泊三日の旅行に出かける。
 二人の宿泊先は、山の上にあるペンション・セピアで、オーナーは美しい女性であった。
 ペンション内には、オーナーが描いた、若い女性の油絵が多く展示されており、広美は魅了される。
 だが、その夜、広美は、窓の外に幾つもの血まみれの霊の顔が中を覗き込んでいるのを目撃する。
 恐怖で震える広美は、素子とオーナーの女性と共に、朝を待つ。
 始発のバスで帰る前に、広美は油絵をもっと見ておこうと、ペンション内をうろついているうちに、アトリエを発見するのだが…」

・「遠い日に会おうね」(「ひとみ」1987年8月号掲載)
「富美子(15歳/中学三年生)の心の恋人は、五、六年前に海外に行ってしまった板垣良一。
 一年近く、彼からは手紙が来ていなかったが、彼女は彼との再会をいまだ心待ちにしていた。
 ある日、何の連絡もなく突然に、彼女の同じクラスに、彼が転入してくる。
 二人は早速、付き合い始めるが、彼に絡んで、奇怪な体験を幾つかする。
 失敗に終わったデートの翌日、良一は学校を無断欠席する。
 下校途中、道路の向かいに彼の姿を見かけた富美子は、彼の元に駆け寄るのだが…」

 拾い物だと思います。
 少女漫画家による怪奇マンガは怪奇色が薄いものが多いのですが、この単行本では、ロマンティックな「遠い日に会おうね」以外の三編は、どれもグロ描写を頑張っていて、好感が持てました。
 特に、表題作の「すすり泣く悪霊」の「ギョロ目の久実」(p86)は実に心臓に悪いです。
 あつたゆりこ先生あたりの怪奇マンガが好きな人にはお勧めできる単行本ではないでしょうか。

2021年3月27日 ページ作成・執筆

秋田書店・リストに戻る

メインページに戻る