細倉ゆたか「怨霊暴走族」(1988年9月20日初版発行)
収録作品
・「怨霊暴走族 国道の赤い雪」
「安田成彦は自由を愛するバイク乗り。
ある日、友人の繁からS高の太田早苗という少女を紹介される。
彼女は成彦に頼みがあったが、それは事故死した兄とバイクで勝負して買ってほしいというものであった。
彼女の兄はこのあたりの暴走族が憧れる走り屋であったが、Y峠の国道で事故死する。
以来、毎土曜日にそこへ現れ、多くのバイカーが亡くなっていた。
初対面でそんなことを言われ、成彦は信じることができなかったが、翌日、彼女に会い、兄の友人達と共に除霊を受ける。
その帰り道、繁と夜のY峠を通るが、先に行った繁が事故死する。
友人の死をきっかけに、成彦は亡霊バイカーとの対決を決めるのだが…」
・「怨霊暴走族 呪いの750伝説」
「ツーリングの途中、成彦は洋風の喫茶店に寄る。
すると、店員のヘヴィメタ兄ちゃんが彼に「幽霊見る性質」ではないかと尋ねてくる。
彼の恋人は霊感があり、彼女によると、成彦は霊をみやすい上に強運らしい。
その話の流れで、店員は成彦に店頭に飾ってあるバイク(カワサキのマッハV)に乗ってみないかと勧めてくる。
今までにこのバイクに乗った三人が亡くなっており、このバイクに乗って無事だったら、ただでやるとまで言われる。
成彦がバイクよりも命が大事と断ると、実はここの店員たちは彼を担いでいたのであった。
腹を立てながら、成彦が店を出ると、何故かバイクが動かない。
早苗とのデートの約束があり、成彦は例のバイクを借りて、東京へと向かう。
ところが、バイクは彼の思っているのとは違う方向に進み、まずで意思を持っているようであった。
トラックとの正面衝突をどうにか避けるも、道脇に転落。
成彦が文句を言いに喫茶店に戻ると、そこには店主の中年男性がいた。
中年男性はヘヴィメタ兄ちゃんの叔父で、あのバイクは死んだ友人から譲り受けたものだと言うのだが…」
・「怨霊暴走族 地下室の亡霊」
「春休みの二週間、成彦は時給千円のアルバイトをする。
それはあるビルの夜間警備員であったが、実はここには女の幽霊が出るらしい。
更に、同僚の野村はその女幽霊が失踪した恋人に似ていると聞き、ここでずっと手がかりを探していた。
成彦は女幽霊が指差した方向に何かヒントがあるのではないかと考えるのだが…」
・「死霊のささやき」
「杉並区立桜井中学校。
転校生の吉田桐子は訛りがコンプレックスでクラスに溶け込めないうちに、すっかり存在感を失っていた。
ある日、次の授業がどこであるかわからず、廊下をさまよっていると、彼女は領一と名乗る少年と会う。
彼も彼女と同じクラスであったが、身体が弱いため、学校にあまり来られず、友だちがいなかった。
これをきっかけに、二人は友達になり、五月にある修学旅行の計画を二人で練る。
だが、領一の机は学校一の不良、早川の席であった。
早川は粗暴ではあったが、桐子をかばってくれ、彼に好意を抱く。
一方、領一とも付き合いは続けるも、彼は領一のことを嫌っているようで…」
・「亡霊の棲む家」
「高校生の千花は斉藤雅裕と一応はカップル。
斉藤雅裕はイケメンであったが、いつも一人で何を考えているのかさっぱりわからない。
ある連休の週末、千花は斉藤から両親が三日留守にしているので、家に泊まりに来ないかと誘われる。
彼の家は様式のお邸で、父親の友人の持ち家だったが、一人息子を亡くして手放したという。
その夜、彼女が寝ていると、ベッドの上に野球帽をかぶった少年が浮かんでいる。
少年はこの邸で病死した達也の幽霊で、彼は斉藤雅裕と親友だったのだが…」
・「呪いの土人形」
「11月のある日、クラスで孤立していた五島田君子が自殺する。
その彼女からのプレゼントが美鈴の机に入っていた。
プレゼントの中身は土人形で、叔父によると、中国の辺境に住む少数民族に伝わる貴重なものだという。
五島田君子の形見なので、美鈴は捨てずに部屋の片隅に飾る。
だが、ある日、五島田君子が美鈴の彼氏である聡に片想いをしていたことが明らかとなる。
そして、美鈴は常に土人形に監視されていることに気付くのだが…」
細倉ゆたか先生の初単行本です。
どの作品も悪くありませんが、個人的には、後半の三作品の方がよりホラーっぽくて好きです。
特に、「呪いの土人形」はなかなかのインパクトで、トラウマ度は高めです。「人形もの」の隠れた佳作でありましょう。
2024年5月1・2日 ページ作成・執筆