高階良子「雪降る夜の訪問者」(1994年10月20日初版発行)
収録作品
・「雪降る夜の訪問者」
「古城勝也は新進建築デザイナー。
都心に珍しく大雪が降った夜、彼の家の前に一人の女性が倒れていた。
女性は非常に美しく、雪色の肌に、花びらのような赤い唇が印象的で、彼は彼女に惹かれる。
記憶を失った彼女のために、彼は彼女に「美雪」という名前を付け、家に置く。
そうして、一年が過ぎたが、彼女は記憶を取り戻す気配はなく、身元は相変わらず不明なまま。
それでも、二人にとっては幸せな毎日であった。
ある日、勝也は、学生時代の友人に偶然に出会う。
彼を家に招き、いろいろな話をしていたところ、登山のことに話が移る。
そう言えば、勝也は登山が好きだったが、一年以上、登っていない。
しかも、彼の知らないうちに、登山仲間の須田は亡くなっていた。
記憶を辿っていくうちに、勝也は一年前、須田と山に登ったことを思い出す。
そして、その場には美雪もいたはずで…」
・「防空壕」
「北尾麻衣(高校二年生)は、唯一の肉親を亡くし、遠縁の松浦夫妻に引き取られる。
指定の住所に向かうと、伍代智機という青年と出会う。
彼女が住む家は、伍代家のもので、松浦一家は、十年前、両親を亡くした智機のために、ここに移り住んでいた。
松浦一家は、康行と和代の夫妻と一人息子の博史、それに、智機の大叔父の草次郎がよく出入りしていたが、松浦一家とは犬猿の仲であった。
麻衣がやって来た初日、松浦康之が、寝室で死体となって発見される。
寝室は、屋敷の一番、古い棟にあり、鍵は中からかかった密室であった。
唯一の手掛かりは、妙な臭いのする、粘土質の土だけであったが、麻衣はその臭いをどこかで嗅いだような気がする。
こんな事件があったにもかかわらず、松浦和代は、麻衣と博史を結婚をさせようとする。
実は、この屋敷の権利は半分は彼女のもので、松浦一家はこの屋敷に何故か執着しているらしい。
だが、今度は、博史が、父親が亡くなった部屋で、殺害される。
この部屋は、智機の父親と、麻衣の母親が無理心中した部屋でもあった。(智機と麻衣には血のつながりはなし。)
この屋敷の秘密とは…?
鍵は、麻衣の幼い頃の記憶にあるようなのだが…」
・「影が踊る夜」
「憧れの関口薫と同じ、F大に行くために、猛勉強をしたものの、風邪のせいで落ちてしまった岡崎奈緒。
一年間、頑張って勉強し、再チャレンジするものの、受験会場に行く途中で、交通事故に遭う。
一週間の入院の後、自宅療養となるが、頭痛がひどくて、医者から一か月の安静を命じられる。
このままでは二浪と悲嘆に暮れていたところ、どこからか笑い声がする。
その主は、彼女の影「シャドウ」であった。
「シャドウ」は彼女の代わりに、大学受験に行ってやると言い、彼女の服を着ると、彼女にそっくり。
どうせ夢と、彼女は「シャドウ」に全てを任せ、昼間は、鍵をかけた部屋に閉じこもって休む。
シャドウのおかげで滑り止めの大学は見事合格したものの、本命はF大。
奈緒はシャドウにF大受験に行かせるが、シャドウはキャンパスで、奈緒の片想いの相手、関口薫と出会い…」
2021年1月30・31日 作成・執筆