ひよどり祥子「死人の声をきくがよい@」(2012年9月5日初版発行)
岸田純は霊視能力を持つ、虚弱な高校生。(鼻血は怪異の予兆。)
彼のそばには幼なじみで非業の死を遂げた早川涼子の霊が常に寄り添っていた。(意思疎通は常に身振り手振り。)
二人(?)は様々な怪事件に巻き込まれるのだが…。
・「第1話 早川涼子失踪事件」(「チャンピオンRED」2011年12月号)
「岸田純の幼なじみ、早川涼子が行方不明になる。
幼なじみと言っても、小さい頃はよく遊んだものの、長じるにつれ、二人の間には距離ができ、そこまで言葉を交わすことはなくなっていた。
ある時、純は保健室で養護教諭の吉本の背後に早川の霊を視る。
彼女は何かを訴えたい様子で彼に付いてきて、放課後、彼は彼女に導かれるまま、町外れの古びた洋館を訪れる。
表札は「吉本」で、鉄門と玄関の間の通路に人間の耳が落ちていた。(「スパイダー・ベイビー」の影響?)
純が訝っていると、早川は自分の右耳に手を当て、どうやらこれは彼女の耳らしい。
その時、彼は何者かにバールで殴られ、目を覚ますと、地下室らしき場所であった。
彼のすぐ横には早川涼子の死体があり、その向こうには最近、行方不明になった二年生の死体がある。
その時、誰かが階段を降りてくるのだが…」
・「第2話 バテレン島の伝説」(「チャンピオンRED」2012年1月号)
「純は友人の小泉に誘われて、郷土史研究会(会長は式野)の日帰り調査に参加する。
場所は間吊島という隠れキリシタンの伝説のある島で、ここでは寛永14年(1637年)、島に潜伏していた宣教師と八名の信徒が激しい拷問の末、殉教したと伝えられていた。
そして、島では「バテレン祭り」のための準備が進められつつあり、殉教者を象った「バテレンだるま」が多く飾られる。
研究会の面々は蟹江という初老の男性に島を案内されるが、途中で、純は海岸で駐在の死体を発見する。
事情聴取のために彼らは島にとどまることになるが、ジュースに睡眠薬を仕込まれ、気が付くと、過去、キリシタンたちの集会所だった海辺の洞窟に監禁される。
ここで彼らはこの島の恐ろしい秘密を知ることとなるのだが…。
「バテレンだるま」の正体とは…?」
・「第3話 死を呼ぶ大観覧車」(「チャンピオンRED」2012年2月号)
「ミユは都内の美大に通う、純の従姉。
純は彼女に頼まれ、「ようせいランド」を案内する。
「ようせいランド」は地元民に愛された遊園地であったが、観覧車の事故で多くの死傷者を出し、運転再開直後には通り魔事件が起き、廃園。今はすっかり廃墟となっていた。
ミユはこの廃墟の「滅びの美」に感激し、純の家に滞在して、毎日、通う。
しかし、徐々に彼女は憔悴し、しかも、彼女の撮った写真はどれも事故当時の写真ばかりであった。
純は彼女に家に帰るよう勧め、彼女をそれを受け入れたように見えたが、彼女の実家から彼女が一週間、家に帰ってないと連絡が来る。
純は彼女が「ようせいランド」にいると確信し、早川の制止にもかかわらず、向かうのだが…」
・「第4話 天輝寺河童奇譚」(「チャンピオンRED」2012年4月号)
「岸田は郷土史研究会、改め、オカルト研究会(会長は式野、部員は小泉)の調査に同行させられる。
調査の目的は、古刹、天輝寺にある河童のミイラで、ミイラは室町時代のものと伝えられていた。
三人は住職から河童のミイラの入った鉄箱を見せられるが、中身を見せることを住職は拒否する。
と言うのも、先代の住職が雑誌の取材で箱を開けた後、変死したからであった。
住職が席を外した間、式野は箱を勝手に開ける。
中には奇怪なミイラが収められており、純はミイラの腹が裂け、河童の胎児(?)の群れに襲われる幻覚を見る。
その夜、彼はミイラを胸に抱いて見知らぬ土地を歩いている夢を見る。
早川の平手打ちで目を覚ますと、そこは天輝寺のある町の外れの造成工事をしている土地であった。
そこでは工事作業員たちや式野、小泉が何やら掘り出そうとしている。
このあたりは沼で、河童の棲み処だったというのだが、ここに埋まっているものとは…?」
・「第5話 いるのにいない同級生」(「チャンピオンRED」2012年7月号)
「母親(夏希/占い師)の留守のある日、純の家に同学年の女子生徒が訪ねてくる。
見た顔ではあるが、名前を思い出せず、戸惑っていると、彼女は「トイレ貸して」と勝手に上がりこみ、トイレのドアの前で「あなたの家…なかなか住み心地良さそう」と呟く。
その後、彼女は三十分、トイレにこもり、心配した純が様子を見に行くと、彼女の姿はなかった。
これをきっかけに、純は家の中に人の気配を感じるようになる。
純が学校で彼女について調べると、それは佐藤和子という名で、非常に影の薄い女子生徒であった。
更に、純が学校に行っている間、佐藤和子の家族が純の家に来て、そのまま、姿を消す。
以来、純の家ではまさます人のいる気配が強まり…」
・「第6話 釘澤邸の惨劇」(「チャンピオンRED」2012年8月号)
「伏蛇島にそびえる釘澤邸。
ここは日本有数の怪奇スポットで、館の主で医学博士の釘澤泰護は使用人と共にバラバラに惨殺され、以来、ここでは不審死が続いていた。
ある時、テレビ番組のスタッフがここで心霊番組を撮影することとなる。
レポーターは超常現象番組で活躍する堺圭一、ゲストは霊能者の草間秀慧、ダーク系アイドルの魔子、そして、占星術師のラリヴェ夏希(純の母親のビジネスネーム)の三人で、純は母親の付き添いとして島にやって来る。
その夜、出演者以外のスタッフが姿を消す。
また、屋敷を調べると、窓には鉄格子がはめられ、扉には外から鍵がかけられており、迎えが来るまでの三日間、ここからは出られない。
皆はこれはドッキリだと判断し、まずは一階、二階を二手(一階は堺・夏希/二階は純・魔子・草間)に分かれて調べることとする。
二階には釘澤泰護の書斎があり、そこにはオカルト関連の本で溢れていた。
また、釘澤の妻の写真が机にあり、純はその写真が母親に似ていると思ったその時、一階から母親の悲鳴が聞こえる。
駆けつけると、堺の頭を両断された死体があり、母親の姿はない。
純は早川の指し示す方の壁に隠し扉を見つけ、魔子・草間と共に階段を上がっていくと…。
釘澤邸の恐るべき秘密とは…?」
・「番外編 早川と岸田」(描きおろし)
「早川涼子は工藤ユカから最近、岸田がユカのことをよく見つめていると聞かされる。
その日の下校途中、早川を岸田が待っていた。
彼はユカに伝えたいことがあると言うのだが…」
日本の怪奇マンガ史に残る傑作です。
とにもかくにも、作者の深すぎるホラー愛が作品の隅々からじわじわと溢れ出てくるのが凄い!!そして、身悶えする程、嬉しい!!
スプラッター・ムービー、都市伝説、クトゥルー神話、諸〇大二郎、ルチオ・フルチ、etc…その全てを自家薬籠中の物、いや、作者の血肉にまでしており、単なるオマージュを超え、作品の独特過ぎる世界観を構成する一要素にまで高めているところは驚異的です。(また、ホラー・マニアには元ネタ探しというネクラな喜びも…。)
そして、美麗かつ可憐なキャラの素晴らしさ。
これにより「ホラー湿度94%」(by 伊藤潤二先生)な作品に「クールさ」を与え、陰湿極まりない中にもどこか清涼感があるという不思議な味わいになっております。
そして、あと一つ、作品の魅力を語るうえで忘れてはいけないのは、作者の絶妙過ぎるユーモア・センス。
これがいい塩梅で気抜きしてくれるお陰で、どれほど陰惨な内容でもエンターテイメントとして楽しめることができるのではないか?と私は考えております。
ともあれ、エンターテイメント・ホラーとしては超一級品の作品です。
ホラー界の重鎮の方々が口を揃えて絶賛しておりますので、ホラー好きで未読の方はいないように思いますが(注1)、是非とも一般の方にも一度手を伸ばしていただきたいと思います。
怪奇マンガがこれほど、魅力的で面白いものだったのか!!と開眼する良い機会になるのではないでしょうか?(ただし、グロ描写は半端ないので、苦手な方はご注意ください。)
・注1
すみません。
私、2025年8月初頭、体調を崩し、その際にようやく「死人の声をきくがよい」を全巻読みました。
こういうサイトを運営してはおりますが、未読の名作怪奇マンガ、実はまだまだたくさんあります。
猛省…。
でも、まあ、言い訳させてもらうと、怪奇マンガについて知るには楳図かずお先生・水木しげる先生・伊藤潤二先生をまず読まないといけないけれど、この御三方の主要な作品を全部読むだけでも、かなりしんどいと思う…。
2025年8月8日 ページ作成・執筆