大橋薫「祈殺」(2004年12月30日第1刷発行)

 収録作品

・「祈殺」(「コミック・クリムゾン」No.1)
「階段から落ち、頭を打って死んだ「友だち」の死体。
 その死体を前にして、みちる、雪子、恵子、ルミは立ちすくむ。
 彼女達は死体を茂みの陰に隠し、口裏を合わせてアリバイを作る。
 だが、実際は、誰が裏切るのか不安と不信で押し潰されそう。
 下校途中、四人は歩道橋の上で言い争いになるが、みちるはふと疑問に思う。
 死んだのは誰…?」

・「自白霊」(「コミック・クリムゾン」No.3)
「真夜中の廃墟の病院。
 犬塚冬太(大学生)は、その病院の中でリスト・カットしようとする少女に声をかける。
 少女には、人を見つめると、相手がぺらぺらと真実を話し出す「自白させる才能」があり、そのせいで、いつも独りであった。
 冬太は彼女の自殺を止めようとは思うものの、彼女の決心は固い。
 一度は帰ろうとするが、ここの病院には地縛霊がいるとの噂を思い出し、引き返す。
 すると、少女は地縛霊から恥ずかしい秘密を聞き出していた。
 二人は地縛霊から襲われる破目になるのだが…」

・「Pain… ―痛み―」(「コミック・クリムゾン」No.14)
「鮫島は暴力以外での人との接し方がわからない男子高校生。
 彼はスパルタな父親のしごきによって右足に傷を負い、そのせいか、いつも相手の右足を狙ってしまう。
 ある日、彼は学校で見知らぬ子供から「弱い者いじめ やめろよ」と注意される。
 その時、彼は、過去にたった一人だけ、彼を止めようとした少年がいたことを思い出す。
 子供を追い、彼は取り壊し予定の旧校舎へと入り込む。
 そこで、少年と対峙するのだが…」

・「雑踏の沈黙」(「サスペリア」)
「性格のキツい梶井トモコと、大人しく要領の悪い柳理香は友達同士。
 ある朝、満員の電車内で、理香は雑踏に呑まれて、そのまま行方不明になる。
 先生に言われて、トモコは理香の家に私物を届けに行くと、そこは立派な邸宅であった。
 家には誰もおらず、中でトモコは理香の日記を見つけ、持ち帰る。
 理香について調べていくうちに、トモコは理香について何も知らなかったことに気づく。
 理香の身に起こったこととは…?
 そして、彼女はどこに…?」

・「めぐみちゃんの怪談」(「サスペリア」)
「小学生のめぐみは継母の洋子から暴力を受けていた。
 彼女の唯一の友達は野良猫のクロ―のみ。
 小学校で、めぐみの属するグループは夏休みの自由研究を「オリジナル怪談」に決める。
 めぐみは「こわい話には痛いこともたくさんあるからきらい」であったが、他の生徒達はやる気まんまん。
 彼らは、めぐみ抜きで、めぐみを主人公にした怪談を作り始める。
 一方のめぐみも、お話を作って遊んでいた…」

・「夢路の果て」
「家庭にも職場にも居場所がなく、ビルから飛び降り自殺をした女性。
 気が付くと、薄ぼんやりとした空間にいた。
 彼女以外に女性が二人いて、一人は小説家志望のパラサイトシングル、もう一人は男なしでは生きられないダメ女。
 小説家志望の女から、ここは自殺者がたまに流れ着く場所で、天国でも地獄でもない「ただの絶望」だと教えられる。
 二人はそこで小説を書いたり、化粧をするが、それは決して報われることはない。
 飛び降り自殺した女性は二人に友達になってと頼むのだが…」

・「黒い犬」(「さくらミステリー」2004年4月号)
「絵里は、さつきのマンションを訪れる。
 さつきは仕事で成功し、女一人で独立していることが自慢であったが、最近、ストーカーに狙われていると憔悴していた。
 全ては、彼女に嫉妬する「負け犬」の仕業らしい。
 絵里は、怯えるさつきに代わって、無言電話に出る。
 「負け犬」の復讐とは…?」

・「あなたのうしろ」(「さくらミステリー」2004年9月号)
「学校の帰り道を小さな男の子が歩いていると、後ろを不気味な女性がついてきて、徐々に距離を縮めてくると言う噂話。
 洋介はその噂話に出てくる女性が「生き別れの本当のお母さん」だったらいいな、と憧れる。
 彼の家では夫婦喧嘩が絶えず、母親は彼に厳しく当たっていた。
 そして、彼を遠くから見守る、美しい女性のことを彼は知っていた。
 ある日、彼は女性に話しかけるのだが…」

 「めぐみちゃんの怪談」「あなたのうしろ」が個人的にいいとは思いますが、どちらもラストがイマイチなのが惜しい…。
 この単行本の収録作品の中では、ホラーよりも、「自白霊」といったギャグよりの作品の方が溌剌としている印象を受けました。

2022年6月26・27日 ページ作成・執筆

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