藤子不二雄「黒ベエB」(1971年1月30日初版・1974年3月15日2版発行)

「黒ベエ」
・「第1話 ハゲベエと黒ベエの場合は」(「少年キング」1969年47〜51号掲載)
「ハゲベエと喧嘩をした黒ベエは、ハゲベエを動物園のコンドルと取り替える。
 しかし、ハゲタカはずっと安楽な動物園育ちのため、横着極まりない。
 黒ベエがハゲタカを手放したいと思っていた時、鳥餅トリオ(14歳)という少年がそれを購入する。
 祖父、タカエモン(79歳)へのプレゼントのため、というのは表向き、実際は、祖父の死を占うためであった。
 トリオに限らず、屋敷に住む家族や親戚連中は、タカエモンの財産を狙って虎視眈々。
 そんな中、タカエモンは、自分とそっくりなハゲタカに感激し、ハゲエモンと名付け、家族の一員に加える。
 だが、彼は、遺産を狙う家族や親戚連中に疲れ果て、もはや限界。
 彼はハゲタカと入れ替わることを望むのだが…」
・「第2話 石投げ」
「ピータンは、なよなよした中性的な少年で、女の子達に大人気。
 だが、その父親は「ゴリラの村長さん」のように厳つい頑固親父。
 父親は息子が男らしくならないものか悩んでいると、黒ベエが自分に任せてと言ってくるのだが…」
・「第3話 まわるよまわるパチンコ玉が」
「パチンコ店で、黒ベエは、パチプロの少年と出会う。
 彼はパチンコで、子だくさんの父親を養っていた。
 一度はパチンコ店から追い出されるものの、パチンコ店に来た客の懐に隠れて、二人はパチンコ対決をすることとなる…」

「夢魔子」
・「第一話 城」
「鈴木道雄は、何も考えず、ボーッとしているのが何よりも好きな少年であった。
 しかし、現代はモーレツな競争社会で、学校にも家庭にも彼の居場所はない。
 彼は「どこか遠くのだれもこないところでぼくだけの城にひとりっきりですむこと」を夢見る。
 夢魔子は、耳を手でふさいで、ただそれだけを念じれば、叶うと言うのだが…」
・「第二話 脱皮」
「江島春彦は絵を描くことが大好きな高校生の少年。
 彼には理想の「モナ・リザ」がいたが、ある日、電車で、彼の理想とぴったりな少女を見かける。
 彼女の名前は夢魔子で、高校三年生。
 彼は彼女の肖像画を描くが、両親は見知らぬ女を家に連れ込んだことにカンカン。
 父親は彼に絵を描くことを禁じ、家を訪ねた夢魔子を追い返すのだが…」
・「第三話 ひき逃げ」
「進一は、車に対して強い憧れを持っていた。
 ある夜、友人宅を訪ねた帰り道で、彼はキーが差しっぱなしの車を見つける。
 自動車運転教本に書かれていた通りに、車を動かしてみるが、前に現れた娘をよけきれず、轢いてしまう。
 彼はその場から逃走するが、翌日、ひき逃げがニュースになっていた。
 しかも、彼の学生帽が現場に残されており…」
・「第4話 変身」
「男熊はラグビー部のエース。
 男の中の男と思われていたが、実際の彼は、母親を亡くして以来、家事が好きになり、女性らしい素質に目覚めていた。
 自分の中の相反する要素に苦しむ彼に、夢魔子はある解決策を提示する…」
・「第5話 夏の終り」
「夏の終りの海岸。
 夢魔子は、襟戸光一というナイス・ガイと出会う。
 彼は高校三年生で、受験勉強のため、海岸近くの別荘に滞在していた。
 彼は「つまらない規格品のおとな」を軽蔑し、「今やりたいことをせいいっぱいやるんだ」と彼女に話す。
 夢魔子は彼に魅了されるが、三人のチンピラが彼女に言い寄って来て…」

「不気味コレクション」
・「第1話 毛のはえた楽器」
「アフリカ、ウガンダ。
 日本のテレビクルーの一行が、ウツミの密林の奥深くにある、ピグミーの部落を取材することになる。
 案内人兼運転手の黒人は、ピグミーは「人間とけもののあいのこ」のようなもので、同じ人間ではないと警告する。
 また、非常に危険らしく、隠し撮りは決してしないよう言われる。
 しかし、冒険カメラマンの毛島剛はピグミー達を小馬鹿にして、無断で撮影を強行。
 撮影の後、クルー達は彼の姿がないことに気付くのだが…」
・「第2話 爪のある杖」
「信吉の家の佐善は、立派な軍鶏(しゃも)であった。
 だが、有力者を父に持つ五海達夫の軍鶏を闘鶏で殺してしまったことから、佐善は断嘴(だんし/クチバシの一部をカッターで切り取ること)されてしまう。
 以来、佐善は餌ととろうとせず、餓死。
 五海家ではその死体を持ち帰り、肉は鍋に、足首の部分は杖の取っ手にするのだが…」
・「第3話 串のはいった鞭」
「ミチオは大人しい少年。
 ある日、中近東を旅行した叔父が彼に「ラクダ用の鞭」をお土産に持って来る。
 その杖は中に、バーベキュー用の串が仕込んであった。
 この鞭によって、ミチオは心の奥に潜む凶暴性に目覚めていく…」
・「第4話 鎖のついた武器」
「核保有はおとなしそうな小男であったが、武器のコレクションで知られる。
 彼が武器を集め始めたのは、チビで腕力がなくても、武器さえあれば、大男にさえ勝てると気づいてからであった。
 彼のコレクションを取材に来た記者の一人に、核保有はある頼み事をする。
 それは、大男の記者、大峯と、武器を持った彼が試合をするというものであった。
 核保有は、ローマ時代の剣闘士が使っていたというトゲ付鉄球が鎖の先についた武器を手に、大峯に挑むのだが…」
・「第5話 目のない舞姫」
「冬彦は古道具屋で目にしたインドの舞姫人形の虜となる。
 五万円という高値にもかかわらず、彼は貯金をはたいて、その人形を購入。
 その後、彼の家に、満理という娘が訪れる。
 彼女はインド人で、舞姫人形の顔が亡き母にそっくりで、毎日、古道具屋に人形を見に来ていた。
 彼女はちょくちょく彼の家に来るようになり、彼は彼女の訪問を楽しみにするのだが…」

 藤子不二雄A先生のダークなファンタジー作品を集めております。
 この「黒」さは先鋭的だったと思いますが、ストーリーに捻りがないものがたまにあって、物足りなく感じることも…。
 やっぱり、オチが読めちゃうんですよね〜。

 この単行本で一番の売りは、封印漫画として有名な「毛のはえた楽器」が収録されていること。
 この作品について詳しいことをお知りになりたい方は、坂茂樹「封印漫画大全」(三才ブックス/2009年10月15日発行)の「ぶきみな5週間 第一週 毛のはえた楽器」(pp64・65)を参考にされてください。

2022年1月2日 ページ作成・執筆

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