高橋葉介「街童子」(2004年9月30日第1刷発行)

 「街童子(まちわらし)」は街に憑く「童子(わらし)」。
 彼の特殊能力は死んだものを生き返らせること。
 今日、街角で彼と出会うのは…?

・「第1話 廃墟の町で…」(「ネムキ」2002年9月号)
「最近、街童子は廃墟の町がお気に入り。
 ある日、ここにカップルが車でやって来る。
 女の方は女子高生であったが、彼女は男を未成年者淫行で脅しており、男に背後から扼殺される。
 男は女の死体をゴミの中に捨てて立ち去った後、街童子は彼女を生き返らせる。
 街童子は彼女を操って遊ぶが、彼女には心がなく、数日後に飽きてしまう。
 街童子は彼女を男のもとに帰らせるも、何日か経った頃に男が再び廃墟にやって来て…」

・「第2話 カラスの園」(「ネムキ」2002年11月号)
「最近、街童子は寂れた公園がお気に入り。
 そこで彼はユキという少女と出会う。
 不登校児の彼女は寝たきりのホームレスの面倒を看ていて、彼の代わりにカラスに餌をあげていた。
 だが、彼女の父親はホームレスやカラスを「無駄な存在」と一蹴し、毛嫌いしていた。
 父親は勤め先の製薬会社から劇薬を持ち帰り、それをカラスの餌に混ぜて、ユキに渡すのだが…」

・「第3話 座敷童子と街童子」(「ネムキ」2003年1月号)
「街童子は知り合いの座敷童子に呼び出される。
 用件は座敷童子が外出している間、臨時に屋敷を護るというものであった。
 この屋敷は無人であったが、もしも屋敷の人に幸せをもたらすことができれば、この屋敷を街童子に譲ると言われ、街童子は大張り切り。
 その夜、屋敷に若いカップルが忍び込んでくる。
 青年はこの屋敷の持ち主の一族の一人で、娘の方は彼の恋人であった。
 娘は元・風俗嬢で、この二人の仲は一族によって引き裂かれようとしているらしい。
 街童子は二人に幸せをもたらすことができるのであろうか…?」

・「第4話 地底の街童子」(「ネムキ」2003年3月号)
「ルーシーは幼くして両親を亡くし、その莫大な財産を相続。
 彼女は飲んだくれで無職の叔父と冷酷な叔母に面倒(?)を看てもらっていた。
 ある日、叔母は五年前にルーシーにあげた「ジェニファー」について尋ねる。
 しかし、「ジェニファー」はルーシーの母親がトイレに流していた。
 ルーシーは地下水路にジェニファーを捜しに行き、そこで街童子と出会う。
 彼女はジェニファーと再会できるのであろうか…?」

・「第5話 眠りの森」(「ネムキ」2003年5月号)
「八歳の少年は病院の一室に監禁されていた。
 食事は離乳食のようで不味く、しかも、薬が入っているようで、頭はボーッとして、足元もおぼつかない。
 四角い窓からは時々、院長が醜い顔を覗かせ、彼を監視している。
 少年は大事なことがあると考えるのだが、どうしても思い出せず、そういう時は図書室を訪れる。
 棚から適当に絵本を一冊取り出し開くと、街童子と会えるからであった。
 少年は街童子に「少年が街童子に話した『大事な秘密』」を教えてくれるよう頼む。
 街童子は彼がここに監禁されているのは「院長の秘密」を知っているためと言うのだが…」

・「第6話 ノーマンの秘密」(「ネムキ」2003年7月号)
「雨に降られ、街童子は山中の館を訪れる。
 出迎えてくれたのはノーマンという怪しい男で、彼にお茶を勧められるが、お茶には眠り薬が入っていた。
 街童子が地下室に運び込まれると、そこには人体と動物を合体させた剥製のコレクションがいっぱい。
 街童子も動物と合体させられそうになるのだが…」

・「第7話 墓守マイキー」(「ネムキ」2003年9月号)
「マイキーは墓守の若者。
 彼は毎夜、墓の見回りを欠かさないが、それは街童子が生き返らせた死者を再び埋めなおすためであった。
 街童子が死体を生き返らせるのは、一人ぼっちのマイキーのために「死人の友達」を造るためで、マイキーが怒るのを見て楽しむ。
 ある夜、二人は友達と街童子に言われ、マイキーはショットガンで街童子を撃つ。
 弾は街童子に当たり、以来、街童子は墓場から姿を消す。
 墓場は静かになり、マイキーはこれでさっぱりしたと考えるのだが…」

・「第8話 走馬燈のように」(「ネムキ」2003年11月号)
「ノーヘルでバイク事故を起こした青年。
 瀕死の彼の前に、「街童子」と名乗る少年が現れる
 彼は「夢童子」の代理で、死ぬ直前に過去を追体験する際の夢先案内人であった。
 しかし、思い出す過去は全て、青年にとって嫌なことばかり。
 こんな思い出しかなく死ぬのかと思うと、青年は死にきれず、実際、死なずに済み…」

・「第9話 ママ、復活」(「ネムキ」2004年1月号)
「少年のママは何者かに絞殺された。
 父親は仕事で街に出ており、少年も留守で、犯人はわからずじまい。
 村の小さな教会で葬式をしている時、刑事が二人、父親を訪ねてくる。
 用件はママのことでなく、街で「R」という若い女性が絞殺された件であった。
 「R」は父親の愛人で、父親にアリバイはなく、現場には彼のライターが落ちていたため、父親は捕まり、もうすぐ裁判が始まる。
 少年は家に一人だが、彼が地下室に降りると…」

・「第10話 人でなしの恋」(「ネムキ」2004年3月号)
「那由子はある屋敷の女中。
 主人の奥様は半年前、汽車に轢かれて、バラバラになるも、中国人が教えてくれた街童子によって蘇生する。
 と言っても、奥様の身体はつぎはぎだらけで、那由子が彼女の身体をアルコールで拭き、防腐剤を注射しないと腐ってしまう。
 ある時、主人は商用で上海に出かけることとなる。
 その間、那由子は奥様の管理を任されるのだが…」

・「第11話 霧の中の子供」(「ネムキ」2004年5月号)
「予知夢を得意とする心霊探偵、千里塔子。
 彼女が眠ると、霧の中から死者が現われ、犯人や真相を教えてくれる。
 彼女は自分が社会の役に立っていることを知りつつも、イヤな事、つらい事も視なければならず、この道に進んだことを疑問に思う。
 すると、霧の中から一人の少年が現れる。
 少年は街童子で、彼女に予知夢の能力が欲しいかどうか繰り返し尋ねる。
 その時、塔子はあることを思い出す…」

・「第12話 私的街童子」(「ネムキ」2004年7月号)
「中学生(高校生?)のジュン子は学校の帰り道、道端の段ボールの中に街童子を見つける。
 この街童子は彼女以外には見えず、彼女専属の街童子であった。
 と言っても、段ボールに捨てられているぐらいだから、大した能力はなく、厄払いにさへならない。
 それでも、ジュン子は街童子と一緒に話をしながら帰ると、それが無性に楽しく、また、街童子の笑顔を見ると、彼女も笑顔になる。
 以来、彼女はずっと街童子と一緒にいた。
 大人になったジュン子はある男性に初めて街童子のことを打ち明けるのだが…」

 「街童子」を主人公にした連作集で、ファンタジー、怪奇、奇想、(ブラック・)ユーモアがいい塩梅にブレンドされた高橋葉介ワールドを堪能することができます。
 ストーリーはバラエティに富み、非常に親しみやすい内容ですので、多くの漫画好きな方にお勧めできる内容だと思います。

2024年1月26・30・31日 ページ作成・執筆

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