山岸凉子「メデュウサ」(1982年6月25日初版・8月10日3版発行)

 収録作品

・「鬼来迎」(1981年「デュオ」11月号掲載)
「野村敏子は、田舎の高校卒の、神経過敏な娘。
 彼女は都会でのOL生活に耐えられず、また、母親の再婚相手とも顔を合わせたくないため、母親の知人が紹介してくれた家に住み込みの家政婦として働くこととなる。
 その家があるのは、北のはずれの寂れた漁村で、深草という未亡人が、時枝という中年の家政婦と暮らしていた。
 深草は三年前に夫を亡くしていたが、思ったよりも若くて美しく、華道や茶道を教えて、生計を立てていた。
 最初の夜、敏子の寝床に何者かが侵入してくる。
 それは、右手首のない、痩せこけた少年であった。
 少年の名は修一。彼は深草の息子で、離れの小屋に住んでいた。
 気味悪く思いつつも、他に行く当てもなく、彼女はこの家に慣れるよう努める。
 だが、深草家で生活していくにつれ、奇妙な事実を次々と知ることとなる。
 修一が怯える「鬼」の正体とは…?」

・「籠の中の鳥」(1981年「プチフラワー」夏の号掲載)
「少年は「トリ」と呼ばれていた。
 彼の一族は「鳥人」の生き残りで、皆、「トリ」と呼ばれていたが、彼だけは「飛ぶ」ことができなかった。
 彼の家はヨミノ山の奥にあり、盲目の祖母と一緒に暮らしていた。
 彼の両親について祖母は全く教えてくれず、一度、麓の村から若い男性が訪ねてくるが、祖母は彼を追い返す。
 時々、村から迎えの人が来ると、陽が暮れてから、二人は村へと降りる。
 彼らが訪ねるのは葬式のあった家で、用があるのは「飛べる」祖母だけであった。
 用のある間、少年はひたすら待ち続け、明方になると、二人は家に戻る。
 ある冬、祖母は病に倒れる。
 これが最後の「飛ぶ」チャンスだと祖母は今わの際に言うが、彼は「飛べない」まま、祖母の死体と共にいたところを保護される。
 少年を引き取ったのは、以前、彼の家に来た男性であった。
 彼は人見康雄という民俗学者で、少年の名は「融」だと教える。
 人見のもとで、融は学校に通い、知識をどんどん吸収していく。
 だが、彼の心の底には「飛べない『トリ』」であることのコンプレックスがずっと蟠っていた。
 更に、人見には、亡くなった奥さんのいとこの柳八重子という女性がいて、融は捨てられる恐怖に怯え続ける。
 「飛べない『トリ』」の運命は…?」

 ・「恐怖の甘い物一家」(1980年「ギャルズライフ」10月号掲載)
 怒涛の甘い物好き一家の中で、ただ一人、甘党でなかった筆者の悲喜劇を描いた、エッセイ漫画。
 姪っ子のYちゃんのその後がとても気になります。

・「ダフネ―」(1981年「プチフラワー」冬の号掲載)
「ソニア・ボジャール(20歳)は、天才少女と言われたピアニスト。
 だが、母親からのプレッシャーにより、ピアノが弾けなくなり、母親の古い友人、マダム・ぺクールの館で休養することとなる。
 その館は、マダム・ぺクールの夫の死後、ホテルへと改築され、外側は大量のツタに覆われていた。
 住人は、オールド・ミスの図書館司書、作家の中年男性、老夫婦、そして、マダム・ぺクールの息子、イブ。
 その中でも、一際目立つのが、サラ・マリエールで、美しくはあったが、派手で奔放な女性であった。
 一見和やかそうな雰囲気とは裏腹に、中の人間関係はいろいろとギスギスして、ソニアの心は休まらない。
 ソニアはイブにほのかな好意を寄せるものの、彼はひどく冷淡で、サラとの間に何らかの確執があるらしい。
 そんなある夜、就寝中のソニアは何者かに襲われるのだが…。
 この館に捕らわれている「ダフネ―」とは…?」

・「メデュウサ」(1980年「SFマンガ大全集」1月号掲載)
「この世で最後のメデュウサ。
 彼女の姿を見た者は皆、石へと変わる。
 しかし、その度に、身体のどこかにヒビが入るため、彼女の身体はヒビだらけであった。
 彼女の館では、二コラという奔放な娘と同棲しており、二コラは何故か、メデュウサを見ても、石にならない。
 更に、メデュウサが二コラと愛し合う時、メデュウサは普通の人間へと変わることができる。
 人間になれば、身体のヒビは消えてなくなるが、人を石に変えることができないことは不安でもある。
 ある朝、二コラが館の金をくすねて、出て行ってしまう。
 メデュウサは窓辺に立ち続け…」

 「籠の中の鳥」は傑作です!!
 再読に耐えうる内容かつ爽やかな後味なので、山岸凉子先生の初心者にもお勧めです。
 ちなみに、ハロウィン少女コミック館にて再刊されておりますが、「籠の中の鳥」「鬼来迎」の代わりに、「ハーピー」「ストロベリー・ナイト・ナイト」(どちらもトラウマ級の大傑作)と差し替えられております。

2023年1月14日・8月1日 ページ作成・執筆

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