まつざきあけみ「真夜中遊戯」(1992年10月20日初版発行)

 収録作品

・「第1話 親友」(「月刊ハロウィン」1991年9月号)
「殿村美葉、桑田久枝、(苗字不明)由真は親友同士。
 美葉は才色兼備でお金持ちな一方、久枝は成績は学年で最下位かつブスで明るさだけが唯一の取り柄であった。
 そんな対照的な二人に較べ、由真は平々凡々な少女。
 皆、美葉と久枝の仲が良いことを疑問に思っていたが、由真も最近、気になる事がある。
 それは美葉が久枝を体のいい使い走りに使っているということ。
 久枝はどんな無理難題を美葉に言われても、決して断ることはなく、そのせいで、とばっちりは全部自分に来ていた。
 それでも、美葉は嫌なら断ればいいと涼しい顔。
 そして、久枝が断らないことをいいことに、家政婦代わりに使っていることも判明する。
 ある日、由真は久枝が放火をしていることに気付く。
 彼女は久枝の後をこっそり尾行して、放火を防いでいたのだが…」

・「第2話 嫉妬蟲」(「月刊ハロウィン」1991年10月号)
「(多分)平安時代。
 緋扇とあこやは非常に美しい双子の姉妹。
 性格は対照的で、緋扇は快活で、あこやは大人しい娘であった。
 二人には高宗という想い人がいたが、彼が選んだのは緋扇で、あこやは素直に身を引く。
 だが、姉に対する嫉妬の炎を如何ともしがたい。
 そんな時、彼女は「嫉妬蟲」の噂を耳にする。
 これは愛宕山の鬼婆に頼めば手に入り、妬む相手の顔に卵を産み付けると醜く腫れあがると言う。
 ある夜、あこやは「嫉妬蟲」を手に入れ、姉の寝所にそれを差し向ける夢を見る。
 単なる夢のはずだったが、緋扇の顔は徐々に醜い腫れ物に覆われるようになり…」

・「第3話 バロック・コンチェルト」(「月刊ハロウィン」1991年11月号)
「鴛海理沙(おしのみ・りさ)は音楽家の両親を持ち、幼い頃からピアノを習っていた。
 将来はピアニストになる夢を持っていたが、中学校の頃にライバルが出現する。
 それは菅沼ありさという少女で、コンクールではいつも決まって彼女が一位。
 ある時、理沙は暴走族の男友達にありさのことを愚痴ると、彼はありさを襲い、その右手に大けがを負わせる。
 しかも、彼はそのことで理沙を脅迫し続けるつもりで、理沙は彼を殴殺する。
 死体は川へと転落するが、そこへ一人の少女が通りがかる。
 理沙は気づかれないよう振舞ったつもりだが、顔を見られてないかどうか自信が持てない。
 理沙は疑心暗鬼に苦しみながらも、名門の星華音楽院に進学し、二年が経つ。
 ある時、彼女は学生ピアノ・コンクールで最高峰のメニューヒン賞の出場権を手に入れる。
 予選を通過するも、テレビ放映されたために理沙は気が気でなかった。
 予選から一週間後、あるコンクールで、理沙はあの目撃者の娘が観客席にいることに気付く。
 コンクールの後、娘は理沙の控室を訪ねてくるのだが…」

・「第4話 魔少女」(「月刊ハロウィン」1991年12月号)
「美葉は小説家の園礼子の娘。
 彼女は極度な男性恐怖症であったが、それは三年前、父親が愛人と同衾しているところを目の当たりにしたせいであった。
 礼子は夫と離婚し、以来、母娘は仲睦まじく暮らす。
 しかし、母親の誕生パーティの夜、母親が庭の池で溺死する。
 そばには美葉の姿があった。
 美葉は記憶が一部失われており、溺れる母親に手を伸ばしたものの、どうしてもその手を掴めなかったという。
 母親の死因は溺死であったが、その首には絞められたような痕があり、どうも他に犯人がいるらしい。
 調べていくうちに、園礼子の爛れた一面が明らかになっていく。  園礼子を死に追いやった真犯人とは…?」

・「第5話 アダムの骨」(「月刊ハロウィン」1992年1月号)
「鈴は平々凡々な若い主婦。
 夫の俊は頭の固い封建主義者で、T大をトップクラスで卒業後、大企業のエリートコースを歩んでいた。
 その彼の性格を形作ったのは、幼い頃に両親が亡くなってから、彼の面倒を看てきた姉で、彼女は弟に「男は常に強くなければならない」という考えを刷り込んでいた。
 俊一人であれば、どうにかなるものの、この姉が同居しているせいで、鈴は息が詰まって仕方がない。
 そんな時、この近辺で、若い女性が襲われ、顔を刃物で切り付けられるという通り魔事件が連続して起こる。
 鈴は犯人は俊ではないかと疑い始めるのだが…」

 『魔性の女』をテーマにした連作で、アダルト・テイストが濃い目です。
 出来は、弓削一郎・宮川誠一シリーズの「魔少女」が頭一つ抜きんでているように思います。
 カストリ雑誌が謎を解く鍵になるのが面白いです。(「鍵穴」という雑誌は実在するのでしょうか?)
 「親友」も『依存』というものを生々しく描き、深く考えさせられます。

2023年6月2・3日 ページ作成・執筆

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