まつざきあけみ「魍魎狩り」(1992年1月20日初版発行)

 収録作品

・「魍魎狩り」(「月刊ハロウィン」1990年11月号)
「山を切り開いて造られた新興住宅地。
 町から少し離れると、山深い村があり、そこではいまだ古い因習が守られていた。
 美南英(みなみ・ひかる)は祟りや幽霊を全く信じなかったが、彼女の通う中学校(?)では南校舎への立ち入りが厳しく禁止されていた。
 この校舎は三年前、美術や化学等の特別教室の為に建てられたが、三年生の女子生徒が転落死したのを皮切りに、奇怪なことが多発。
 墜死した女子生徒の幽霊は幾度も目撃され、その一年後には二年生の女子生徒が行方不明になったことにより南校舎は廃舎となった。  ある日、英は、友人の丹波京子と美和と共にこっそり南校舎の探検を試みる。
 三人で柵で出入りできるところがないか探っていた時、美和が南校舎の四階の窓に幽霊を見たと大騒ぎをして、探検は失敗。
 更に、学校では奇怪な事故が続き、皆、墜死した女子生徒の祟りを疑う。
 だが、迫という男子生徒はその幽霊騒動を疑問視する。
 彼は赤ん坊の頃、山に捨てられ、山の魍魎に命を助けられてたと言われていた。
 彼には不思議な力があるようなのだが…」

・「消えた恋人」(「月刊ハロウィン」1991年5月号)
「宇賀神巽は幼馴染の圭介と互いの恋人を連れて帰省する計画を立てる。
 彼は十年前に唯一の肉親の祖父を亡くしてからはずっと東京の知人宅に身を寄せていた。
 巽の実家は由緒ある旧家で、その裏山には数多くの桜が植えられ、春には桜が山を埋め尽くす。
 彼の恋人の麻耶は桜を楽しみにしていたが、巽が圭介のバイトの手助けに行くことになり、彼女は一人で彼の田舎に向かう。
 二日後、巽は、圭介とその彼女のひろみと共に帰省する。
 しかし、彼の実家に麻耶の姿はなかった。
 管理人の留吉夫婦は誰も来なかったと話し、エイプリル・フールの冗談かと思いきや、そうでもないらしい。
 必死の捜索の結果、二日前、確かに麻耶はこの町に来ていたことが判明する。
 そして、彼女の後をつける白いガーディアンの男の姿も目撃されていた。
 様々な目撃証言からその男は巽のようだったらしい。
 それを聞くうちに、巽は子供時代の恐ろしい性癖のことを思い出す…」

・「消えた恋人」(1990年「ハロウィン増刊・眠れぬ夜の奇妙な話」VOL.2)
「誠南高等学校。
 バレー部を指導する菅先生はソウル・オリンピックの時の名プレイヤー。
 更に、独身かつハンサムで、女子部員達にモテモテであったが、彼にはバルセロナ・オリンピックに向けてのコーチの話が内定していた。
 バレー部員の一人、稲村正美は、ある日、病院に祖父の見舞いに行った際に、菅と出会う。
 菅は彼女の姿を見て、明らかに動揺した様子でその場を立ち去り、その直後、同じバレー部の栗原由加の後ろ姿を見かける。
 翌日、由加は校舎の屋上から飛び降り自殺をする。
 実は彼女は妊娠していた。
 正美は病院でのことから菅が由加を妊娠させ、自殺させたと考える。
 そして、彼に「私 見たのよ みんな知ってるのよ」という匿名の手紙を出し続けるが…」

・「役一族」(「月刊ハロウィン」1986年夏の増刊号)
「有栖川時生は運動神経抜群で、勘の鋭い男子高校生。
 だが、最近、彼の勘は異常なまでに優れ、未来のことが勝手にわかるようになる。
 流歌(るか)という女子生徒と関わったことで、彼は生徒会長の故硲(はざま)と敵対する。
 故硲は理事長のせがれで、頭脳優秀な生徒を様々な学校から集めて、「頭脳集団」という特殊教育クラスを作っていた。
 故硲の目的とは…?
 そして、有栖川時生の先祖とは…?」

 若い娘の失踪事件が陰惨な過去を呼び起こす「消えた過去」はダークな傑作。
 ヘビーな動物虐待描写に加え、伏線も巧みに張られており、ミステリーとしてもまずまずの出来です。
 ちなみに、「魍魎狩り」と「役一族」はシリーズ化されているのでしょうか?
 ちょっと気になります。(どうも尻切れトンボっぽいですが…)

2023年5月25日 ページ作成・執筆

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