曽祢まさこ「新・呪いのシリーズB 昔語り」(2012年5月30日第1刷発行)

 カイは呪殺専門の呪術師。
 彼は依頼者の寿命十年と引き換えに、憎い相手を呪殺してくれる。
 彼の留守の間、「夢使い」がマリーの様子を見に来る。
 マリーはカイの過去について尋ね、夢使いはカイが呪殺した中で特に印象に残っているものについて話す…。

・「昔語り―前編―」(「HF倶楽部」2011年7月号、8月号)
「百年以上も前、北のとある王国の都。
 この王国はローゼンハイム王家により五百年もの間、統治されていたが、最近は新興国のために弱体化しつつあった。
 冬のある日、カイは知り合いの伯爵にパーティに誘われる。
 本当の狙いは仕事の話をすることで、相手は国王のマリウス二世であった。
 そして、呪殺する相手は王太子のフランツ殿下(30歳)。
 フランツはことごとく父親に反発し、自堕落な生活を送るだけでなく、反政府組織とも交流があると噂されていた。
 王家の体面を何よりも重大視する父親はそんな彼を王家に害なす者として心から憎み、何の躊躇もなく、カイに呪殺を依頼する。
 カイがフランツについて調べると、王家の伝統と威信に打ちのめされ、愛のない人生を送ってきた一人の青年の姿があった。
 その中で気になったのは、一番新しい愛人、B男爵令嬢、アーデルハイド(愛称・アデル/17歳)。
 このアデルは他の小娘のように浮ついたところが全くなく、カイは彼女を利用することにする…」

・「昔語り―後編―」(「HF倶楽部」2011年9月号、10月号)
「カイにより、フランツは孤独と絶望に追いやられていく。
 マリウス二世により廃嫡され、アデルに宛てた手紙もカイが廃棄してしまう。
 郊外の狩りの館で、フランツが彼女を待っていると、訪れたのは…?」

・「昔語りU」(「HF倶楽部」2011年11月号、12月号)
「フランス革命の少し前、フランスのとある地方。
 羊飼いの娘や子供が次々と大きな獣に喰い殺される事件が起きる。
 被害は三年間も続き、犠牲者は百人を超えると言われる。
 ある日、パリにあるカイの館を、若き未亡人であるオルタンス・F(25歳)が従者のレイモン(亡き夫の弟)と共に訪れる。
 オルタンスの娘、アンリエッタは一人で森に行き、野獣に襲われて死んでいた。
 オルタンスの望みは娘の仇を取る事。
 しかし、彼女が持ってきた獣の毛は半年も前に死んだ灰色狼の毛であった。
 そして、毛に付いていた少女の血からカイは真犯人を暴き出す。
 少女の死の真相とは…?」

 実在の歴史的事件にカイを絡めた作品が二編です。
 「昔語り」は読むうちにモデルはまあまあ予想がつくと思います。
 後半の展開は男には思いつかないものかもしれません…。
 一方の「昔語りU」は、フランスでは有名でも、日本での知名度の低い「ジェウォーダンの獣」が扱われてますので、若干、とっつきにくいです。
 更に、話が暗く、その後が明らかにされないので、モヤモヤが残ります。

2023年5月4・5日 ページ作成・執筆

朝日ソノラマ・リストに戻る

メインページに戻る