明智抄「パンドラ」(1995年3月20日第1刷発行)

 上牧主計(かんまき・かずえ)は有限会社ラヴィアンローズの代表、そして、自称「愛と幸福のメッセンジャー」。
 その正体は、瘴(人間の悪心の塊)を浄化するただひとりの人間である現世姫(うつしよひめ)(…だけど、実際は、意地汚い瘴気喰らい)。
 そして、希み(のぞ・み)は、人間の想念の凝縮したもので、「瘴を封じ導く」存在。
 主計と希みが出会う、瘴にとり憑かれた人々の物語…。

・「第1話」(「月刊ハロウィン」1994年6月号)
「坂口真紀(中学二年)は、兄と比較され、家庭で孤立しているだけでなく、兄から性行為を強制されていた。
 ある晩、真紀は、同じ学校の不良、長沢達樹と共に、宇津志神社を訪れる。
 その神社は、瘴を封じ込めていると言われていた。
 二人は、この世を呪いながら、神社に火を放つ。
 その火事に巻き込まれて、達樹は亡くなるが、真紀は何故か無事であった。
 しかし、真紀の行く先々で、様々なトラブルが起こる。
 また、彼女の前に、髪の長い、不思議な男性が現れ、一緒に来るよう促す。
 彼女の身に起こったこととは…?
 そして、彼女の願いとは…?」

・「第2話」(「月刊ハロウィン」1994年8月号)
「瀬川詠子は男っぽい少女。
 彼女は、ブリっ娘の森下奈美のやることなすこと、反感を覚える。
 理科の解剖実習で、詠子は、別のクラスの山崎とカッパ池に蛙を捕りに行くこととなる。
 カッパ池には荒神様のついている御神木があり、陰気な場所であったが、森下奈美がいた。
 奈美は蛙捕りは手伝わず、さっさと帰り、詠子は憧れの山崎と共に楽しい時間を過ごす。
 この日以来、詠子は、奇妙な夢を見るようになる。
 それは、太平洋戦争中、母親のことを一番に気遣う四歳の少年と、それを不憫に思う母親に関するもので、二人は空襲に巻き込まれてしまう。
 詠子は、夢のことが気になり、カッパ池を再び訪れる。
 そこで目にした光景は…?
 そして、彼女が夢を見た理由とは…?」

・「第3話」(「月刊ハロウィン」1994年10月号)
「葉月と桂惣吾(共に16歳)は一年ぐらいの付き合い。
 だが、惣吾の母親がよその男と出奔してから、彼は自堕落な生活を送っていた。
 葉月は彼の世話女房を務めるが、ある日、彼から手伝いを頼まれる。
 彼が彼女を部屋に招くと、部屋の床には魔法陣が描かれていた。
 葉月を部屋の隅の椅子に座らせると、黒魔術の本を手に、彼は奇妙な呪文の後、「地中の魔物よ 我の元へ!!」と唱える。
 すると、床からドロドロしたものが現れ、彼の姿は一瞬で掻き消える。
 彼の行方はわからず、葉月と惣吾の父親は、彼女の証言を手掛かりに、ラヴィアンローズを訪れる。
 話を聞いた希みは、惣吾は瘴を呼び出し、取りこまれたため、あきらめるよう言う。
 とりあえず、現場を確認することになり、希みと葉月は彼の部屋に入る。
 そして、希みは、儀式について、ある指摘を彼女にするのだが…。
 葉月は惣吾を救うことができるのであろうか…?」

・「第4話」(「月刊ハロウィン」1995年1月号)
「麻理江は美人だが、わがままで生意気な社長令嬢。
 ある夜、彼女は、婚約者と一緒の車を運転して、老婆をはねる。
 老婆は老人性の認知症で、足の骨折で入院する。
 この事故をきっかけに、麻理江は、仁科健大(にしな・たけひろ)という高校生と知り合う。
 彼は、老婆と長い付き合いで、老婆が老いさらばえていくことに悲しみを感じていた。
 彼と接するうちに、麻理江は彼を愛するようになる。
 また、今までの自分の生活に如何に不毛だったか、ということにも気づかされる。
 麻理江は婚約を破棄し、彼が受験合格後、正式に付き合うこととなる。
 だが、老婆が亡くなり、その葬式の時…」

 故・明智抄先生には申し訳ないのですが、スッキリしない話が多いように思いました。
 特に、第4話は、ストーリーの完成度は高いとは思いますが、恐ろしく辛口です。
 安直なハッピーエンドは性に合わなかったとか…?
 でも、第2話のヒロインがいい娘なのに、踏んだり蹴ったりで、気の毒に感じました。

2021年11月10日 ページ作成・執筆

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