大橋薫「霊獣都市」(2010年3月25日第1刷発行)

 収録作品

・「霊獣都市」(1995年「サスペンス&ホラー」春の号)
「アメリカのある州のスラム街。
 そこでは、子供達が謎の失踪を遂げており、日本人留学生、早瀬マリア(17歳)も死体となって発見される。
 死体は恐ろしい怪力で首を引きちぎられており、首はいまだに見つかっていなかった。
 マリアの一卵双生児のアリスは、犯人をおびき寄せるために、スラム街をうろついていたところ、ルカという不思議な少年と出会う。
 彼は十歳ぐらいなのに、「暗くて、深い青い目」をしており、何かを知っている様子であった。
 彼は、アリスをスラム街の教会に案内する。
 そこで、マリアは身寄りのない子供達の世話に携わり、皆から愛されていた。
 そして、ルカともとっても親しかったらしい。
 だが、アリスは、彼が人間とは思えない怪力を持っていることを知り、思わず、銃で撃ってしまう。
 ルカの正体とは…?」

・「堕ちた天使」(1995年「サスペンス&ホラー」夏の号)
「五人の魔教徒を追うルカ。
 彼は、湖の近くで、セラフィムという女性と知り合う。
 彼女は豪勢な邸に住む、非常に美しい女性であったが、車椅子の身であった。
 半ば強引に、彼は邸に滞在することとなるが、魔の気配を感じる。
 ある夜、ジニーという娘が、邸の罠にかかる。
 彼女は、セラフィムに奪われた恋人のジョシュアを取り戻そうと、邸に潜入したのであった。
 彼女はルカに、セラフィムは化け物だと話す。
 セラフィムが湖に来てから、行方不明者が急増しており、また、彼女自身も、足の不自由なセラフィムが恐ろしく早いスピードで泳ぎ、ジョシュアを捕まえたところを目撃していた。
 ルカがジョシュアと話をしようとした時、セラフィムと従者のトーマスが姿を現す…」

・「闇の国のアリス」(1995年「サスペンス&ホラー」冬の号)
「教会の事件から十年後、早瀬アリス(27歳)は、三流雑誌の記者となっていた。
 彼女は、ルカに再会するため、ルカが関連している事件を追い続ける。
 彼女の町で、十年前の事件を想起させるような、売春婦の殺人事件が発生。
 彼女は売春婦に扮し、街角に立っていた時、ルカと再会する。
 彼は十年前とちっとも変わっていなかったが、彼にとっては不老不死の身が苦悩であり、自分のことは忘れるよう言って、立ち去る。
 失意のアリスが夜の町を歩いていると、突如、巨大な悪魔にさらわれる。
 彼女はいけにえにされそうになるが、それはルカをおびき寄せるための罠であった。
 そして、ルカの宿敵の正体とその目的が明らかとなる…」

・「セルロイド・カーニバル 妖魔の瞳」(1996年「ミステリーDX」8月号)
「17世紀のフランス。
 落ちぶれた貴族の娘、アンリエット・ド・ラヴァル(16歳)は、金持ちの大商人、トーマ・ルタン(60歳)と結婚させられる。
 あまりの年齢差に、アンリエットは嫌でたまらず、結婚式では宣誓の前に逃げ出す始末。
 その時、入り込んだ「魔物の森」で、彼女は、愉快なちびっこピエロと子供達に出会う。
 仕方なく、邸に戻ったその晩、婚礼を祝して、宴が催される。
 宴には、旅の曲芸一座が招かれ、その中の一人、盲目の占い師が彼女の未来について占う。
 彼は、彼女が「もうすぐ一生に一度の恋を」して、この恋は淡く、切なく、「300年たっても忘れられないもの」になると告げる。
 その頃、「魔物の森」で一人の少女が行方不明となる。
 これに乗じて、魔女狩りの執行者、ボルトンがアンリエットに魔手を伸ばす。
 トーマ・ルタンは彼女を守ろうとするのだが…。
 アンリエットの恋の行く末は…?」

 「セルロイド・カーニバル」の番外編らしい「妖魔の瞳」はかなりの力作で、いいと思います。
 切ないラストではありますが…。

2011年1月12日 ページ作成・執筆

朝日ソノラマ・リストに戻る

メインページに戻る