まつざきあけみ「夜光華」
(ハロウィン・コミックス/1986年10月30日初版発行/左の画像)
(ハロウィン少女コミック館/1989年4月20日初版発行/右の画像)

 収録作品

・「百蝶譜」(「ハロウィン」1986年1月号)
「父親を亡くした後、身体の弱い春陽には蝶しか支えがなかった。
 庭の隅には動物学者の父親が作った蝶のための温室があり、そこには何百という蝶が育てられていた。
 後妻は財産目当てで、夫の死後、家に愛人を引っ張り込む。
 後妻には春陽が目障りで、従弟の登夢は春陽に自分の家に来るよう勧めるが、彼女は蝶を理由に断る。
 ある夜、蝶の温室で火事が起こる。
 これは後妻と愛人の仕業で、春陽が家の権利書を渡すのを拒んだことへの復讐であった。
 春陽は火の海の温室にとび込むも、幸いにも無傷で、更に、以前よりも健康になり…」

・「鬼面村怪聞記」(「ハロウィン」1986年2月号)
「ある温泉宿に泊まった折に、小説家の弓削一郎は鬼面村(おものむら)へのお祭りを見学することにする。
 鬼面村は川の上流にある小さな村で、外部との接触を極端に嫌っていたが、あるきっかけで村の仙児という青年と知り合い、彼に招待されたのであった。
 編集者の宮川誠一もこの地に一郎を追ってやって来たので、二人は鬼面村を訪れる。
 ここは過疎が進み、老人ばかりの淋しい村であった。
 仙児によると、村の若い者は毎年一人ずつ、いつの間にか村を出て行き、以後、全く音沙汰がないという。
 社では櫓が立てられ、鬼神への生贄である藁人形を櫓もろとも焼いていた。
 迎え太鼓が叩かれ、祭りが始まるが…」

・「座敷童子」(「ハロウィン」1986年3月号)
「聖月は15歳の時、絵の道に憧れ、中学卒業と共に上京する。
 唯一の身寄りである祖母にさえも手紙を出さずに五年…。
 その冬、彼は失意を抱えて故郷の雪国に帰省する。
 雪道の途中、彼を友人の智と和也が迎えに来る。
 家では祖母が彼を温かく出迎え、その場にはすっかり大人びた緋毬の姿もあった。
 祖母や友人達に囲まれ、彼は心の安らぎを取り戻すのだが…」

・「篁家の棺」(「ハロウィン」1986年4月号)
「小説家の弓削一郎と編集者の宮川誠一は篁家の邸を訪れる。
 ことの始まりは、当主の孫娘である遼子からの手紙であった。
 幕末の頃、篁家に、イタリア豪商の娘、カタリナが嫁いでくる。
 彼女は若くして亡くなるが、遺言により、埋葬は彼女の家の風習に従って行われる。
 彼女の遺体は納棺堂に納められ、以来、篁家の者は納棺堂に眠る。
 納棺堂の扉は納棺の時にしか開けられないが、何故か、中で棺や遺体が散乱していたことが何度もあった。
 更に、棺が納棺堂の壁にぶつかる音がすることもあり、最近、またその音が聞こえるという。
 篁家の人々は当主である祖父に納棺堂の鍵を開けて、中を改めるよう勧めるが、祖父は「家のしきたり」を理由に頑として譲らない。
 その夜、遼子は障子越しにカタリナの亡霊を目撃するのだが…。
 納棺堂の秘密とは…?」

・「焔」(「ハロウィン」1986年5月号)
「転入生の美作は非常に美しい少女であった。
 だが、彼女は周囲に対し無関心と拒絶を示し、孤独を貫く。
 彼女には恐ろしい秘密があり、それは火に関係していた。
 クラスメートの象潟(男子)と芳賀(女子)は彼女を心配し、温かく接する。
 美作は象潟への想いを深めていくが、彼女は芳賀に嫉妬するようになる。
 嫉妬…それは母親の目を思い起こさせ…」

・「夜光華」(「ハロウィン」1986年6・7月号)
「弓削一郎と宮川誠一は、作家仲間の結婚式に行こうとして、山中で道に迷ってしまう。
 すっかり日は暮れ、更に、誠一が毒蛇に噛まれてしまった時、一人の男が現れ、邸に案内する。
 彼の名は東靭彦(あずま・ゆきひこ)といい、医者であった。
 一郎は誠一のことは靭彦に任せ、一人で友人の結婚式に向かう。
 一方、誠一は靭彦の妹の菊音と出会う。
 彼女は生まれてから一度も外に出たことがなく、友だちもおらず、童話ばかりを読んでいた。
 更に、邸の地下には童話を模した「森」があり、植物は本物であったが、動物は機械仕掛け、そして、城はパノラマであった。
 彼女は誠一を「白雪姫」の王子様と重ね合わせ、慕う。
 誠一は彼女の想いを知り、靭彦の頼みを断り、朝一番で邸を去ろうとするのだが…。
 東家の秘密とは…?
 また、菊音には初音という姉がいるようなのだが…」

・「肖像画はかく語りき」(「ハロウィン」1986年8月号)
「第一話 美貌の報酬」
 パリの名花と謳われた女優のサラは芸術家を集めてサロンを度々開催していた。
 ある日、サロンに画家のクロード・ラッセルが招かれる。
 彼は朴訥な放浪画家で、洗練さのかけらもなかったが、絵の才能は抜群であった。
 彼は毎日、サラの肖像画を描くが、彼女に対して全くなびかない。
 サラは彼が女中のマリアンヌと親しいのを知り…。
「第二話 天使の微笑」
 ある家族(両親と女の子のティナ)が中古で格安の家に越してくる。
 ティナの部屋にはとても可愛い少年少女の天使を描いた絵が飾られていた。
 だが、ティナがその部屋で眠ると、悪夢に悩まされるようになり…。
「第三話 死の清算」
 ある小説家の妻、志津子の遺言。
 それは、彼の愛人である富美子との再婚と、彼の部屋に自分の肖像画を飾る事であった。
 富美子はその肖像画のせいで、志津子が監視しているような気がして仕方がない。
 そして、小説家の男は徐々に衰弱していくのだが…」

 まつざきあけみ先生は1980年代に多くの名作を描かれております。
 その最大の魅力は「美麗な絵柄」にありましょうが、あわせて、「アレンジの妙」も忘れてはなりません。(注1)
 どこかで見聞きしたことのあるような話が多いのですが、巧みなアレンジとストーリーテリングで二番煎じのような安直さは微塵もありません。
 元になったネタをきっちりと咀嚼し、独自の「美学」にまでストーリーを練り上げるのは、豊富かつ堅固な知識の裏付けがなければできないことだと思います。
 当時、最高にノッていた、まつざき先生の作品の数々…まさしく「珠玉中の珠玉」と讃えるにふさわしいでありしょう。

・注1
 「アレンジの妙」を最大に発揮した漫画家と言えば、個人的には、浜慎二先生が思い起こされます。
 貸本時代の「怪談」シリーズでは「ミステリーゾーン」「ヒッチコック劇場」といったTV番組や海外の怪奇短編を巧みに日本の土壌に移しかえ、一流のエンターテイメント作品に仕立て上げておりました。
 再評価と研究が望まれます。

・備考
 ハロウィン・コミックス単行本、背表紙色褪せ。

2023年5月31日 ページ作成・執筆

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