小林泰三「惨劇アルバム」(2012年5月20日初版1刷発行)
・「序章」
「辺野古美咲は心の底から幸せな娘。
何故なら、彼女には幸せな思い出しかなかったから。
ある日、彼女は部屋でアルバムを取り出し、ページをめくる。
アルバムの写真には様々な時代の断片が…」
・「幸福の眺望」
「美咲が幼稚園に入ったばかりの頃の写真。
この写真を見て、美咲の脳裏に、幼女が崖から転落し、沼で溺死するという「記憶」が甦る。
これは現実にあったことなのか母親に尋ねるのだが…」
・「清浄な心象」
「辺野古七奈は『完璧な子供』を産むことに情熱を傾ける。
夫の迩(ちかし)は、彼女の巻き起こす騒動に振り回されることに…」
・「公平な情景」
「辺野古福は小学六年生。
担任によって、彼のクラスのモットーが「公平」に決まるが、それが福に思わぬ災難となって降りかかる…」
・「正義の場面」
「浴槽でヒート・ショックを起こし、溺死した老人。
幽霊となった彼は、訓練を重ね、物体を移動させる能力を得る。
彼は、小学校での出来事をきっかけに、正義を貫く「ヒーロー」に目覚め…」
・「救出の幻影」
「辺野古迩は福の隠された日記を読む。
それには「怪物」について書かれていた。
福は「怪物」を廃病院に閉じ込めたようなのだが…」
・「終章」
「七奈は家族の物語を終える。
だが、美咲は母親の嘘を見抜き、「真実」に辿り着いていた…」
故・小林泰三先生による書き下ろしホラー連作集です。
書き下ろしのためか、サクサク読めますが、理屈っぽさに辟易することもしばしば。(注1)
面白かったのは、ブラック・ユーモア風の「清浄な心象」「正義の場面」。
同じような作品に「公平な情景」もありますが、「ジャイアニズム」が炸裂していて、個人的にはかなり不快でした。
カバーイラストと章の扉絵は、「惨劇」つながりなのか、御茶漬海苔先生が担当しております。
・注1
小林泰三作品に最大の特徴は、理屈をこねくり回す会話が延々と続くこと。
疲れている時に読むと、正直、鬱陶しいです。
2023年1月15・18日 ページ作成・執筆