ワタナベチヒロ「悪霊使い@」(2006年4月10日初版第一刷発行)

 「黒い力」を持つ、霊感少女の荒井翠。
 占い師だった亡き祖母のタロットカードを受け継いだ仲条杏。
 著名な占い師の母を持つ古野木桜。
 この霊感三人娘が巻き込まれる事件の数々とは…。

・「黒薔薇病院の怪」
「ある日、杏はクラスの女子生徒に相談をされる。
 数日前から姉の霊が彼女の前に現れ、病院の方角を指さすという。
 女子生徒の姉は黒薔薇病院で医療ミスにより亡くなっており、女子生徒は姉の伝えようとしていることを知りたいと願う。
 話を耳にした桜はそれは病院に行けという意味だと断言し、杏、桜とその取り巻きは廃病院となっている黒薔薇病院を訪れる。
 一行が五階の姉の病室に向かうと、そこには姉のガーディアンがあった。
 訝っていると、その場に翠が現れ、ポケットの中と指摘する。
 ポケットの中には、姉が大切にしていた十字架のペンダントがあった。
 これで万事解決と彼女達は病院から出ようとするのだが…」

・「ウランバナ」
「お盆。
 杏の姪の桃の様子がおかしい。
 桃には、杏の祖母の姉の菊の霊がとり憑いていた。
 菊は戦前はダンサーとして活動していたが、戦争中、空襲で顔に火傷を負い、戦後は一人寂しく生きて、55歳で亡くなっていた。
 更に、杏の家には、彼女の祖母がカエルとなって帰ってくる。
 8月16日の晩、杏、翠、桃の三人(+カエル)は納涼花火大会へ行く。
 花火の打ち上げが始まるが、目を離した隙に、桃がいなくなる。
 桃は舟に乗り込み、岸を離れる寸前に、杏と翠は舟にとび乗る。
 この舟が向かう先とは…?」

・「東京ジェノサイド」
「翠のクラスは、資料館で太平洋戦争の展示を見学する。
 迷子の女の子を見つけ、相手にしていた時、地震が急に起き、あたりはパニック。
 翠、杏、桜の三人が目を覚ますと、そこは1945年3月9日の日本であった。
 三人は当然、警察に目を付けられるが、柏木ことという少女が助けてくれる。
 杏とことは仲良しになり、ことは杏のセーラー服を着て大喜び。
 しかし、杏がことに日本の敗戦を教えると、ことは杏達を非国民と呼び、家から追い出す。
 だが、杏はことを救おうと、明日の3月10日に大規模な空襲があると訴えるのだが…」

・「ヒトガタの里」
「桜は人形師の優作と出会い、杏・翠を連れて、彼の故郷を訪れる。
 そこは山の奥にある隠れ里で、三人は歓迎を受けるが、村には何故か若い男しかいない。
 その夜、三人は男達に拘束される。
 彼らは女性の頭皮を剥いで、人形を作っていた。
 三人は、山神様の生贄として、洞窟に閉じ込められるのだが…」

・「ブラックサンタ」
「御影学園ではクリスマスに、春の女王が冬の死霊を倒す寸劇をする。(春の女王役は桜)
 杏がオーナメントを取りに倉庫に入った時、そこでブラックサンタと遭遇する。
 ブラックサンタに出会った者はクリスマスまで生きられないと言われ、今年は杏で三人目であった。
 翠は杏におまじないを施してから、ブラックサンタについて調べる。
 もしかしたら、北欧の魔除けの儀式がブラックサンタと関係があるかもしれない。
 翠はブラックサンタに見つからない場所を見つけ、杏と共にそこに潜むのだが…」

・「手」
「クラスの舞という少女は小学三年生の時に、川岸に左手を視る。
 手は彼女についてきて、以来、彼女のそばにいるようになる。
 手はお手伝いや宿題を教えたり、犬を追っ払ったりして、彼女の強い味方となる。
 しかし、手はいじめっ子を川に引きずり込んだり、口うるさい母親の首を絞めたりして、舞は徐々に手が怖くなる。
 彼女は手を避けるようになるのだが…」

 霊感三人娘が主人公の連作短編集です。
 絵は少女漫画風にキュートなのに、内容は意外とダーク(かつ、ちょっぴりシニカル)で、ストーリーもしっかりしております。
 惜しむらくは、回によっては、練り込み不足なところがある点。(特に「ウランバナ」「東京ジェノサイド」)
 でも、個人的には、高圧的なお嬢様、古野木桜の存在だけで許せてしまいます。
 最初の話では単なるイヤなタカビ〜女でしたが、回を追うごとに、持ち前の負けん気で、主役級にまで登りつめ、ばっちり存在感を示すようになりました。
 見習いたいものです。

2023年1月21・26日 ページ作成・執筆

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