ワタナベチヒロ「悪霊使いA」(2006年9月1日初版第一刷発行)

 「黒い力」を持つ、霊感少女の荒井翠。
 占い師だった亡き祖母のタロットカードを受け継いだ仲条杏。
 著名な占い師の母を持つ古野木桜。
 この霊感三人娘が巻き込まれる事件の数々とは…。

「有馬編」
・「第1話 闇からの声」(2006年「ホラーM」2月号)
「御影学園に教育実習生がやって来る。
 彼女の名前は有馬三果。
 有馬製薬のお嬢様で、更に、彼女は翠とは義妹であった。(翠は本家ではなく、妾腹。)
 アメリカの留学帰りで、明るく開放的な雰囲気であったが、三果のそばには、着物姿の小さな少女の霊が絶えずつきまとっていた。
 翠は三果のことが妙に気になり、念のため、杏を桜と共に帰宅させる。
 しかし、三果により、二人はさらわれてしまい…。
 有馬三果の目的とは…?
 そしれて、有馬一族とは…?」

・「第2話 死の記憶」(2006年「ホラーM」3月号)
「小学生の翠。
 霊感のある彼女は皆から嫌われていたが、ある日、中等部の海巳先輩と出会う。
 彼は翠と同じく霊感があり、霊魂について詳しく教えてくれる。
 その理由は「次会うときまで翠が生きていられるように」とのことであった。
 その夜、翠が目を覚ますと、母親が見知らぬ男に惨殺されていた。
 翠も男に殺されそうになるが、翠が意識を取り戻すと、家には火の手が上がり…。
 あの事件から数年、翠は海巳と再会する…」

・「第3話 黒い玉」(2006年「ホラーM」4月号)
「有馬三果の死。
 気が進まないながらも、翠は葬儀に出席する。
 そこは欲望と憎悪といった邪気の渦巻く空間であった。
 耐えきれず彼女が葬儀会場を離れ、ある一室で休んでいると、有馬家の長男、壱が現れる。
 そこは昔の彼の部屋で、彼は翠に中学校の時に集めたスクラップブックを見せる。
 スクラップブックは、有馬一族の死亡記事で埋め尽くされていた。
 有馬家の秘密とは…?
 そして、その一族の始まりとは…?」

・「第4話 春の魔物」(2006年「ホラーM」5月号)
「有馬家当主の座を狙う壱。
 彼は翠が邪魔であったが、海巳の提案により、彼女を自分の側に取り込もうとする。
 そのため、彼は杏に近づき、翠と仲良くなりたいと同情を買って、彼女の気を惹く。
 一方で、彼は、自分に惚れている、つむぎという娘をだまし、翠に接近させる。
 翠達は壱の奸計にはまり、悲劇が起こる…」

・「第5話 呪縛」(2006年「ホラーM」6月号)
「杏は傷つき、桜には絶縁され、翠は失意のどん底にいた。
 その夜、夢の中で、杏の亡き祖母、梅バアが現われる。
 人を傷つけたくないと主張する翠に梅バアは「いつだって誰かが傷つくんじゃよ」と諭し、翠にできることを問う。
 目覚めた後、翠は、杏を助けるため、海巳と共にアリマ市に向かう。
 そこで、有馬グループの総帥と会うのだが…。
 一方、杏は、壱に投与された薬の薬害のため、人の声を聞き分けることができなくなっていた。
 絶えず騒音にさらされ、耳栓を使うが、ふと人の心が読めることに気が付く…」

・「第6話 エクソダス」(2006年「ホラーM」7月号)
「翠は壱とその呪術師集団と対峙する。
 窮地の彼女を救ったのは、海巳の使い魔のカラスであった。
 カラスに案内され、翠は、お札が何枚も貼られた鉄の扉を抜ける。
 扉の向こうは、有馬に集まる悪気を閉じ込めておく場所であった。
 螺旋階段を下へ降りていくと、そこには巨大な地下空間が広がっており、突き当りには狭い通路が見える。
 引き返すこともできず、翠はその通路を進むのだが、その先にあるものとは…?
 一方、杏は壱の本性を知る。
 彼女は桜と共に壱の後を追い、御影学園へ向かう。
 翠・杏・桜の運命は…?」

 「悪霊使い」第二巻は「有馬編」で、荒井翠の過去と、その親族である有馬一族を扱っております。
 あとがきで作者は「ちょっとふろしきを広げすぎた気も…」と書いておりますが、詰め込み過ぎて、若干、話が分かりづらい部分はあっても、大きな破綻や矛盾はありません。
 ただ、翠の母親を殺した犯人や海巳の正体についてまでは、作者の手が回らなかったのか、説明がなされず残念…。
 おもしろそうなサブキャラ(「姫」や古野木桜の母親)も出てきたのに、第三巻が出なかったことが惜しまれます。(「ホラーM」の雑誌を大して持っていないので、「悪霊使い」の続きがあるのかどうかは不明です。)

2023年1月21・29日 ページ作成・執筆

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