七色虹子「妖のビデオホラーシリーズA 殺人アタック」
(1996年3月1日第1刷発行)

 黒崎妖(くろさき・あや)は不思議な雰囲気を持つ女子高生。
 その可愛らしい外見とは裏腹に、彼女はスプラッター・ホラーの大ファン。
 彼女お勧めのビデオを観た者の運命は…?

・「僕の中のボク」(1995年「ホラーM」1月号)
「野呂一郎は気弱で、物静かな少年。
 彼はクラスメートの武井からいじめられていたが、何をされても、何を言われても、反抗しない。
 しかし、オドオドと言いなりになっている、その姿が武井達の不満を高める原因にもなっていた。
 そんな野呂だが、頭の中では危険で残酷な妄想でいっぱい。
 彼は妄想の中で人を呪い、怨み、そして、殺していた。
 ある日、彼はビデオレンタルで妖と出会う。
 彼は暴力描写のきついものばかりを借りていて、それでストレス解消をすると話す。
 しかし、彼の中の残酷な「ボク」はいつまでも隠し通せるものではなく、遂には傷害事件を起こす。
 嘆く彼に妖は「気分を晴らせる」ビデオを貸すのだが…」

・「剥がれた欲望」(1995年「ホラーM」2月号)
「柊杏子は「A―X」の熱烈なファン。
 「A―X」は今、大人気のヴィジュアル・ロック・バンドで、杏子は授業をサボってまで、追っかけをしていた。
 特に、心酔していたのは、ボーカルのカエデ。
 カエデはプライベートなことは一切不明で、その本当の姿は誰も知らない「謎めいた魅惑のカリスマ」であった。
 ある夜、杏子はカエデのオフ日に、マンション前で彼を呼び止める。
 カエデは彼女を顔を見て、驚いた様子で名前を呼び、彼女は有頂天。
 以来、彼女の「A―X」狂乱ぶりは加速する。
 だが、実はカエデの正体は…?」

・「人間鍋」(1995年「ホラーM」3月号)
「横山はケバケバな家庭科教師。
 若くピチピチした女生徒達に嫉妬心と敵愾心を燃やし、今日も些細なことでいびりまくる。
 彼女は同僚の川出先生に惚れていたが、彼は生徒の上村麻理と仲が良く、それが特に気に入らない。
 上村麻理は料理部に所属しており、横山は彼女に次々と嫌がらせをする。
 でも、麻理は挫けず、注意されても、川出先生に手作りのお弁当を持ってくる。
 これを見た横山は麻理を調理室に呼び出し、動物の死体で料理を作るよう強制する。
 その夜、横山にビデオテープが届けられる。
 そのタイトルは「至福の味覚 人間鍋」…」

・「うそつきの罰」(1995年「ホラーM」4月号)
「縞川利子は陰口女。
 本人がいない時、あちらこちらで根も葉もないことを言いふらし、人間不信の種をまき散らす。
 言い方は常に遠回しで、嫌味たらしく、嘘をついても平気の平左。
 遂には、鹿沼明子とバンドマンの凡城との仲を裂こうともくろむ。
 その日、妖が利子の家を訪れ、借りていたというビデオを渡す。
 利子がビデオを再生すると…」

・「殺人アタック」(1995年「ホラーM」5月号)
「市原かおるはバレーを愛する少女。
 バレー部ではキャプテンの坂井冷子をはじめとする先輩達が幅をきかせており、後輩達にはコートを使わせず、雑用でこき使っていた。
 それでも、かおるは夜遅くまで公園で自主トレーニングに励む。
 ある日、かおる達後輩はコーチにコートを使わせてくれるよう申し出る。
 そこで、先輩達と試合になり、かおるが標的にされるが、彼女は善戦する。
 これに我慢がならなかったのが冷子で、部活終了後、先輩達はかおるを引き留め、数人がかりで球をぶつけるリンチを行う。
 ボコボコにされた、かおるの悔し涙を見て、妖の堪忍袋の緒が切れる。
 その夜、冷子の家に「特別レッスンビデオ」が届くが…」

・「主役交代」(1995年「ホラーM」6月号)
「戸山は漫画家志望の女子生徒。
 だが、あまりにトロく、同じ班の長瀬という女子生徒に毛嫌いされていた。
 彼女はバカにされながらも、新人賞を目指して、投稿原稿を描き上げる。
 妖に見てもらおうと、学校に持って行くと、皆、その完成度に感嘆する。
 ただ一人、長瀬だけは面白くなく、隙を見て、その原稿用紙をトイレの水道にぶちまけて、台無しにする。
 戸山は、悲しさのあまり、長瀬を八つ裂きにする絵を描くが、それを妖に見られてしまう。
 妖は戸山にもう一度描くよう励まし、そして、長瀬には…」

 「妖のビデオホラーシリーズ」は「魔太郎がくる!」「不思議のたたりちゃん」の系譜に連なる作品だと考えておりますが、二巻あたりで『いじめっ子や嘘つきといった性格悪な奴らを妖が「ホラービデオ」で天誅を下す』という路線が確立してきます。
 個人的には、その特徴が目新しくもあり、また、時にわかりにくさにつながっているような気がしております。
 この単行本では「うそつきの罰」「殺人アタック」が良い出来ではないでしょうか。
 この手の「復讐もの」はうまくまとまると、カタルシスを味わえ、実に心地よいです。
 ただし、「主役交代」は、いじめられる女子が漫画は熱心に描くけど、体育の試合では動こうとしない、レポートは何度も忘れてきて、人に迷惑をかけているにもかかわず、「私はバカだから」と言い訳ばかり繰り返していて、蹴とばしたくなりました。

2023年2月25〜27日 ページ作成・執筆

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