まつざきあけみ「惨劇姫」(1999年1月1日初版第1刷発行)

・「魔女が呼ぶ森」(1997年「ホラーM」12月号)
「中学一年生の明日香は、母親は有名な教育評論家で、勉強もピアノもできる「いい子」。
 彼女は何故か、幼稚園の時から、魔女が大の苦手であった。
 彼女が幼稚園の頃、いじめっ子に追われ、逃げ込んだ森の中で、「ヘンゼルとグレーテル」に出てくるような小屋を見つける。
 一人で「ヘンゼルとグレーテル」ごっこを始めた彼女は、グレーテルのなりきって、空想の中で、お菓子を食べる。
 すると、空想の中に魔女も現れ、彼女は魔女を焼き殺したのであった。
 それは空想の中の出来事に過ぎないのに、彼女は度々魔女の幻覚を視る。
 クラスメートの邑(ゆう)はある日の放課後、買い食いをする彼女を見かける。
 しかし、彼女は全く記憶にない。
 また、彼女が行く先で、家が何軒も火事になっており、老婆が何人も亡くなっていた。
 明日香の前に現れる魔女の正体とは…?
 そして、明日香と邑は、彼女の記憶にある森の中の小屋を訪ねるのだが…」

・「血まみれ天使」(1998年「ホラーM」3月号) 「西園中の遊歩、香、あずさの三人は、冬のある日、川に落ちた少女を協力して助ける。
 彼女達は周囲から褒め称えられ、助けた少女からは「天使」と呼ばれる。
 以来、彼女達は「天使」のように振る舞おうと決意するも、彼女達の身体に異変が現れる。
 遊歩は、風呂の湯を凍らせるほど、身体が凍え、香は突如、指や腕が逆の方向にねじ曲がり、あずさは顔が、小学校の時、守っていたいじめられっ子の顔に変化していく。
 この異変の理由とは…?」

・「昼の薔薇 夜の百合」(1998年「ホラーM」4月号)
「キッズスクールの菜摘りらと香月志穂は宿命のライバル同士。
 トップ女優を目指し、二人は日々しのぎを削っていたが、ことあるごとにケンカをして、ある時、りらは志穂に刃物で脅される。
 その後、志穂は東京のタレント・スクールに移り、りらも東京へ進出。
 数年後、同時期にデビューした二人は再会を果たし、対照的な個性で人気を得る。
 りらは「昼の薔薇」のようにあでやかな美しさ、一方の志穂は「夜の百合」のような神秘的な怪しさと評され、実力は伯仲。
 だが、りらは過去の志穂の仕打ちを決して忘れず、志穂が彼女を殺したいほど憎んでいると警戒していた。
 実際、りらの周囲では、彼女の命に関わるような事故が何度も起こる。
 志穂は否定するが、彼女の嫌がらせと思われて、りらの人気は急上昇。
 しかし、一連のトラブルは、りらのマネージャーが彼女の人気を高めるためにやったことが発覚する。
 それでも、りらは、志穂に襲われる幻覚を何度も見るのだが…」

・「闇に蠢く」(1998年「ホラーM」5月号)
「千夜は孤児院出身のお手伝い。
 彼女は大金持ちの夫婦の屋敷に雇われる。
 彼女の仕事は、娘の美姫の世話で、二人は姉妹のようにそっくりであった。
 寝たきりの美姫から、千夜は、美姫の服やバッグをもらう。
 髪型を同じにして、美姫の服で着飾ると、双子と言っていいぐらいであった。
 千夜は、美姫の特徴を研究し、徐々に彼女と入れ替わっていく。
 学友や婚約者だけでなく、両親をもだまして、千夜は最後の仕上げにかかるのだが…」

・「宿り鬼」(1998年「ホラーM」7月号)
「美晴の母親は、飛龍千秋という売れっ子の女流画家であった。
 美晴の父親とは浮気で、離婚しており、それが原因で、美晴には男がひどく汚れたものとして映る。
 ある夜の祝賀会のパーティで、飛龍千秋はベランダから転落死する。
 その近くには、彼女と親交の長い布浦が倒れており、また、美晴のその間の記憶がぼやけていた。
 警察が調べると、千秋の首には絞められた痕があり、殺人事件と判明。
 更に、布浦が倒れていたのは、千秋のグラスに付着した毒のせいであった。
 飛龍千秋は複数の男性と交際していたらしく、恨みを買うことは多かったらしい。
 美晴は、犯人を見た可能性があり、記憶を取り戻そうとするのだが…。
 疑わしい人物が次々と浮上する中、犯人は誰…?」

 大ベテランだけあって、非常に上手いストーリーや構成は見事の一言!!
 個人的には、「血まみれ天使」が、不思議な味わいで、面白かったです。
 この時期の絵は好みが極端に分かれるでしょうが、それでも、読んで損はないと思います。

2021年8月12・15日 ページ作成・執筆

ぶんか社・リストに戻る

メインページに戻る