伊藤結花理「ブラディ―M@」(1999年10月1日初版第一刷発行)

 中世、最強の魔女としてその名を知られながらも、火刑に処せられたマゼンダ・マリア(真紅の聖母)。
 彼女は様々な時代に転生し、占い師「M」として活躍する。
 そして、彼女を愛した錬金術師、べリルを使い魔として、様々な悪と対峙するのであった…。

・「ジュリエットの罠」(1998年「月刊ホラーM」2月号」)
「劇団西風による「ロミオとジュリエット」。
 初日、ジュリエット役の内藤蜜子が、ジュリエットが毒を飲むシーンで、倒れてしまう。
 蜜子は全身が膨れ上がり、入院することとなるが、毒の小瓶は空で、原因は不明。
 だが、花屋の娘、緋色絵夢(マゼンダ・マリアの転生)は、蜜子の症状がアレルギーであることを見抜く。
 蜜子の妹の良美から、蜜子が蝶アレルギーでと聞き、絵夢は、蜜子のライバル、三条かな恵が小瓶に鱗粉を仕込んだと推測。
 だが、かな恵から、絵夢が差し入れた花に蝶のさなぎが付いていたと指摘され、良美との友情にヒビが入ってしまう。
 一方、かな恵は、絵夢のことを危惧し、夜中、舞台裏で証拠の小瓶を捜すのだが…」

・「真紅の魔女」(1998年「月刊ホラーM」8月号」)
「中世ヨーロッパ、アッシュの村。
 この村は、司教アルゴスの下、強大な権力を持つ教会に支配されていた。
 司教に、べリルという錬金術師が仕えていたが、彼は「赤い森の魔女」の噂を耳にする。
 「赤い森の魔女」は、悪魔の力でどんな病でも治すと村人達に言われていた。
 べリルはその魔女に会いに行くが、魔女の家の近くで、仕掛け矢の罠で傷を負う。
 彼に手術と治療を施したのは、まだうら若い乙女のマゼンダ・マリアであった。
 以来、彼は彼女に惹かれ、教会に対して不信感を抱き始める。
 そんな時、黒死病が村を襲う。
 司教は黒死病の原因を魔女の仕業と決めつけ、マリアを捕らえようとする。
 べリルはマリアを逃がそうとするのだが…」

・「霧に棲む闇」(1998年「月刊ホラーM」11月号」)
「1888年のロンドンでは、切り裂きジャックのニュースが世間を騒がせていた。
 マゼンダ・マリアは、上流階級の間で売れっ子の占い師「M」として活躍していたが、ブラック・メアリという娼婦と知り合いになる。
 彼女はある出来事をきっかけに、人を愛することができなくなり、妊娠しているにもかかわらず、酒に溺れるようになっていた。
 Mはメアリに、赤ちゃんを産むのなら、この街を早く出て、再出発するよう勧める。
 Mの占いを受け、メアリは赤ちゃんを産む決意をするのだが、彼女に魔の手が伸びようとしていた…」

・「死の棺」(1999年「月刊ホラーM」6月号」)
「1921年、ロンドン。
 若くして鉄鉱王の名を馳せる、第七代ハル・マイルストーン卿は、アモン・ラー神殿の巫女のミイラを大英博物館から購入する。
 彼は、エジプト狂いの父親が現地の娘に産ませた混血児で、正妻に子供がなかったために、マイルストーンの爵位を継いだのであった。
 以来、混血児という差別を受けながら、アメリカで学歴と財産を自力で築きあげる。
 呪いを信じない彼に、「M」と名乗る占い師の娘が現れ、ミイラから手を引くよう警告する。
 彼女と共に、ハルはミイラを調べ、ますます呪いなど存在しないと確信を強める。
 彼は、ミイラと共に、アメリカに戻ろうとするのだが…」

 ストーリーが練り込まれていて、かなり読み応えがありました。
 特に、西洋史が好きな人は読まれて、損はないと思います。

2020年7月8日 ページ作成・執筆

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