原ちえこ「あの蒼空に似ている」(1995年7月1日初版発行)

・「あの蒼空に似ている」(1994年「月刊ホラーM」7月号)
「早瀬ゆうこは花を愛する少女。
 彼女は美化委員を務め、校庭の花壇をこまめに手入れしていた。
 彼女は同じクラスの八雲に片想いをする。
 彼は春に転入してきた青年で、理数系に強く、スポーツ万能、加えてハンサムで女子に大変人気があった。
 ゆうこは彼が初めて花壇を訪れた時の「花を見るやさしい目」が忘れられない。
 しかし、彼はいつしか彼女を無視し始め、彼女に対してだけ態度が冷たい。
 ある日、彼が花壇にやって来る。
 彼と久しぶりに会話するチャンスだったのに、何故かお互い喧嘩腰になり、ゆうこはがっかり。
 下校途中、やけ食いをしようといつもと違う駅に降りると、八雲の姿を見かける。
 彼女は彼の後をつけ、彼の家に行くと、植物が繁茂して、まるでジャングルのようであった。
 八雲は母親と話をしていたが、母親の二の腕には奇怪な傷があるのをゆうこは目にする。
 彼女に気付くと母親は姿を消し、八雲はゆうこにこの家を秘密にしてくれるよう頼む。
 その条件として、ゆうこが嫌われついでにデートを申し込むと、あっさりOKを貰う。
 しかし、二人に残された時間は僅かであった。
 八雲の正体とは…?」

・「その朝に」(1995年「月刊ホラーM」2月号)
「いつもと同じ朝。
 二年三組に新崎が早めに登校してくる。  隣の席の瀬戸という女子生徒に数学のノートを写させてもらうためであった。
 今日も始まる、お調子者の新崎と瀬戸のいつものやり取り。
 だが、一時間目の数学が自習らしいと聞き、新崎はノートを写すのをやめ、校庭に出る。
 瀬戸も彼を追って出ると、新崎は校庭から見える図書室にいた図書委員について話し出す。
 いつもの彼でないと瀬戸が戸惑っていると…」

・「天の贄」(1994年「月刊ホラーM」11月号)
「悦次郎は大地主の息子で、派手なプレイボーイ。
 妊娠させた娘が龍神の池で、入水自殺しても、平気の平左で、何の良心の呵責も感じない。
 その龍神の池には龍が棲むと言われ、昔は何年かに一度、村人の中から一人、生贄を沈めていたという。
 悦次郎はそんな言い伝えは全く信じず、娘達を連れて、龍神の森に入る。
 そこで、村娘とは比べ物にならないほど、美しい娘と出会う。
 彼は彼女を家に送ろうとするのだが…」

・「不思議のロマンスVol.1」(1989年「チョコミン」1号)
「アンディ・ロウは両親を亡くし、父親の遠縁のブライス氏に引き取られる。
 ブライス一家は両親と一人息子のブライアンの三人で、ロンドンの下町で骨董品店を営んでいた。
 ブライアンは絵を描くのが大好きな少年で、何だかんだ言いながらも、彼女の面倒をよく見てくれる。
 そんな心温かい一家に見守られ、アンディは明るく元気な娘に成長する。
 ある日、骨董品店の前に豪華な馬車が止まる。
 来客は貴族の家柄であるリバーウッド家から来た弁護士のウォルターと、養子のアーサーであった。
 実は、アンディの母親はリバーウッド家出身で、アンディは本当は貴族の令嬢であった。
 身分違いの恋をしたために、母親はリバーウッド家と縁を切っていたが、最近、祖母の健康がすぐれず、孫娘に会いたいと願ったため、アーサーとウォルターが彼女を迎えに来たのである。
 アンディはすぐ帰るつもりであったが、祖母の懇願もあり、なかなか帰る機会を掴めない。
 更に、アーサーは養子という弱い立場故、アンディを結婚して、この家を継ぎたいと考えていた。
 また、親戚の中には遺産目当ての者もおり、アンディを敵視する。
 様々な思惑が交錯する中、アンディの身にじわじわと危険が迫る…」

・「不思議のロマンスVol.2」(1989年「チョコミン」2号)
「ブライス氏が古市で一枚の肖像画を入手する。
 それは貴族の青年を描いたもので、40〜50年前ぐらいのものらしい。
 アンディはこの青年の愁いを帯びた表情が素敵かつ不思議で、とても気に入る。
 また、絵の青年から視線を度々感じ、彼が夢にも現れる。
 彼は彼女を「アニィ」と何度も呼びかけていた。
 アンディはアーサーに頼んで、絵の青年について調べてもらう。
 彼は名門ビンダー家の一人息子、ウィリアム=ビンダー卿と判明するが、彼には悲恋の過去があった。
 ウィリアムのために、アンディはあることを思いつくのだが…」

 少女漫画家として高名な原ちえこ先生。
 怪奇ものと言いましても、どちらかと言うとファンタジー寄りで、絵柄と同じく、ほんわか暖かいところが魅力です。
 そんな中、「天の贄」はグロ描写をバッチリ、キメておりまして、原先生としてはかなりの異色作では?
 ちなみに、「不思議のロマンス」シリーズ、好きです。(続きはまだあるんでしょうか?)

2023年7月27日 ページ作成・執筆

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