蕪木彩子「エリートな肉虫」(1995年11月1日第1刷発行)

 あらゆる虫に精通した「虫屋」。
 彼が提供する虫はどんな願いでも叶えてくれる。
 だが、それには高い代償が…。

・「虫は夜騒めく」(「月刊ホラーM」1994年8月号)
「生美の母親は売れっ子占い師。
 彼女の占いが当たる秘密は、生美の身体に棲んでいる「予知虫」のお陰であった
 この「予知虫」は子供の耳の中でしか棲めない妖虫で、夜、生美が寝ている間、新鮮な生肉と引き換えに、母親は「予知虫」から予言を教えてもらう。
 ある日、虫屋が生美の母親のもとを訪れる。
 彼は契約期間の十年が過ぎたので、予知虫を引き取りに来たのであった。
 生美は中学生になり、予知虫は棲めなくなり、また、予知虫がどのように成長するのかもわからない。
 だが、生美の母親の仕事は軌道に乗ったばかりで、今、手放すわけにはいかない。
 彼女は大金を出して、予知虫を買い取るのだが…」

・「眠れる腹の虫」(「月刊ホラーM」1994年12月号)
「ぶんか芸能プロに所属する桜井めぐみ。
 子役で活躍していた彼女は成長し、母親似の太目になっていた。
 そのため、いつも脇役だった水島愛子に主役の座を奪われ、ショックを受ける。
 社長に呼ばれた桜井母子は、もしもスターを目指すならダイエットが必要と、ある薬を勧める。
 これは「体質を変える薬」とのことで、飲むだけでいいらしい。
 効き目は抜群で、二人はいくら食べても太らず、スリムな体型となる。
 しかし、ある日、シャワー室で母親が変死。
 その死体には無数の寄生虫が湧いていた。
 数年後、めぐみはスタートして活躍していた。
 ある時、母親の死について話しが及んだ際、彼女は「ダイエット用のカプセル」の秘密について知る。
 彼女は虫屋に会い、その寄生虫について話を聞く。
 この「減肥虫」にはある注意点があるのだが…」

・「夢見る植物群」(「月刊ホラーM」1995年1月号)
「真紀は非常に内向的な性格で、担任の女教師に目の敵にされていた。
 ある日、優等生の江里子が彼女をかばい、二人は友達になる。
 しかし、女教師は江里子の内申書をボロカスに書いて、彼女は志望校の推薦入試に落ちる。
 女医だった夢をあきらめざるを得ず、江里子は絶望し、学校に登校しなくなる。
 真紀が江里子の文通相手だった彰に話を聞くと、彼女は「夢見の木」になりたいと言っていたという。
 これは樹木の一種で、虫屋という人に木にしてもらい、木になってからは「心地よい深い眠りの世界で願った夢がかなえられ、とても幸せな気分になれる」のであった。
 彰もまた「夢見の木」になろうとしており、突如、真紀を振り切り、ある家へと駆けこむ。
 真紀が中に入ると、虫屋らしき男性が彰をある小屋に連れ込み、全裸の彼を箱の中に寝かせる。
 箱の中には奇妙な虫がたくさんおり、虫は彼の身体に卵を産みつけていた。
 真紀はショックを受け、逃げ出すが、庭で迷い、森のような場所に入り込む。
 その森の木には一本一本顔があった。
 翌日、江里子がいなくなり、真紀はまた地獄の日々が始める。
 彼女は「夢見の木」のことが気になり、再び虫屋の屋敷を訪れる。
 真紀は江里子と再会するのだが…」

・「妖虫マリコ」(「月刊ホラーM」1995年2月号)
「毬子は病気で余命幾ばくもない。
 父親は彼女を救うために、虫屋から「蘇生虫」を手に入れる。
 「蘇生虫」に毬子の肉体をたっぷり食べさせた後、虫を同じ年頃の娘の腹の中に入れると、腹の中で細胞が増殖し、二日後には蘇生すると言う。
 父親は毬子の親友、晴美に目を付ける。
 晴美と一緒にいる達矢には嫌がらせをして、見舞いに来ないように仕向けてから、父親は計画を実行に移す…」

・「エリートな肉虫」(「月刊ホラーM」1995年3月号)
「村上祥子は成績順位はいつも二番。
 一番は津川千絵で、担任の津川先生の娘であった。
 祥子の母も以前は先生で、津川先生とライバルだった関係で、津川先生は村上母子に非常にきつく当たる。
 そこで、祥子の母は虫屋から、エリートの遺伝子を培養し発育させた肉虫を手に入れ、祥子に食べさせる。
 だが、効き目は人によって差があり、祥子の母親の思い通りにはいかない。
 娘を早く優秀にしたいと訴える母親に、虫屋は「肉虫を頭に直接に埋めこむ方法」を提案する。
 ただし、エリートのように「わがままで自分勝手」、かつ「人を蹴落とすような」性格になってしまうと言う。
 それでも、津川母子を見返すため、祥子は肉虫の細胞を脳に注入する。
 祥子は成績で一位になるのだが…」

・「せつない恋虫」(「月刊ホラーM」1995年4月号)
「早智は、いちこで幼馴染の祐児に想いを寄せていた。
 ある日、早智は、親友の奈津子が祐児と廃屋で密会していることを知る。
 二人が立ち去った後、早智はナメクジのような虫が大量にいることに気づく。
 実は、この場所では虫屋が「恋虫」を育てていた。
 彼によると、自分の素(遺伝子)を食べさせた恋虫を意中の人に食べさせると、相手が好きになってくれるという。
 奈津子は恋虫を持ち帰り、自分の誕生日パーティーの際、祐児のロールキャベツにそれを仕込むのだが…」

 スプラッター漫画の代表作家として御茶漬海苔先生と並ぶ存在の蕪木彩子先生ですが、「虫」漫画でも御茶漬海苔先生とためを張ります。
 「虫」漫画の代表作は「虫屋シリーズ」で、「エリートな肉虫」は単行本の第一弾です。
 生理的不快感を追及している作品なので、敬遠している人も多そうですが、ストーリーはよく練られていて、面白いです。
 でも、パターンとしては、「見るからに怪しい虫屋の虫に手を出して、ただで済むはずがなく、ラストは当然、内臓ドバドバ」なので、やはり苦手な人は避けた方が賢明かも…。

2022年11月22日 ページ作成・執筆

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