神田森莉「怪奇カエル姫」(1994年10月1日第1刷発行)
収録作品
・「血まみれの夏休み」(1993年「ホラーM」Vol.1)
「高校二年生の浜村光恵はおデブな女の子で、皆から「豚」とからかわれていた。
夏休み、今まで彼女をいじめていた美和と真奈美からキャンプに誘われる。
何か怪しいと思うものの、クラス委員の生田も参加すると聞き、彼女は参加を決める。
一行(光恵、生田、向井、美和、真奈美の五人)は、生田が子供の頃、住んでいた田舎に行き、海辺にテントを張る。
光恵は水着姿に自信がなかったが、生田は彼女の水着姿を誉め、一緒に泳ごうと誘う。
また、夜には二人で浜辺を散策し、ムードに酔って、二人はキスをする。
その勢いに任せて、光恵は彼に告白するが、実はこれは全て罠であった。
そして、豚女、光恵の復讐が始まる…」
・「死鬼子」(1993年「ホラーM」Vol.3)
「グミの長らくの親友、由香が新興宗教にドはまりする。
それは神秘卍教会という新興宗教で、教祖は、彼女達と同じ17歳の鏡死鬼子という娘であった。
クラスメート達に高価なペンダントや壺を売りつけようとして、由香は孤立するが、彼女はちっとも気にしていない。
グミは彼氏の完と共に、ペンダントを購入し、総本部での降霊ミサに参加する。
ミサに現れた鏡死鬼子は美しいが、冷たい感じのする女性であった。
彼女はある会員の死んだ祖父の霊を呼ぶが、いちいち胸のあたりで会話をするのが怪しい。
短絡的な完は彼女にとびかかり、トリックを暴こうとするも、これが原因で、二人は教会から追い出されてしまう。
その後、完は行方不明になり、由香の様子も怯えているようであった。
由香は神秘卍教会総本部に忍び込むのだが…。
鏡死鬼子の秘密とは…?」
・「怪奇カエル姫」(1994年「ホラーM」Vol.4)
「田中オチコは絶望的なまでにいじめられっ子であった。
ある日、不良で知られる池野が彼女をいじめっ子から助けてくれる。
彼は小学校の頃、ひどいいじめにあい、登校拒否になったことがあった。
そこで彼が学んだことは「いじめには暴力でしかえしをしろ!!殺してもいい!!」ということで、オチコにも自分の身ぐらい自分で守るよう諭す。
だが、その言葉は彼女に全く届かず、オチコは池野を、彼女が大好きな「カエル姫物語」の王子様と同一視する。
オチコはいじめられるたびに、池野が助けてくれることを期待するが、池野は全く知らんふり。
そして、ある時、口からホースで大量の水を飲ませられ、オチコは発狂する。
自分をカエル姫と思い込んでしまったオチコを見て初めて、池野は、彼女があまりに非力だったと知り、助けなかったことを後悔する。
ある日の授業中、オチコが突如、教室に現れて…」
・「胎児少女エリコ」(1994年「ホラーM」6月号)
「恵理の家には愛がなかった。
元・華族でプライドだけは高い母親は、金のためだけに結婚した父親を見下し、外で遊びまくる。
不甲斐ない父親は恵理を性欲のはけ口にして、彼女は妊娠する。
ある日の授業中、恵理は股から血を流し、トイレで流産する。
流産した子供には「エリコ」と名付け、家で瓶に入れ、大切に保管する。
ある日、恵理が父親にレイプされそうなった時、エリコが現れ、父親の四肢を食いちぎって、殺害。
この時は父親の死体をトランクに隠して、ごまかすことができる。
しかし、ボーイフレンドの王が家に来た時、母親が父親との関係を話し、彼女は彼に罵倒される。
気弱な恵理は母親には頭が上がらず、一人部屋で嘆く。
すると、エリコが、恵理が強くなるために、自分を食べるよう話しかけてくる…」
・「飢える骨」(1994年「ホラーM」7月号)
「夕祈は、家にも学校にも居場所がなく、家出をする。
雨に降られ、彼女がある空き家に入り込むと、地下室がある。
そこには、白骨死体と手紙と写真があった。
写真にはスポーツマンらしい青年とお嬢様っぽい娘が写っており、手紙は尾崎健太郎から花田靖代にあてたラブレターであった。
どうやら手紙の尾崎健太郎と花田靖代が写真に写っている人物らしい。
彼女が地下室で寝ていると、いつの間にか骸骨が彼女の上に乗っている。
そして、床に「うえている」と文字が記されていた。
夕祈は骸骨が動くことを知り、何か食物を求めていると気づく。
実際、骸骨は何でも食べ、ある程度、肉がついてくると、生肉を求めるようになる。
夕祈は骸骨が手紙の尾崎健太郎と思いこみ、靖代との愛を成就させようとするが…」
・「首の軽い少女」(1993年「ホラーM」Vol.2)
「タマミは幼馴染の江頭が初恋の相手。
だが、積極的で指のきれいな令子に彼をとられる。
タマミは令子を憎むが、ある朝、口の中に人間の指が入っていた。
学校に行くと、令子が全身を食いちぎられて殺されたと大騒ぎ。
タマミは自分が寝ている間にやったのでは?と考え、寝る前に身体をベッドに縛り付けてもらう。
しかし、江頭に会いたい一心で、彼女の頭は…」
「世紀末」という言葉がこれほど似合う漫画家もいない神田森莉先生。
「怪奇カエル姫」は神田森莉先生の最初の単行本です。
内容は予想通りですが、少女向けホラーということで、たまにリリカルなところが乱入しており、そこを味わい深いと感じるか、いや、レディコミの方が徹底していて好きと感じるか、各人の好みによると思います。
まあ、一般の人は決して手に取ることはないでしょうが…。
それでも、(約三十年経ってはおりますが)これを読んで狂喜する人がまだまだ世界にはいると私は思っております。
2022年8月10・11・27日 ページ作成・執筆